「リースなら、毎月のリース料が全部経費になりますよ」
車を検討していると、必ず言われます。そして多くの先生が、そういうものだと思っておられます。
でも税金の上では、そこまで単純ではありません。 節税という点だけで見れば、中古車を買ったほうが有利になる場面のほうが多いというのが私の見方です。
理由を順に書きます。そのうえで、それでもリースがいい場合も正直に書きます。
この記事の結論
- 「リース料は全額経費」は本当ですか。
- その年に経費になる金額は、たしかに同じくらいです。ただ仕組みが違います。よくあるカーリース(契約が終わっても車はもらえないタイプ)は、税金の上では「買ったもの」として扱われます。そしてリースの年数で均等に経費にしていきます。リースにしたから経費が増える、ということはありません。
- 買うのとどちらが得ですか。
- 節税でいえば、中古車を買うほうです。4年落ちの普通車なら、2年で経費にできます。しかも最初の年に大きく落とせます。リースは5年契約なら5年で均等。この「一気に落とせる」という武器が、リースでは使えません。
- では、リースはやめたほうがいいですか。
- そうとも限りません。車検も保険も整備もまとめて任せられる点、それに銀行の借入枠を車で使わずに済む点には、はっきりした価値があります。「節税で得だから」という理由で選ぶのが違う、ということです。
「リースなら全額経費」は、そこまで単純ではありません
車のリースの多くは、契約が終わったら車を返すタイプです。 このタイプは、税金の上では「引き渡しを受けたときに、その車を買った」ものとして扱われます。
借りているようでいて、計算のうえでは「買った」ことになっている——そういう決まりです。 そしてリースの年数で均等に経費にしていきます。
実務では、払ったリース料をそのまま経費として帳簿につけても、それでよいという扱いがあるからです。 結果として、その年に落ちる金額は同じになります。
だから「嘘」ではありません。ただ「リースだから経費が多くなる」わけではない。ここが肝心です。
買っても、リースにしても、その車の値段を何年かに分けて費用にしていくという形は変わりません。
いちばん効くのは、中古車を買ったときです
この記事でいちばんお伝えしたいのが、ここです。
中古のものには、「使い古しているぶん、短い年数で経費にしていい」という決まりがあります。 新車の普通車なら6年かけるところ、4年落ちの中古車なら2年で済みます。
しかも最初の年に大きく落とせる計算方法が選べます。
| 4年落ちの中古車を買う | 5年リースにする | |
|---|---|---|
| 何年で経費にするか | 2年 | リースの5年 |
| 落とし方 | 最初の年に大きく | 毎年おなじ額 |
| 最初の年に落とせる額 | 大きい | 5分の1 |
利益が出た年に費用を作りたい。そういう場面で効くのは、圧倒的に前者です。 同じ値段の車でも、落とせるタイミングがまるで違います。
くわしい計算は医療法人の中古資産減価償却に書いています。
年度の途中で買うと、その年に落とせる額は月割りで減ります。 決算月の直前に慌てて買っても、最初の年の効果はほとんど出ません。
リース料には、金利と手数料が乗っています
リース会社も商売です。車の値段+税金や保険+金利にあたる分+会社の利益を足して、 リースの年数で割ったものが月々のリース料です。
同じ車を、銀行から借りて買った場合と比べてみてください。 銀行の金利のほうが、リースに含まれている金利分より低いのがふつうです。
医院は、診療報酬という安定した入金があります。銀行から見れば、貸しやすい相手です。 その立場を使わないのはもったいない。
月額 × 年数 = 総額を計算して、その車の本体価格と比べてください。 差が、金利と手数料とサービス料の合計です。
その差が納得できるかどうかで判断する。それだけです。
契約が終わっても、手元には何も残りません
車には値段が残ります。5年乗った車でも、売ればいくらかになります。
買っていれば、その売ったお金は医院のものです。 リースなら、期間が終われば返すだけ。残った価値はリース会社が持っていきます。
| 買う | リース | |
|---|---|---|
| 車は誰のものか | 医院(または院長) | リース会社 |
| 期間が終わったら | そのまま乗ってもいいし、売ってもいい | 返す。手元には何も残らない |
| 経費にし終わったあと | 費用ゼロで乗り続けられる | リース料は払い続ける |
とくに最後の行です。買って経費にし終わった車は、そのあとは1円もかからずに乗れます。 往診用のように走行距離が少なく、長く使う車なら、この差はかなり大きくなります。
途中でやめられません
リース契約は、原則として途中でやめられません。 やめる場合は、残りのリース料をまとめて払うことになるのがふつうです。
医院の状況は変わります。訪問診療をやめた、往診の範囲を変えた、法人にした、常勤の先生が辞めた—— 5年先に車が必要かどうか、いま決め切れるでしょうか。
買っていれば、要らなくなったときに売ればいいだけです。この身軽さには値段がつきません。
それでもリースがいい場合
ここまで「買うほうがいい」と書いてきましたが、リースが合う場合もあります。正直に挙げます。
- 車のことを考えたくない。 車検、自動車税、任意保険、整備。これを全部まとめて任せられるタイプのリースがあります。 経理も月1回の支払いだけで済みます。院長も奥さまも本業で手一杯、という医院では、この価値は実際に大きいです。
- 銀行の借入枠を、車で使いたくない。 これは無視できません。車を買うのに借入枠を使えば、そのぶん医療機器や運転資金に回せる枠が減ります。 金利が上がっている今、枠は大事にしたい。リースなら、この枠を減らさずに済みます。
- 手元の現金を減らしたくない。 現金で買えば、そのぶん手元が薄くなります。手元のお金は打ち手の数ですから、これも一理あります。
節税で選ぶなら、買う(とくに中古車)。手間と借入枠で選ぶなら、リース。
「リースは全額経費だからお得です」という説明だけで決めるのが、いちばん避けたい形です。 その説明は、税金の実態を正しく表していません。
買っても借りても、必ず聞かれること
最後に、買う場合もリースの場合も共通して問われることを書いておきます。 その車、本当に診療に使っていますかということです。
- 何に使っているか。往診、送迎、材料の受け取り、学会への移動。誰が、いつ、何のために乗っているか
- 台数と車種。ご家族の人数と台数が合っていないか。高級車は必ず質問されます
- 記録。細かい運行記録がなくても、説明できる形にしておく。税務調査で必ず聞かれるところです
- 医院で持つか、個人で持つか。私用が多いなら、無理に医院で持たないほうが説明は楽です
当事務所では、行き過ぎた節税はしないという考え方でご案内しています。 車も同じです。まず「必要かどうか」で決めて、そのあとで持ち方を選ぶ。
節税のために車を買うのは、お金を外に出しているだけです。
出典:所有権移転外リース取引の税務上の取扱いは、国税庁タックスアンサー No.5704「所有権移転外リース取引」 (リース資産の売買があったものとして所得金額を計算し、賃借人はリース期間定額法により償却する)による。 中古資産の耐用年数の簡便法は減価償却資産の耐用年数等に関する省令による。 リース契約の条件や中途解約の可否は契約により異なります。いずれも2026年9月時点。
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最終更新:2026年9月11日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の法改正等により変更される場合があります。リース契約の内容は契約ごとに異なり、税務上の取扱いも契約の形態によって変わります。実際のご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。