医院がお金を借りるとき、どこに行けばいいか。
いきなりメガバンクに行っても、話は進みません。 クリニックが最初に使うべき借入先は、だいたい決まっています。
借入先には順番があります。それぞれの性格を書きます。
この記事の結論
- 最初はどこですか。
- 日本政策金融公庫です。国が100%出資している金融機関で、創業や小規模の事業者を支える役割を持っています。実績のない開業時でも、話を聞いてもらえます。
- 医療機関専用の借入先はありますか。
- あります。福祉医療機構(WAM)です。医療・福祉に特化した政策金融機関で、建物や大型設備に向いています。期間が長く取れるのが特徴です。
- 銀行はいつ使うのですか。
- 実績ができてからです。決算書が2〜3期たまると、地銀・信金が現実的になります。取引を1行に絞らないこと。複数と付き合っておくと、いざというとき選べます。
借入先は、大きく4つ
| 借入先 | 向いている場面 | 性格 |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫 | 開業時、運転資金 | 国の金融機関。実績がなくても相談できる |
| 福祉医療機構(WAM) | 建物、大型設備 | 医療・福祉専門。期間が長い |
| 地銀・信金 | 実績ができてから | 日常の取引。融通が利く |
| マル経融資 | 小規模の運転資金 | 商工会議所を通す。無担保・無保証人 |
このほかに、機器のリース会社や、医師会の共済的な仕組みもあります。 ただし金利で比べると、たいてい上の4つのほうが有利です。
日本政策金融公庫
国が100%出資している金融機関です。 民間の銀行が貸しにくいところを補うのが役割です。
| 特徴 | |
|---|---|
| ① | 実績がなくても相談できる。創業時の制度があります |
| ② | 固定金利が中心。返済額が読めます |
| ③ | 民間より金利が低いことが多い |
| ④ | ここで借りた実績が、銀行との取引の入口になります |
④が大事です。公庫で借りて、きちんと返す。 その実績があると、銀行も話を聞いてくれるようになります。
金利は情勢で変わります。2026年は上がってきています。 金利が上がる局面での借り方もあわせてご覧ください。
多くの制度に「据置期間」があります。
その間は利息だけ払って、元本の返済を始めないという仕組みです。
開業してすぐは患者さんが少ない。この時期に元本の返済が始まると、一気に苦しくなります。
据置を使えるか、必ず聞いてください。
福祉医療機構(WAM)
医療機関のための政策金融機関です。存在を知らない先生も多い。
| 特徴 | |
|---|---|
| ① | 医療・福祉に特化している |
| ② | 返済期間が長く取れる。建物なら数十年の設定もあります |
| ③ | 建物の建築・改築、大型の設備投資に向いています |
| ④ | 民間の金融機関と協調して貸す形もあります |
②が大きい。期間が長いほど、毎月の返済が軽くなります。 建物のように何十年も使うものは、返済もそれに合わせるのが理にかなっています。
そのかわり、手続きは重めです。書類も多く、時間もかかります。 建てると決めたら、早めに動いてください。
地銀・信金との付き合い方
日常の取引は、地元の銀行や信用金庫になります。
| 付き合い方 | |
|---|---|
| ① | 1行に絞らない。2〜3行と取引しておく |
| ② | 借りていないときも、決算書を持っていく |
| ③ | 担当者の名前と顔を覚えておく(よく替わります) |
| ④ | 悪い数字も、隠さず説明する |
| ⑤ | 「いくらなら貸せますか」と直接聞く |
①が大事です。1行だけだと、断られたときに行き場がありません。 条件も比べられません。
⑤は遠慮しないでください。 お金を貸すのは銀行です。だから銀行に聞くのがいちばん早い。 「どうすれば通りますか」「何が足りませんか」。この2つを聞くだけで、次の一手が決まります。
決算書、月次の試算表、これからの計画。
これを持っていくと、話がまったく変わります。
手ぶらで「借りたいのですが」と言うのと、数字を持って行くのとでは、別の医院に見えます。
試算表のどこを見るかもご覧ください。
商工会議所のマル経融資
小規模な医院なら、これも選択肢です。
商工会議所や商工会の指導を受けたうえで、公庫から無担保・無保証人で借りられる制度です。 金利も低めに設定されています。
ただし事前に一定期間、商工会議所の指導を受けていることが条件になります。 思い立ってすぐには使えません。
くわしくは医療法人と商工会議所に書きました。
どう使い分けるか
| 場面 | まず相談するところ |
|---|---|
| 開業する | 日本政策金融公庫(創業融資) |
| 建物を建てる・大規模に改装する | 福祉医療機構+地銀 |
| 機器を入れる(数百万〜数千万) | 地銀・信金、公庫 |
| 運転資金が足りない | 地銀・信金、当座貸越 |
| 小規模で、少額を低金利で | マル経融資 |
| 納税資金が足りない | 地銀・信金(短期で組みます) |
最後の「納税資金」を知らない先生が多い。 税金を払うためにお金を借りるのは、まっとうな資金使途です。 恥ずかしいことでも、怪しいことでもありません。
納税で手元のお金を空にするより、借りて手元を厚く保つほうがいい。 延滞して延滞税を払うより、はるかに安く済みます。
最後に。 借入先は、困る前に作っておくものです。
公庫で1本借りて、きちんと返す。地銀と信金に決算書を持っていく。 それだけで、いざというときの選択肢が増えます。 お金が必要になってから探し始めるのが、いちばん苦しい。
出典:日本政策金融公庫は日本政策金融公庫法に基づく株式会社で、政府が全額出資しています。 独立行政法人福祉医療機構(WAM)は独立行政法人福祉医療機構法に基づく法人で、 医療貸付事業・福祉貸付事業を行っています。 小規模事業者経営改善資金(マル経融資)は、商工会議所・商工会等の経営指導を受けた 小規模事業者に対する日本政策金融公庫の無担保・無保証人の融資制度です。 各制度の対象・金利・返済期間・据置期間・要件は随時改定されるため、 申込み前に各機関の最新の公表内容をご確認ください。 融資の可否・条件は各機関の判断によります。いずれも2026年9月時点。
どこから借りるのが有利か、整理します。
資金の使いみち、金額、返済期間の希望。この3つが分かれば、 どの借入先に、どの順番で当たるべきかをお伝えします。 複数から見積もりを取って比べるところまで、お手伝いします。 まだ借りると決めていない段階でも結構です。
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最終更新:2026年9月12日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。