開業資金を借りる。ここでつまずくと、開業そのものが遅れます。
通るかどうかは、運ではありません。 見られるところが決まっていて、準備で変わります。
通る人と通らない人の差を、正直に書きます。
この記事の結論
- 何がいちばん見られますか。
- 自己資金と、事業計画の中身です。とくに自己資金は「コツコツ貯めてきたか」を見られます。通帳の履歴でバレます。直前に親から入金してもらった、というのは、たいてい見抜かれます。
- いくら自己資金が必要ですか。
- 制度によりますが、必要な資金の1〜3割が目安です。ただし医院は開業資金が数千万円になるので、全部を自己資金でまかなうのは現実的ではありません。勤務医のうちから積んでおくことが効きます。
- 計画書は誰が作るのですか。
- 先生が手を動かして作ってください。業者に丸投げした計画書は、面談で答えられません。「この数字の根拠は」と聞かれて詰まったら、そこで終わりです。
見られるのは、この5つ
| 見られるところ | |
|---|---|
| ① | 自己資金。いくらあるか、どう貯めたか |
| ② | 経歴。何年、どこで、何科をやってきたか |
| ③ | 事業計画。患者数と単価の根拠、収支の見通し |
| ④ | 返済できるか。計画の利益で、返済が回るか |
| ⑤ | 個人の信用情報。返済の遅れ、税金の滞納 |
医師という職業そのものは、②で強く効きます。 国家資格があり、勤務先も明確で、経験年数も分かる。ほかの業種より、ここは有利です。
⑤は見落とされがちです。 カードの延滞、奨学金の滞納、税金の未納。ここに引っかかると、ほかが良くても止まります。 心当たりがあるなら、申し込む前に片付けてください。
自己資金は、履歴を見られます
金額だけではありません。どう貯めたかを見られます。
| 見え方 | 評価 |
|---|---|
| 毎月コツコツ積み立てている | 高い。計画性があると見られます |
| ボーナスのたびに残している | 良い |
| 直前にまとまった額が入金された | 低い。出どころを必ず聞かれます |
| 親から借りた | 借入とみなされることがあります |
通帳の履歴を見せることになります。 「見せかけの自己資金」は、まず通りません。
親御さんから資金を出してもらうなら、「借りる」のではなく「もらう」形にしてください。
借入だと、返済の負担として計算に入ります。
ただし贈与税がかかります。金額が大きいなら、
使える特例がないかもらう前に確かめてください。あとからでは間に合いません。
計画書は、自分で作ってください
ここが分かれ目です。
開業コンサルや機器メーカーが、計画書を作ってくれることがあります。 きれいな資料が出てきます。でも、面談で答えるのは先生です。
| 必ず聞かれること |
|---|
| 1日の患者数を◯人としていますが、根拠は |
| 単価はいくらで見ていますか |
| 自費の割合は、どのくらいを見込んでいますか |
| スタッフは何人で、人件費はいくらですか |
| 軌道に乗るまで何か月かかると見ていますか |
| その間の運転資金は足りますか |
ここで詰まると、計画書の信用が一気に落ちます。 「業者に作ってもらったので」とは言えません。
作り方が分からなくてもかまいません。 手を動かして作れば、自分の医院の数字が体に入ります。 それは開業してからも効きます。
医院ならではの見られ方
| 見られるところ | |
|---|---|
| ① | 診療圏。人口、年齢構成、競合の数 |
| ② | 保険診療の比率。入金が確実なので、高いほど安定と見られます |
| ③ | 設備投資の中身。その機器が本当に要るか |
| ④ | 物件の条件。家賃、広さ、駐車場、動線 |
| ⑤ | 勤務先からの患者さんの引き継ぎがあるか |
②は医院の強みです。保険診療は、国から2か月遅れで確実に入ります。 飲食店のように、売上がゼロになる月はありません。銀行はここを評価します。
③は、逆に厳しく見られます。 開業時に機器を入れすぎて、返済が重くなる医院が多い。 「本当にいま要りますか」は、銀行からも聞かれますし、私からも聞きます。
順番を間違えないでください
よくある失敗が、これです。
| ダメな順番 | 正しい順番 | |
|---|---|---|
| ① | 物件を決める | 返せる額を決める |
| ② | 機器を選ぶ | 必要な資金を出す |
| ③ | 合計いくらか計算する | 物件と機器を、その範囲で選ぶ |
| ④ | その額を借りに行く | 借りる |
「いくら借りられるか」から始めると、返せない額を借りることになります。 銀行は「貸せる額」を出してきます。それは「返せる額」ではありません。
先に「毎月いくらなら返せるか」を決めてください。 そこから逆算すれば、借りていい額が出ます。 返済期間と金利のどちらを優先するかも、ここで決まります。
勤務医のうちにやっておくこと
| やること | なぜ | |
|---|---|---|
| ① | 毎月コツコツ積み立てる | 金額より、履歴が効きます |
| ② | カードの延滞をなくす | 記録に残ります |
| ③ | 税金・社会保険の未納をなくす | ここに引っかかると止まります |
| ④ | 借入をまとめる・減らす | 返済の負担として計算されます |
| ⑤ | 開業したい場所の診療圏を、自分で調べる | 面談で聞かれます |
①は、金額よりも続けていることが効きます。 月5万円でも、3年続いていれば180万円。そして「計画的な人」という評価がつきます。
最後に。 開業資金の借入は、人生でいちばん大きな借入になることが多いです。 数千万円。怖いのが普通です。
でも3年貯めてから開業するより、借りて今すぐ始めるほうが、たいてい早く到達します。 その3年で得られる経験と収入は、戻ってきません。 死なない範囲で、計画を立てて、借りてください。 返せる額を先に決める。それさえ守れば、大きく外しません。
出典:本文の審査に関する記述は、公表された基準に基づくものではなく、 筆者が実務で見聞きしている範囲での内容です。融資の可否・条件は金融機関の判断によります。 創業時の融資制度の内容・要件・自己資金の要件は、日本政策金融公庫および各金融機関の 公表内容によります。制度は随時変わるため、申込み前に最新の内容をご確認ください。 贈与税の特例の適用要件は、国税庁の公表内容によります。 社会保険診療報酬の請求から支払までの流れは、社会保険診療報酬支払基金および 国民健康保険団体連合会の公表内容による。いずれも2026年9月時点。
開業の資金計画、物件を決める前にご相談ください。
返せる額から逆算して、借りていい額を先に出します。 そのうえで、事業計画の数字を一緒に作ります。丸投げにはしません。 面談で先生が答えられる形にしておくことが、いちばん効きます。 どこから借りるかの選び方も、あわせてお伝えします。
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最終更新:2026年9月12日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。