借りるときに、銀行から2つの案を出されることがあります。
「5年で、金利1.2%」か「10年で、金利1.5%」か。
金利だけを見れば、前者です。でも私は、後者をお勧めします。 理由を書きます。
この記事の結論
- どちらを優先すべきですか。
- 返済期間です。金利は、少しくらい高くてもかまいません。長く借りて、毎月の返済を軽くする。これが医院の資金繰りを守ります。
- 金利が高いと損ではないのですか。
- 総額では損です。でも金利0.3%の差は、3,000万円でも年9万円。一方、期間が5年と10年では、毎月の返済が2倍違います。月25万円近い差のほうが、はるかに効きます。
- 短く借りたほうがいい場合は。
- 納税資金のように、使いみちがはっきりしていて短期で回収できるものです。設備や運転資金は、長く借りてください。
数字で比べます
3,000万円を借りる場合で見ます。
| A案 5年・1.2% | B案 10年・1.5% | |
|---|---|---|
| 毎月の返済 | 約51.5万円 | 約26.9万円 |
| 年間の返済 | 約618万円 | 約323万円 |
| 利息の総額 | 約92万円 | 約232万円 |
| 差 | 利息は140万円多い。毎月の返済は24.6万円軽い | |
利息の差は140万円。10年で割れば年14万円、月1.2万円です。
一方、毎月の返済は24.6万円も軽くなる。 この差は、20倍です。
月1.2万円払って、毎月24.6万円の余裕を買う。私なら、迷わず買います。
毎月の返済が軽いと、何が変わるか
| 変わること | |
|---|---|
| ① | 手元のお金が減りません。実質無借金に近づきます |
| ② | 患者数が落ちた月も、越えられます |
| ③ | 次の借入がしやすい。返済の余裕が、返済能力として評価されます |
| ④ | 納税の資金を確保できます |
| ⑤ | 夜、よく眠れます |
③を軽く見ないでください。 銀行は「税引後の利益+減価償却費」が年間返済額を上回っているかを見ます。
返済額が小さいほど、この余裕が大きくなり、追加で借りられるようになります。 短く借りて毎月の返済を重くすると、次が借りられなくなります。
期間は、使うものの寿命に合わせる
考え方は単純です。そのお金で買ったものが、何年もつか。
| 使いみち | 期間の目安 |
|---|---|
| 建物・大規模な改装 | 15〜30年(福祉医療機構なら長く取れます) |
| 医療機器 | 5〜10年(その機器を使う年数に合わせる) |
| 内装・什器 | 5〜10年 |
| 運転資金 | 5〜7年 |
| 納税資金 | 短期(半年〜1年) |
10年使う機器を、3年で返そうとしない。 機器はまだ動いているのに、返済だけ終わっている——それが理想です。 逆に返済がまだ残っているのに、機器が使えなくなるのが最悪です。
据置期間も交渉してください
期間と金利のほかに、もうひとつ交渉できるものがあります。
据置期間です。その間は利息だけ払って、元本の返済を始めないという仕組みです。
| 効く場面 |
|---|
| 開業して、患者さんがまだ少ない時期 |
| 新しい機器を入れて、稼働が上がるまでの期間 |
| 改装で休診した直後 |
お金が出ていくのは先、入ってくるのは後。 この時間差を埋めるのが据置期間です。
言わないと付けてもらえないことがあります。必ず聞いてください。
固定か変動か
| 固定 | 変動 | |
|---|---|---|
| 金利 | やや高い | やや低い |
| 返済額 | 最後まで変わりません | 上がることがあります |
| 向いている | 期間の長い借入 | 短期で返すもの |
長く借りるなら、固定を勧めます。 返済額が読めるほうが、計画を立てやすい。
いまは金利が上がる局面です。 変動で借りていると、これから返済額が増えます。 いま変動で借りている分があるなら、固定への組み替えも検討してください。
最後に。 銀行から条件を出されたとき、金利だけを見ないでください。
見るのは「毎月いくら返すのか」です。 その金額で、悪い月も越えられるか。それを先に確かめてください。 総額の得より、毎月の余裕。医院の経営では、こちらのほうが効きます。
出典:試算は元利均等返済を前提とした概算で、実際の返済額・利息総額は返済方式、 端数処理、手数料、保証料の有無によって変わります。 金利・返済期間・据置期間の設定は金融機関および制度によって異なります。 福祉医療機構の医療貸付事業の返済期間は、独立行政法人福祉医療機構の公表内容によります。 本文の考え方は実務上のものであり、公的な基準に基づくものではありません。 いずれも2026年9月時点。
提示された条件、比べてみませんか。
銀行から出てきた条件表をお持ちください。 毎月の返済額と、返済後に手元に残るお金を計算して、無理のない条件かをお伝えします。 期間・据置・固定変動は、交渉できます。言わないと出てこないものがあります。
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最終更新:2026年9月12日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。