消費税を納めるようになった医院が、次の年にびっくりすることがあります。
期の途中で、税務署から納付書が届く。 「今年の分はまだ計算していないのに、なぜ払うのか」と。
これが中間納付です。前の年の実績をもとに、先に払っておく仕組みです。 知らないと資金繰りが崩れます。先に知っておいてください。
この記事の結論
- いくらから中間納付が始まりますか。
- 前の年に納めた消費税(国税分)が48万円を超えたらです。地方消費税は含めません。48万円以下なら、原則として中間納付はありません。
- 何回払うのですか。
- 金額で変わります。48万円超なら年1回、400万円超なら年3回、4,800万円超なら年11回。医院なら、ほとんどが年1回です。
- 払いすぎたらどうなりますか。
- 戻ってきます。中間納付は前払いなので、確定申告で精算します。多く払っていれば還付されます。ただし戻るのは申告のあと。その間、お金は税務署に預けたままです。
前の年の実績で、先に払う仕組みです
考え方は所得税の予定納税と同じです。 去年これだけ納めたのだから、今年も同じくらい納めるだろう——という前提で、先に払わせる。
国からすれば、税収が一度に偏らず、取りっぱぐれも減ります。 医院からすれば、まだ確定していない税金を先に出すことになります。
払った分は、最後の確定申告で精算します。 多ければ戻り、足りなければ追加で払います。 合計で損はしません。損をするのは資金繰りのほうです。
回数は、前の年の金額で決まります
| 前の年に納めた消費税(国税分) | 中間納付 |
|---|---|
| 48万円以下 | なし(希望すれば年1回できます) |
| 48万円超〜400万円以下 | 年1回 |
| 400万円超〜4,800万円以下 | 年3回 |
| 4,800万円超 | 年11回 |
消費税10%のうち、国の分は7.8%、残り2.2%は地方の分です。
この48万円という線は、国の分だけで見ます。
納付書の合計額が60万円くらいでも、国税分は48万円に届いていないことがあります。
合計額で判断すると間違えます。
医院ではどうなるか
48万円(国税分)を超えるのは、どれくらいの規模か。 ざっくり言うと、納付額の合計が年60万円を超えたあたりです。
| 医院 | 年の納税額 | 翌年の中間納付 |
|---|---|---|
| 自費1,000万円の内科 | 数万円〜 | なし |
| 自費3,000万円の歯科 | およそ150万円 | 年1回(約75万円) |
| 自費8,000万円の美容 | およそ400万円 | 年1回(約200万円) |
年3回になるのは、納税額が年500万円を超えるあたりからです。 ひとり医師法人でここまで来る医院は多くありません。 年11回は、まず関係ありません。
つまりほとんどの医院は「年1回」だと思ってください。 個人なら8月末、法人なら期首から8か月目の末日が期限です。
こういう年に、資金繰りが崩れます
中間納付が痛いのは、前の年と今年で状況が変わったときです。 医院でよくあるのは、この2つです。
| 何が起きるか | |
|---|---|
| ① | 去年は自費が好調だったが、今年は落ちた。それでも去年の実績で払わされる |
| ② | 去年は機器を買わなかったので納税が多かった。今年も同じ額の前払いが来る |
①が特にこたえます。 矯正やインプラントは、年によって波があります。 売上が落ちた年に、好調だった年の税金を前払いする——これが資金繰りを圧迫します。
しかも同じ時期に、所得税の予定納税や、法人なら法人税の中間申告も重なります。 夏は税金が集中する季節だと考えて、資金を残しておいてください。
払いすぎそうなら、自分で計算し直せます
「今年は明らかに去年より少ない」という場合、 その時点までの実績で計算し直して、その金額で納めることができます。
年1回の医院なら、期首から6か月分を実際に集計して申告します。 仮決算といいます。
| 前の年の実績で払う | 計算し直して払う | |
|---|---|---|
| 手間 | 納付書が届くので払うだけ | 半年分の申告書を作る |
| 金額 | 去年の半分 | 今年の実際の半年分 |
| 向いている年 | 去年と同じくらいの年 | 去年より大きく落ちた年 |
手間はかかりますが、売上が大きく落ちた年や、高額な機器を入れた年には効きます。 逆に去年と変わらないなら、わざわざやる必要はありません。
計算し直した結果、前の年の実績より多くなった場合でも、その多いほうの金額で納めます。 少なくなるとは限りません。先に見込みを立ててから決めてください。
自分から中間納付を選ぶこともできます
前の年の納税が48万円以下でも、希望すれば年1回の中間納付ができます。 届出を出すだけです。
なぜわざわざ払うのか。一度に払う額を小さくするためです。
年に1回、まとまった額を出すより、半分ずつのほうが資金繰りは読みやすい。 「気づいたら納税資金がなかった」を防げます。
とはいえ、本来は別口座に積んでおけば済む話です。 自分で貯められない、という自覚がある先生には、この方法もあります。
最後に。 中間納付は節税の話ではありません。払う時期の話です。 でも医院にとっては、こちらのほうが現実的に効きます。 消費税を納めるようになった翌年は、夏に前払いが来る。 これだけ覚えておいてください。 そして自費が伸びている医院は、 いつから納める側になるかを先に確かめておいてください。
出典:国税庁タックスアンサー No.6609「中間申告の方法」 (直前の課税期間の確定消費税額が48万円以下は原則不要、48万円超400万円以下は年1回、 400万円超4,800万円以下は年3回、4,800万円超は年11回。金額に地方消費税額は含まない)。 任意の中間申告制度は同 No.6611。仮決算による中間申告の取扱いを含む。 同 No.6501「納税義務の免除」。 試算は分かりやすさを優先した目安で、実際の金額は仕入の中身によって変わります。いずれも2026年9月時点。
来年の夏、いくら前払いが来るか分かります。
今年の消費税の申告書があれば、翌年の中間納付の有無と金額、そして期限が出せます。 所得税の予定納税や法人税の中間申告とあわせて、年間の納税カレンダーを1枚にしてお渡しします。 夏に慌てないための準備です。
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最終更新:2026年9月11日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。