先に、立場を明らかにしておきます。私自身は、十数種類の投資を今も続けています。NISA、iDeCo、株式、投資信託、不動産、太陽光、暗号資産、事業への出資。
ひととおり経験しました。
その結論が、この記事のタイトルです。本業以外の投資は、するな。失敗も含めて一通りやったうえでの、正直な結論です。
この記事の内容を、動画でも解説しています。
この記事の結論
- なぜ、投資をすすめないのですか。
- 理由は3つです。①先生は投資の素人だから ②本業に支障が出るから ③本業ほど儲からないから。
診療という、いちばん詳しく、いちばん利回りの高い事業をお持ちなのに、わざわざ素人の土俵で戦う理由がありません。 - では、何もしなくてよいのですか。
- 最低限はやるべきです。老後や万が一への備えは必要だからです。ただしやることは「本業への投資 × 新NISAでの積立」だけで足ります。これ以上は要りません。
- 知人から投資話を持ちかけられています。
- 断ってください。親しい相手からの話ほど断りにくく、だからこそ危険です。紹介者に悪意がないことがほとんどで、それがさらに判断を鈍らせます。
理由① 先生は、投資の素人だから
質問です。先生は、投資で生計を立てているでしょうか。答えはおそらく「いいえ」でしょう。私も同じです。つまり私たちは、投資の素人です。
先生は医療のプロです。何年もかけて資格を取り、日々研鑽を積み、患者さんを診てこられた。その領域では、圧倒的に強い。逆に言えば、それ以外の領域では、先生も私も、ただの素人です。
私は起業した頃、知人に勧められてデイトレードをやっていた時期があります。
朝8時半に銘柄を調べ、9時に仕込み、数分で売り抜ける。うまくいけば数千円、たまに1万円。
しかし損をする日も当然あり、何より仕事が手につきませんでした。金曜に持ち越した銘柄があると、土日も落ち着きません。
疲弊した割に、大して儲かりませんでした。損をするときだけは大きい。それがやめた理由です。
理由② 本業に支障が出るから
投資は、お金だけでなく、時間と精神を削ります。これが最も見落とされがちな代償です。
ここで、ひとつの格言をご紹介します。健康・お金・異性。この3つは、人生を狂わせます。どれかひとつが大きく傷むと、生活全体が崩れていきます。
医院を経営されている先生は、すでに資金繰りという形で「お金の悩み」を抱えておられます。そこにさらに投資の悩みを重ねる必要が、どこにあるでしょうか。
値動きが気になって落ち着かない状態で、診察室に座ることになります。先生の集中力は、患者さんのために使われるべきものです。これは精神論ではなく、経営判断の問題だと考えています。
理由③ 本業ほど、儲からないから
これが決定的な理由です。
投資の世界では、年5%の利回りが出れば十分に良い部類です。100万円を投じて、1年後に105万円。しかも保証はなく、95万円や80万円になることもあります。
では、その100万円を医院に使ったらどうでしょうか。
- 集患のための広告に使えば、105万円以上の収益になる可能性があります
- 電子カルテや予約システムに使えば、時間が生まれ、その時間が収益になります
- スタッフの待遇や教育に使えば、離職が減り、採用コストが下がります
先生がいちばん詳しく、いちばんコントロールできる事業に投じるほうが、期待できる利回りは高い。もしそうでないのなら、その事業自体を見直したほうがよい、ということになります。
隣の芝生は、青く見えます。SNSで見かける「投資で儲かった話」は、本当かどうか分かりませんし、本当だとしても損をした話は誰も書きません。
絶対に手を出してはいけない2つ
① 知人からの投資話
不思議なもので、少しお金に余裕が出てくると、投資の話が舞い込みはじめます。新しい事業への出資、特定の暗号資産、「富裕層にしか回らない」年利12%の案件——。
この手の話は、たいてい親しい相手から来ます。知人の経営者、先輩、同級生。しかもその方は実際に利益を得ていて、悪気もない。
親切心から教えてくれているのです。だからこそ、断りにくく、信じやすい。
申し上げにくいのですが、お金の専門家である私自身も、乗ってしまったことがあります。数年塩漬けになっている出資もあります。思い出すだけで胃が痛みます。
これだけ稼いでいるのに、手元に1億円ある方は意外なほど少ない。
理由は単純で、お金が入ってくるとこの手の話に乗り、そこで失っているからです。
ある程度稼いだ経営者は、ほぼ全員が経験しています。聞いたことがないとすれば、単に言わないだけです。
② 節税商品
節税商品もまた、投資のひとつです。コインランドリー、太陽光・高圧電力、トランクルーム、オペレーティングリース、海外の中古不動産、そして節税保険。
1,000万円の利益に対し、1,000万円の節税商品を買えば税金はゼロになります。しかし手元の現金もゼロです。納税すれば350万円を払っても650万円が残ります。
「節税するな」で詳しく計算していますので、あわせてご覧ください。
「節税」という言葉が付くと、投資判断が甘くなります。そこに投資判断が入っていないことこそが、この商品の最大のリスクです。
それでも、最低限やっておくこと
とはいえ、備えは必要です。開業医は、勤務医と違って誰も守ってくれません。退職金も、手厚い企業年金もありません。
1. まず、本業に投資する
いちばん詳しく、いちばん長く経験を積み、いちばん収益の大きい事業です。ここに投じるのが最優先です。
ただし、本業から派生するものは広げてください。診療科目の追加、自由診療、健診、オンライン診療、書籍や情報発信。これらは「別の事業」ではなく、本業の延長です。
2. 「本業 × 新NISA」で、淡々と積み立てる
十数種類を経験したうえでの結論は、驚くほど地味です。新NISAで、インデックスファンドを、毎月一定額、積み立てる。これだけです。
配分の目安に迷われるなら、GPIF(私たちの年金を運用している機関)の資産配分が参考になります。
国内株式・外国株式・国内債券・外国債券を、おおむね4分の1ずつ。年金の運用ですから、極端なことはできません。
だからこそ手堅いのです。
①止めない ②減らさない ③取り崩さない。だからこそ、最初は無理のない金額で始めてください。目安は手取りの20%ですが、まずは10%からでも構いません。
なお、iDeCoや小規模企業共済といった所得控除を伴う制度は、掛金の分だけ節税効果があります。
ただし60歳まで引き出せない、途中解約の条件があるといった制約もあります。
医療法人の理事としての扱いは個別に異なりますので、iDeCo・小規模企業共済の記事もあわせてご覧ください。
最後は「守り」の話です
攻めより、守りのほうが大事です。守りとは、こういうことです。
- 手取りの一部を、必ず手元に残す
- うまい話に乗らない
- お金の管理を、誰か一人に任せきりにしない
最後の項目は、意外に見落とされます。配偶者を信用していないという話ではありません。管理を任された側が投資話に巻き込まれることがあるからです。
夫婦で、あるいはご自身で、資産と負債の残高を定期的に確認する。それだけで、防げることは多いのです。
そして最後にもうひとつ。使わなければ意味がありません。相続の現場で、1億円近い現金と田舎のご自宅だけを遺して亡くなられた方を見たことがあります。
旅行、体験、大切な人との時間。計画的に使うことも、資産形成のうちです。
この4本は、ひとつの話です
節税するな。金を借りろ。決算書を愛せ。投資はするな。一見ばらばらに見えますが、言っていることは同じです。
本業で利益を出し、きちんと納税し、決算書を良くし、金融機関から資金を引き、それを本業に再投資する。この一本のループに集中してください、ということです。
本業に、あといくら投資できるでしょうか。
すでに医療法人の先生には「決算書ワンポイント診断」を無料で行っています。
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最終更新:2026年9月1日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。特定の金融商品の勧誘・推奨や投資助言を目的とするものでもなく、投資のご判断はご自身の責任でお願いします。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年8月)のものであり、その後の法改正等により変更される場合があります。実際のご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。