2026年6月、日本銀行が政策金利を0.75%から1.0%に上げました。 1.0%になるのは、1995年9月以来、およそ31年ぶりです。
これを受けて、多くの銀行が2026年10月に変動金利を0.25%ほど上げると見られています。 日本政策金融公庫の金利も、毎月見直されながら上がってきています。 公庫には、商工会議所を通して使うマル経融資という、金利の低い制度もあります。
「金利が上がるなら、借りるのは控えよう」——そう考える先生がいらっしゃいます。 私は逆だと思っています。これから上がるなら、いま動くべきです。
この記事の結論
- いま、金利はどこまで来ていますか。
- 政策金利は1.0%で、31年ぶりの水準です。銀行が企業に貸すときの基準になる金利も、2025年12月に上がりました。日本政策金融公庫は、2026年9月時点で担保ありなら2.80〜5.00%、担保なしなら3.80〜5.40%。日銀は今後も上げていく方針です。
- 「9月中に借りたほうがいい」は本当ですか。
- 方向は正しいのですが、言い方を正確にする必要があります。公庫の場合、申し込んでからお金が出るまで1〜2か月かかり、金利はお金が出る時点のものです。9月に申し込んでも、実行が11月なら11月の金利。だから正確には「9月中に借りる」ではなく「9月中に動き出す」です。
- いくら変わるのですか。
- 1億円を10年で借りた場合、金利が2.0%から2.25%に上がると、利息の合計が約1,042万円から約1,176万円へ、134万円増えます。2.5%なら270万円、3.0%なら545万円の差です。
いま、金利はどこまで来ているか
まず現在地です。マイナス金利が終わってから、階段を上るように動いています。
| いまの水準 | ひとこと | |
|---|---|---|
| 日銀の政策金利 | 1.00% | 2026年6月に引き上げ。31年ぶりの水準 |
| 銀行が企業に貸すときの基準金利 | 2.125% | 2025年12月に引き上げ。医院の変動金利の土台 |
| 日本政策金融公庫(担保あり) | 2.80〜5.00% | 2026年9月時点 |
| 日本政策金融公庫(担保なし) | 3.80〜5.40% | 2026年9月時点 |
| 普通預金(大手銀行) | 0.40% | 2026年8月から。約34年ぶりの水準 |
注目していただきたいのは2行目です。 医院が銀行から借りる変動金利は、多くがこれに連動しています。
つまりこれから借りる分だけでなく、すでに借りている分も上がります。
日銀は2026年7月は据え置きましたが、今後も上げていく方針を示しています。 政策金利が1.5%まで上がるシナリオも、真面目に語られている段階です。
10月に何が起きるのか
6月の利上げは、まだ貸出金利に完全には届いていません。届くのが10月です。
- 変動金利——多くの銀行が、2026年10月に0.25%ほど上げると見られています
- 日本政策金融公庫——金利は月ごとに見直されます。世の中の金利が上がれば、翌月以降に反映されていきます
- 福祉医療機構(WAM)——長期の固定ですが、金利は世の中の長期金利をもとに決まります
契約によって見直しの時期が違います。 銀行から金利変更の通知が来たら、そのまま処理せず、 いくら上がるのか、いつからなのかを必ず確認してください。
借入が何本もある医院ほど、まとめて効いてきます。
「9月中に借りる」は、正確には「9月中に動き出す」
はっきり書いておきます。世の中には「9月中に借りておけ」という言い方がありますが、 そのままの意味では成り立ちません。
日本政策金融公庫の場合、申し込んでからお金が出るまで、ふつう1〜2か月かかります。 面談があり、審査があり、書類のやり取りがあります。
そして公庫のサイトには、「実際の金利は、ここに書いてある利率と異なる場合があります」と注意書きがあります。 つまりホームページに載っている今月の金利が、そのまま自分に適用されるわけではありません。 お金が出る時点で決まります。
| 動き出した時期 | お金が出るのは | 適用される金利 |
|---|---|---|
| 9月上旬に相談・申込 | 10月〜11月 | その時点の金利 |
| 10月に相談・申込 | 11月〜12月 | さらに上がっている可能性 |
早く動いても、9月の金利が確約されるわけではありません。 それでも早く動く意味があるのは、金利が上がり続ける局面では、1か月の遅れがそのまま条件の悪化になるからです。
待って良くなる材料が、いまのところ見当たりません。
融資の相談には、直近の決算書と試算表が必要です。 決算が終わっていない、試算表が数か月遅れている——この状態では、動き出すことすらできません。
「借りたいときに借りられる」状態を作っておくこと自体が、金利対策です。
1億円を借りたら、いくら変わるか
機器の入れ替え、建て替え、増床。医院の資金需要は、一度動くとまとまった金額になります。 1億円を10年で借りた場合(毎月同じ額を返す方式)で見てみます。
| 金利 | 毎月の返済 | 10年間の利息 | 2.0%との差 |
|---|---|---|---|
| 2.00% | 約92.0万円 | 約1,042万円 | — |
| 2.25%(+0.25%) | 約93.1万円 | 約1,176万円 | +134万円 |
| 2.50%(+0.50%) | 約94.3万円 | 約1,312万円 | +270万円 |
| 3.00%(+1.00%) | 約96.6万円 | 約1,587万円 | +545万円 |
0.25%の違いで、毎月およそ1.1万円、10年で134万円。 1%違えば545万円です。医療機器が1台買える金額だと思えば、実感が湧くのではないでしょうか。
なお利息は経費になるので、税金を考えれば実際の差はこれより小さくなります。 ただし減るのは3割ほど。7割は医院から出ていきます。
医院が使う3つの窓口と、いまの選び方
医院が借りられる窓口は、大きく3つです。それぞれの中身は 「金を借りろ」に書いていますので、ここではいまの局面での選び方だけ。
| 窓口 | 特徴 | いまの考え方 |
|---|---|---|
| 地元の銀行・信用金庫 | 診療報酬が振り込まれている先がいちばん借りやすい | 変動が中心。これから上がります。固定にできないか交渉する価値あり |
| 日本政策金融公庫 | 原則固定金利。開業まもない時期でも相談しやすい | 借りた時点の金利で最後まで固定。上がる局面では固定の価値が上がります |
| 福祉医療機構(WAM) | 医療・福祉専門。長期の固定 | 建物や大きな設備ならまず候補に。長いほど、固定の意味が大きい |
金利が下がる局面では、変動が有利でした。上がる局面では、話が逆になります。
銀行の変動がいま2%前後で、公庫が2.80%からだとすると、公庫のほうが高く見えます。 でも変動が3%まで上がる可能性を織り込むなら、判断は変わります。
「いま安いほう」ではなく「10年通してどうか」で選ぶ局面です。
すでに借りている先生が、いまやること
これから借りる話だけではありません。すでに借入がある医院ほど、やることがあります。
- 借入の一覧を作る。何を、いくら、何%で、いつまで、固定か変動か。これが手元にない医院が本当に多いです
- 変動の本数と残高をつかむ。0.25%上がると年間いくら増えるか。残高1億円なら年25万円です
- 固定への借り換えを考える。ただし手数料がかかることがあります。差し引きで得かは試算しないと分かりません
- 必要なときに借りられる枠を、いまのうちに作っておく。枠は借りていなくても持てます。信用があるうちに作るのが鉄則です
- 返済期間の見直しを相談する。金利が上がるなら、期間を延ばす意味も変わります
提示された金利を、そのまま受け入れる必要はありません。 複数の銀行から見積もりを取って、比べたうえで交渉する。失礼なことではなく、当たり前の手続きです。
診療報酬という安定した入金がある医院は、銀行から見ていい貸出先です。その立場を使ってください。
それでも、いちばん大事なのは金利ではありません
ここまで金利の話をしてきましたが、最後に順番を申し上げます。
1,000万円を金利2%で借りたら、1年の利息は20万円。1日あたり約550円です。 2.5%になっても1日約685円。差は135円。缶コーヒー1本分も違いません。
当事務所では、この金利を「精神安定剤の薬代」と呼んでいます。 月末の残高を気にせず診療に集中できるなら、決して高い買い物ではありません。
本当に大事なのは、金利が何%かではなく、借りられるかどうかです。 そして借りられるかを決めるのは、決算書です。
利益が出ていて、手元にお金がある医院には貸してくれます。 赤字が続いている医院には、金利がいくらでも貸してくれません。
借入の残高よりも、手元の現預金が多い状態のことです。 いつでも返せる。でも返さずに、手元に置いておく。これがいちばん強い形です。
金利が上がる局面は、この状態を作る難易度が上がる局面でもあります。だから、いま動くのです。
やってはいけないこと3つ
- 赤字を借入で埋め続けること。 申し上げているのは「利益が出ているいまのうちに借りておけ」であって、「赤字を借金で回せ」ではありません。
- 使い道を決めずに借りること。 1,000万円借りて、月16,000円の利息すら生み出せない使い道なら、その投資自体を考え直すべきです。 ただし「手元に置いておく」ことは、立派な使い道です。打ち手の数を買っているからです。
- お金を借りる目処が立つ前に、節税を優先すること。 節税は利益を減らす行為ですから、決算書は必ず痛みます。 借りたい年に利益を削るのは、順番が逆です(節税するな)。
当事務所では、行き過ぎた節税はしないという考え方でご案内しています。 金利が上がる局面では、この考え方の意味がさらに大きくなります。
決算書を良くして、借りられる状態を保ち、必要なお金を早めに確保しておく。やることは、それだけです。
出典:日本政策金融公庫「金利情報(国民生活事業)」令和8年9月1日現在(有担保・無担保の基準利率、注記)。 政策金利および短期プライムレートの水準、2026年10月の変動金利引き上げ見込みは、日本銀行の公表および各種報道による。 3メガバンクの普通預金金利は2026年8月3日改定による。 返済額の試算は元利均等返済による当事務所の計算であり、実際の条件は金融機関により異なります。いずれも2026年9月時点。
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最終更新:2026年9月11日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断や資金調達の成否を保証するものではありません。記載の金利・制度は執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の金融情勢等により変動します。実際のご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家および金融機関にご相談ください。