「今月、資金繰りが厳しい」
医院でこうなる原因は、たいてい儲かっていないからではありません。 お金が入るタイミングと、出ていくタイミングがずれているからです。
利益は出ているのに、通帳が寂しい。 この構造を先に理解すると、打つ手が見えます。
この記事の結論
- なぜお金が足りなくなるのですか。
- 保険診療の入金が2か月遅れるからです。3月に診療して、材料費も人件費も3月に払い、入金は5月。常に2か月分を立て替えている状態です。
- 最初にやるべきことは。
- 今後12か月の資金繰り表を作ることです。「いつ・いくら足りなくなるか」が先に見えれば、手を打てます。見えていないから、直前で慌てることになります。
- 足りないと分かったら。
- 足りなくなる3か月前に、銀行に行ってください。まだ払えているうちなら、貸してもらえます。払えなくなってからでは、遅い。
利益とお金は、別のものです
| 帳簿では | お金は | |
|---|---|---|
| 3月に診療した保険分 | 3月の売上 | 入るのは5月下旬 |
| 材料費・人件費 | 3月の経費 | 3月に出ていきます |
| 借入の元本返済 | 経費になりません | 毎月出ていきます |
| 減価償却費 | 経費になります | お金は出ていきません |
とくに借入の元本返済です。 経費にならないのに、お金だけ出ていきます。
「利益が出ているのに、お金がない」のは、たいていこれが原因です。 利益に税金がかかって、そのうえ元本を返している。二重に出ていっています。
医院で、お金が詰まる4つの月
夏がいちばん危ない。 個人でクリニックをやっている先生なら、8月に事業税と予定納税が重なります。 そこに賞与が乗ると、一気に苦しくなります。
これは毎年来ます。予想できるのだから、先に備えられるはずです。
最初の一手は、資金繰り表です
難しいものは要りません。月ごとに、入るお金と出るお金を並べるだけです。
| 行 | 中身 |
|---|---|
| ①前月からの繰越 | 月初の残高 |
| ②入るお金 | 保険(2か月前の分)/窓口/自費/その他 |
| ③出るお金 | 人件費/材料/家賃/リース/借入の元本返済/税金/賞与 |
| ④翌月への繰越 | ①+②−③ |
これを12か月分作ってください。 どの月にいくら足りなくなるかが、先に見えます。
保険の入金は、2か月前の診療分を書く。ここを間違えると意味がありません。
あとは、賞与と税金を忘れないこと。この2つを入れ忘れる方が多いです。
顧問税理士がいるなら、「12か月先までの資金繰り表を作ってもらえますか」と頼んでください。 これは頼んでいい仕事です。
足りないときの打ち手
| 手 | いつまでに | |
|---|---|---|
| ① | 借りる。いちばん素直で、いちばん効きます | 足りなくなる3か月前 |
| ② | 借入をまとめて、毎月の返済を軽くする | 同じく早めに |
| ③ | 当座貸越の枠を作っておく | 平常時に |
| ④ | 納税資金を、短期で借りる | 納付月の前月まで |
| ⑤ | 大きな支出を、翌期に回す | 決算前に判断 |
①がすべてです。そしてタイミングがすべてです。
「まだ払えているうちに借りる」。 通帳が減り始めてからでは、決算書にも出て、条件が悪くなります。
④の納税資金の借入を、恥ずかしいと思わないでください。 税金を払うための借入は、まっとうな資金使途です。 滞納して延滞税を払うより、はるかに安く済みます。
そもそも詰まらない形にする
| やること | |
|---|---|
| ① | 現預金を、月商の3か月分まで積む(実質無借金へ) |
| ② | 納税用の口座を分ける。毎月、見込み額の12分の1を移す |
| ③ | 借入の返済期間を、無理のない長さにする |
| ④ | 窓口の未収を、ためない |
| ⑤ | 毎月の試算表を見て、早く気づく |
②が地味に効きます。 納税用の口座を1つ作って、毎月そこへ移す。 それだけで、納付月に慌てなくなります。
①が最終目標です。現預金が月商の3か月分あれば、たいていの波は越えられます。
最後に。 資金繰りは、気合いや節約では解決しません。 入るタイミングと出るタイミングの、構造の問題だからです。
まず12か月分の表を作って、足りない月を先に見つけてください。 見えてさえいれば、3か月前に銀行に行けます。それで、ほとんど解決します。 見えていないことが、いちばんの問題です。
出典:社会保険診療報酬の請求から支払までの流れは、社会保険診療報酬支払基金および 国民健康保険団体連合会の公表内容による。 借入金の元本返済が費用とならないこと、減価償却費が資金の流出を伴わないことは会計上の取扱いによる。 消費税の中間申告は国税庁タックスアンサー No.6609、所得税の予定納税は同 No.2040、 個人事業税の納期(8月・11月)は福岡県「個人の事業税」による。 延滞税は同 No.9205。 資金繰りの考え方や現預金の水準は、公的な基準ではなく実務上の目安です。 いずれも2026年9月時点。
12か月先までの資金繰り表、作ります。
決算書、直近の試算表、借入の返済予定表。この3つがあれば作れます。 どの月にいくら足りなくなるかが先に見えれば、3か月前に動けます。 足りない月があるなら、銀行に持っていく資料まで一緒に用意します。
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最終更新:2026年9月12日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。