顧問料を払っているのに、決算のときしか話していない。 そういう医院が、けっこうあります。
もったいない。払っているなら、働いてもらったほうがいい。
いつ、何を相談すればいいのか。 4つの場面にしぼって書きます。ここさえ押さえれば、元は取れます。
この記事の結論
- いつ相談すればいいですか。
- ①毎月の数字を見るとき ②大きな契約をする前 ③お金を借りる前 ④家族にお金を動かす前。この4つです。共通しているのは、どれも「やる前」だということ。
- 何を頼めますか。
- 税金の計算だけではありません。数字の読み方、資金繰りの見通し、銀行に出す資料、契約の前の確認。顧問料に入っていることが多いのに、頼まれていないだけです。
- 聞いても答えが出ないことは。
- あります。「儲かる投資はどれか」「その物件は当たるか」のような、経営そのものの判断。税理士は数字は出せますが、決めるのは先生です。ここを混同すると、お互いに不幸になります。
① 毎月の数字を見るとき
いちばん基本で、いちばんやられていないのがこれです。
月次の試算表をもらっているだけ、という医院が多い。 紙をもらっても、読まなければ意味がありません。
| 毎月、聞くこと | |
|---|---|
| ① | 先月はいくら儲かりましたか |
| ② | 去年の同じ月と比べて、どうですか |
| ③ | このままいくと、今期はいくらで着地しますか |
| ④ | そうすると、税金はいくらになりますか |
| ⑤ | 納税の資金は足りますか |
大事なのは、先生の肌感覚と、数字を突き合わせることです。
「今月は忙しかったのに、利益は去年より少ない」。 このずれに気づくことが、経営の入口です。 忙しさと儲けは、必ずしも一致しません。
着地の見込みと税額が分かるのは、だいたい期の途中です。
そこで分かれば、決算3か月前に打てる手があります。
決算が終わってから「今期は◯◯万円でした」と言われても、もう何もできません。
② 大きな契約をする前
判子を押す前に、一度見せてください。それだけです。
| 見せてほしい契約 | 何が変わるか |
|---|---|
| 医療機器の購入・リース | 買うかリースか、買う年で税金が変わります |
| テナントの契約・更新 | 敷金・保証金・原状回復の扱いが分かれます |
| 建物の建築・内装 | 金額が大きく、何年で経費にするかが効きます |
| 保険の加入 | 「節税になります」は、たいてい違います |
| コンサルティング契約 | 経費になるか、中身で分かれます |
とくに機器です。買う年がひとつずれるだけで、税金が数十万円から百万円単位で変わります。 決算月をまたぐかどうか、その年に消費税をどう扱うか。 発注する前に聞いてください。納品されてからでは遅い。
③ お金を借りる前
借りると決めてから相談されることが多いのですが、順番が逆です。
| 借りる前に決めること | |
|---|---|
| ① | いくらまでなら返せるか(借りられる額ではありません) |
| ② | 返済期間と金利、どちらを優先するか |
| ③ | どこから借りるか(公庫・銀行・マル経融資) |
| ④ | 銀行に出す資料を、誰が作るか |
| ⑤ | いまある借入と、まとめられないか |
①が肝心です。銀行は「貸せる額」を出してきます。「返せる額」ではありません。 ここを混同すると、あとで苦しくなります。
④も頼んでいい仕事です。決算書は税理士が作っています。 その数字をどう説明するかも、税理士のほうが分かっています。 「銀行に出す資料を作ってもらえますか」と言ってみてください。
金利が上がる局面なら、借りる時期そのものの判断も相談できます。
④ 家族にお金を動かす前
医院で、いちばん相談されずに実行されているのがこれです。
| よくある動き | 関係する税金 |
|---|---|
| 配偶者や子に給与を払う | 所得税・調査で必ず見られます |
| 子の学費や住宅資金を出す | 贈与税。特例が使えることがあります |
| 親から医院の土地を借りる/買う | 所得税・贈与税・法人との賃貸借 |
| 子を理事に入れる | 法人税・将来の出資持分の相続 |
| 院長の口座から法人にお金を入れる | 貸付か出資かで、扱いがまったく違います |
どれも動かしてから相談されても、直せません。 とくに贈与は、やる前なら使える特例が、あとからでは使えないことが多い。
「これくらいは相談するほどでもないか」と思ったものほど、聞いてください。 家族間のお金は、金額が小さくても論点が多いのです。
聞いても答えが出ないこと
公平のために、税理士に聞いても答えが出ないことも書いておきます。
| 聞かれても困ること | なぜ |
|---|---|
| 「この投資、儲かりますか」 | 将来のことは分かりません |
| 「この物件で開業したら当たりますか」 | 立地の判断は専門外です |
| 「どの保険がいいですか」 | 税金の面は言えますが、保障の設計は別です |
| 「スタッフを辞めさせられますか」 | 労務の話。社労士の領域です |
| 「グレーですが、いけますか」 | いけません |
税理士が出せるのは「数字」と「税務上どうなるか」までです。 決めるのは先生です。
逆に言えば、数字で判断できる形に落とし込んでもらうのが正しい使い方です。 「儲かりますか」ではなく「この条件だと、何年で回収できますか」と聞く。 これなら答えが出ます。
こう頼むと、動いてもらえます
| 言い方 | |
|---|---|
| ① | 「毎月、着地の見込みと税額を出してもらえますか」 |
| ② | 「契約する前に見てほしいので、先に送っていいですか」 |
| ③ | 「銀行に出す資料を作ってもらえますか」 |
| ④ | 「家族のことで相談したいので、時間をとってもらえますか」 |
| ⑤ | 「この件はメールで残しておきたいのですが」 |
⑤をお勧めします。重要な相談は、口頭ではなくメールで。 記録が残ると、お互いに丁寧になります。 あとで「言った・言わない」にもなりません。
最後に。 税理士は、使われるほど役に立ちます。 医院の事情を知っているほど、いい提案ができるからです。
年に1回しか話さない相手に、踏み込んだ提案はできません。 払っている顧問料の分だけ、働いてもらってください。 それで嫌な顔をされるなら、 そこは替えどきかもしれません。
出典:本文の内容は、法令に基づくものではなく、実務上の考え方と筆者の見解です。 税理士業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)の範囲は税理士法第2条。 労務や社会保険の手続きは社会保険労務士、登記は司法書士の業務です。 本文で触れた個別の税務の取扱いは、それぞれのリンク先の記事に出典を記載しています。 いずれも2026年9月時点。
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最終更新:2026年9月12日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。