「決算まであと3か月」と聞いて、先生はどんな対策を思い浮かべるでしょうか。

実は医療法人の節税対策には、事業年度が始まってから「◯か月以内」「決議から◯日以内」といった期限が設定されているものが少なくありません。

決算月の直前になって慌てて動いても、制度によってはすでに手遅れというケースがよくあります。

逆に言えば、決算3か月前は「まだ間に合う対策」と「もう決算月変更のような大掛かりな見直しでないと間に合わない対策」が分かれる、最後の節目です。

この記事では、この時期に確認しておきたい対策をまとめて整理し、それぞれの詳しい内容は個別記事に譲る形でご案内します。

この記事の内容を、動画でも解説しています。

この記事の結論

決算3か月前でも、まだ間に合う節税対策はありますか。
あります。
決算賞与の検討、少額減価償却資産の駆け込み購入、未払費用の計上などは、決算日までに実行できれば今期の対策として間に合います。
なお、決算対策の定番とされる経営セーフティ共済は、医療法人は加入できません。
役員報酬の見直しや事前確定届出給与の届出は、今からでも間に合いますか。
今期については、間に合わないケースがほとんどです。
どちらも事業年度開始から一定期間内の決定・届出が前提の制度で、決算3か月前の時点ではすでに期限を過ぎていることが多く、来期に向けた準備と位置づけるのが現実的です。
今期はどうしても間に合わない場合は、どうすればよいですか。
決算月そのものを変更するという選択肢があります。今期には間に合いませんが、翌期以降のタイミングを整える、より長期的な対策になります。

なぜ「決算3か月前」が分かれ目になるのか

医療法人の節税対策には、「事業年度開始から◯か月以内」「株主総会等の決議から◯日以内」といった期限が組み込まれているものが多くあります。

これは、決算間際になって利益を見てから恣意的に節税策を選べないようにするための仕組みです。

裏を返せば、決算3か月前という時点で、対策ごとに「まだ間に合うもの」と「すでに間に合わないもの」がはっきり分かれているということでもあります。

まずは全体像を確認してください。詳しい内容と注意点は、このあと対策ごとに解説します。

決算3か月前の時点で間に合う節税対策の一覧図。決算賞与と少額減価償却資産の購入は間に合う。税額控除・特別償却は制度による。役員報酬の見直しと事前確定届出給与は多くの場合すでに期限切れ。経営セーフティ共済は医療法人自体が加入できない。
間に合う順に並べています。判定は目安で、決算月やすでに実施済みの対策によって変わります。
【要確認】判定はあくまで目安です

上記の「間に合うかどうか」は、決算月・事業年度開始日・すでに実施済みの対策の有無によって変わります。

実際にどこまで間に合うかは、法人ごとの状況を見て判断する必要がありますので、この一覧は出発点としてご利用ください。

役員報酬の見直し——今からできるのは「来期」への準備

役員報酬(定期同額給与)は、原則として事業年度開始から3か月以内に決議した金額を、期中は変更しないことが損金算入の条件です。

そのため、決算3か月前の時点で今期の役員報酬額を見直しても、変更後の金額は損金として認められません。

ただし、この時期だからこそできることもあります。

今期の着地見込み利益を確認し、来期の役員報酬額をどう組み立てるかを検討しておくことです。

社会保険料とのバランスや、決算賞与との組み合わせ方まで含めて、来期の期首に向けた準備をこの時期から始めておくと、決断がスムーズになります。

考え方の詳細は、こちらの記事にまとめています。

→ 医療法人の役員報酬の見直し(詳細記事)

決算賞与の検討

決算賞与は、①決算日までに、支給を受ける全員に対して支給額を個別に通知すること、②通知した金額を、決算後1か月以内に全員へ実際に支払うこと、③通知した金額を損金経理することという3つの要件を満たせば、支給前でも今期の損金にできる制度です。

決算3か月前であれば、決定・通知の準備を進める時間が十分にあります。

利益が想定より多く出そうな期に、決算賞与は有効な選択肢になります。要件を1つでも欠くと損金算入が認められないため、通知の方法や対象者の範囲は慎重に確認してください。

→ 医療法人の決算賞与(詳細記事)

事前確定届出給与の届出——シビアな期限に要注意

事前確定届出給与は、理事に対して賞与を損金にできる制度ですが、届出期限が「株主総会等の決議日から1か月を経過する日」と「会計期間開始日から4か月を経過する日」のいずれか早い日と定められています。

つまり、決算3か月前という時点は、多くの法人にとってこの期限をすでに過ぎています。

今期からの適用は難しいケースがほとんどですが、来期に向けてこの制度を検討している場合は、来期開始後できるだけ早いタイミングで動く必要があるという点を、今のうちに押さえておいてください。

→ 医療法人の事前確定届出給与(詳細記事)

経営セーフティ共済——医療法人は加入できません

決算対策の定番として必ず名前が挙がる経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)ですが、医療法人は加入できません。

運営元である中小機構の加入資格で、医療法人は対象外と明記されています。

「掛金全額損金で決算対策に」という一般向けの解説を見かけても、医療法人本体では使えない前提でお考えください。

加入できるのは、法人成り前の個人開業医と、要件を満たすMS法人・資産管理会社(株式会社等)です。個人時代からの契約がある場合の扱いも含めて、こちらにまとめています。

→ 医療法人は経営セーフティ共済に加入できない(詳細記事)

固定資産に関する対策——少額資産の駆け込み購入と税額控除

少額減価償却資産の一括経費化

取得価額40万円未満(令和8年4月1日以後の取得分。

それ以前は30万円未満)の資産は、中小企業者等の特例により、年間300万円まで、取得した期に全額を経費にできます。

決算日までに取得し、実際に業務で使い始めていれば対象になるため、決算3か月前からでも検討・実行の余地がある対策です。

パソコンや医療機器の周辺機器など、買い替えを予定していたものがあれば、このタイミングでの購入が有効です。

→ 医療法人の少額減価償却資産の活用(詳細記事)

税額控除・特別償却の活用(注意点)

一定の設備投資について、法人税額の控除や特別償却が認められる制度もあります。

ただし、制度によっては「経営力向上計画」の認定など、購入前に済ませておくべき手続きがあり、駆け込みでは間に合わないものもあります。

これから固定資産の購入を検討する場合は、対象になる制度と、その事前手続きに要する期間を早めに確認しておく必要があります。

→ 医療法人の固定資産税額控除・特別償却(詳細記事)

なお、今期はどうしても間に合う対策が限られる、あるいは毎年この時期にバタバタしてしまうという場合は、決算月そのものを変更するという、より長期的な対策も選択肢になります。

今期には間に合いませんが、事業の繁忙期や資金繰りに合わせて決算のタイミングを整えることで、翌期以降の対策の打ちやすさが変わってきます。

→ 医療法人の決算月の変更(詳細記事)

お金を出さずにその期の経費にできるものもあります。→ 医療法人の未払金計上

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最終更新:2026年9月1日

この記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年8月)のものであり、その後の法改正等により変更される場合があります。実際のご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
税理士・行政書士 山下久幸

税理士・行政書士山下 久幸

福岡で税理士事務所を営む。医療法人の設立・税務と、資産形成・相続サポートを専門とする。

税理士と行政書士の資格を一人で保有し、法人化の判断から認可申請、設立後の顧問、相続の設計までを一貫して担当している。