2026年12月1日、iDeCoの仕組みが大きく変わります。 掛けられる金額が上がって、入れる年齢が70歳まで広がります。

掛けられる上限は、個人でクリニックをやっている先生が月7.5万円、 医療法人の理事長が月6.2万円。 とくに理事長は、いまの月2.3万円から2.7倍になります。

この記事では、個人と法人で何が違うのか、そしてそれが法人化の判断に影響するのかを整理します。

iDeCoそのものの是非(理事長におすすめしない場面)は 医療法人の理事長とiDeCoに書いています。

この記事の結論

2026年12月に何が変わりますか。
3つです。①掛けられる上限が、個人開業医は月6.8万→7.5万円、医療法人の理事長は月2.3万→6.2万円に。②入れる年齢が65歳未満から70歳未満へ。③掛金への反映は2026年12月分(2027年1月引落)からです。
個人と法人、どちらが有利ですか。
iDeCoの枠だけなら個人開業医(月7.5万円)のほうが大きく、小規模企業共済(月7万円)まで入れると差はもっと開きます。税金の計算から引ける額は、個人が年174万円、理事長が年74.4万円。ただしこの差だけで法人化を決めるべきではありません。
70歳まで掛けられるのは、どういう先生ですか。
年金をまだ受け取っていない方です。年金をもらい始めると、その時点で掛けられなくなります。70歳まで現役で診療される先生ほど効きますが、理事長退職金をいつ受け取るかとの兼ね合いが出てきます。

2026年12月に変わる3つ

 これまでこれから
個人でクリニックをやっている先生月68,000円月75,000円
医療法人の理事長月23,000円月62,000円
入れる年齢65歳未満70歳未満

掛金に反映されるのは2026年12月分(2027年1月の引き落とし)からです。

個人開業医の7.5万円には、条件があります

国民年金基金の掛金や付加保険料と合わせて7.5万円が上限です。 国民年金基金に入っている先生は、そのぶんiDeCoに回せる額が減ります。

個人開業医は月7.5万、理事長は月6.2万

なぜ同じ医師でも金額が違うのか。入っている年金の種類が違うからです。

 個人でクリニック医療法人の理事長
年金国民年金だけ厚生年金
iDeCoの枠(これから)月75,000円/年90万円月62,000円/年74.4万円
これまで月68,000円/年81.6万円月23,000円/年27.6万円
増える額年8.4万円年46.8万円

個人開業医の枠が大きいのは、厚生年金という2階部分がないからです。 国は「自分で老後を準備する必要がある人ほど、大きな枠を用意する」という考え方をとっています。

いちばん大きく動いたのは理事長のほうです。年27.6万円から74.4万円へ、2.7倍。 これまで「理事長のiDeCoは枠が小さすぎて、正直あまり意味がない」と申し上げてきましたが、 年74.4万円となると、話が変わります。

小規模企業共済まで入れると、差はもっと開きます

ただ、iDeCoだけを見ていると判断を誤ります。 開業医の先生には、もうひとつ大きな器があるからです。小規模企業共済です。

掛金は月7万円(年84万円)まで、全額が税金の計算から引けます。 そしてこの制度は、医療法人になると続けられません。

 個人でクリニック医療法人の理事長
iDeCo(これから)年90.0万円年74.4万円
小規模企業共済年84.0万円入れません
合計年174.0万円年74.4万円

差は年間約100万円。税率を50%とすれば、税金で年50万円ほどの違いです。 「法人にすると、この枠が使えなくなるのか」と気になるのは当然だと思います。

でも、これで法人化を決めないでください

結論から申し上げます。この差だけで法人化を決めるべきではありません。

理由は単純で、法人にする効果は、この100万円よりはるかに大きいからです。

年100万円の差は、たしかに小さくありません。 でも理事長退職金ひとつで、その何十倍もの差がつくのが医療法人化です。

順番としては、まず法人化の全体を試算する。そのうえで「使えなくなる制度」として小規模企業共済を織り込む。 これが正しい順序です。

逆に、法人にしない先生にはいい話です

利益の規模から法人化を見送っている先生、引退が近くて踏み切らない先生にとって、 iDeCo月7.5万円+小規模企業共済月7万円=月14.5万円という枠は、かなり強力です。

法人にしない選択が不利になるわけではありません。 医療法人にしないほうがいい人もあわせてご覧ください。

70歳まで——医師の働き方に、ようやく合いました

金額と同じくらい大きいのが、入れる年齢が70歳未満まで広がったことです。 60歳を過ぎて国民年金の対象から外れた方も、70歳まで入れるようになりました。

これは、医師という仕事と相性がいい改正です。 一般の会社員は60歳や65歳で退職しますが、先生方は70歳を過ぎても現役で診療されているのがふつうだからです。 65歳で「もう掛けられません」と言われるほうが、実態と合っていませんでした。

 これまで(65歳まで)これから(70歳まで)
60歳から掛けられる期間5年10年
理事長が掛けられる合計372万円744万円
個人開業医が掛けられる合計450万円900万円

現役の期間が長い医師ほど、この改正の恩恵は大きくなります。

年金をもらい始めると、掛けられなくなります

70歳まで入るには、条件があります。

  1. 年金(老齢基礎年金)を受け取っていないこと
  2. iDeCoのお金を受け取っていないこと

つまり年金をもらい始めた時点で、iDeCoは掛けられなくなります。

ここで出てくるのが年金を後ろにずらすという選択肢です。 年金は、受け取り始めを遅らせると金額が増えます。 70歳まで診療を続けて収入がある先生なら、いますぐ受け取る必要が薄い場面もあります。

年金を後ろにずらして額を増やしながら、その間はiDeCoを掛け続ける—— これが、今回の改正で新しく成り立つ組み合わせです。

ここは必ず、個別に試算してください

後ろにずらすのが有利かどうかは、健康状態、ほかの収入、ご家族の状況で変わります。

また理事長として役員報酬を受け取っていると、厚生年金の一部または全部が止まっていることがあります。 「そもそも今いくらもらえているのか」を確認しないと、判断のしようがありません。 年金の記録と役員報酬を突き合わせるところから始めてください。

70歳まで掛けると、退職金とぶつかります

ここが、理事長にとって今回いちばん難しくなった点です。

iDeCoをまとめて受け取ると、そのお金は退職金あつかいになります。 つまり理事長退職金と同じ土俵に乗ります。 そして退職金の枠は、退職金とiDeCoで別々には用意されません。

さらに、受け取る順番と間隔によって枠が調整されます。

受け取る順番調整される期間
iDeCoをあとで受け取る前年から数えて19年以内に受け取った退職金と調整
退職金をあとで受け取る前年から数えて9年以内(以前は4年以内。2026年1月以後の支払いから)

70歳まで掛けられるということは、iDeCoの受け取りが後ろにずれるということです。

理事長退職金を65歳で受け取って、iDeCoを70歳過ぎにまとめて受け取る。 この形だと19年以内のルールに引っかかって、iDeCo側の枠がほとんど残っていないということになりかねません。

「掛けられる期間が延びた」ことは、素直に喜べる話ばかりではありません。 掛ける前に、出口をどうするか決めておいてください。

12月に、やらないといけないこと

最後に実務です。上限が上がっても、掛金は自動では増えません。 増やすには、ご自身で手続きが要ります。

当事務所では、行き過ぎた節税はしないという考え方でご案内しています。 iDeCoは節税商品ではなく、老後のお金を準備する器です。

60歳まで引き出せないという制約を受け入れられるお金かどうかを先に決めて、そのうえで枠を使う。 枠が広がったからといって、無理に埋めにいく話ではありません。

出典:2026年12月1日施行の確定拠出年金法等の改正による。 拠出限度額(第1号被保険者75,000円/第2号被保険者62,000円)、加入可能年齢の70歳未満への拡大は、 各運営管理機関が公表する改正内容による。掛金への反映は2026年12月分(2027年1月引落)から。 退職金との受取時期の調整(19年内・9年内)は所得税法および令和7年度税制改正による。 小規模企業共済の掛金上限は月7万円。いずれも2026年9月時点。

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最終更新:2026年9月11日

この記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断や投資判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の法改正等により変更される場合があります。iDeCoは運用成績によって受取額が掛金の合計を下回る可能性があります。実際のご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
税理士・行政書士 山下久幸

税理士・行政書士山下 久幸

福岡で税理士事務所を営む。医療法人の設立・税務と、資産形成・相続サポートを専門とする。

税理士と行政書士の資格を一人で保有し、法人化の判断から認可申請、設立後の顧問、相続の設計までを一貫して担当している。