税理士を替えるのは、気が重いものです。 長い付き合いだったり、紹介してもらった相手だったり。
それでも替えたほうがいい場合があります。 判断の線を、同業の側から書いておきます。
先に言っておくと、不満があるだけなら、まず言ってください。 替えるのは、言っても変わらなかったときです。
この記事の結論
- どういうときに替えるべきですか。
- 税理士本人に相談できないときです。これが最大の線引き。スタッフしか出てこない、所長につながらない。スタッフは責任を取れないので、踏み込んだ判断ができません。
- ほかには。
- 同じことを何年も指摘しても直らない/医療のことを知らないまま何年も経っている/期限を落とした。この3つも、替えていい理由になります。
- 替えるときの注意は。
- 時期です。決算の直前や申告期に替えると、引き継ぎでもめます。決算が終わった直後がいちばん静かです。そして資料は必ず返してもらってください。
替えたほうがいい5つの状態
| 状態 | なぜ問題か | |
|---|---|---|
| ① | 税理士本人に相談できない | スタッフは責任を取れません。判断が止まります |
| ② | 同じことを言っても直らない | 1回目は伝わっていないだけ。3回目は体制の問題です |
| ③ | 医療のことを知らないまま何年も | 使えていない制度が積み上がります |
| ④ | 期限を落とした | 届出も登記も、落とすと取り返せません |
| ⑤ | 連絡がつかない期間が長い | 急ぎの判断ができません |
①が、いちばん重い線です。
毎月の記帳のやりとりなら、スタッフで十分です。 でも「これは経費になりますか」「法人にすべきですか」は、税理士にしか答えられません。 そこに本人が出てこない体制なら、払っている金額に見合っていません。
医療法人には、税務署以外の期限があります。
事業報告書等の届出(会計年度終了後3か月以内)、
資産の総額の変更登記(事業年度末日から3か月以内)。
これが何年分もたまっている医院を、実際に見ています。
本人も気づいていないことがあります。一度確かめてください。
逆に、替えなくていい場合
公平に、こちらも書きます。
| 状態 | 考え方 |
|---|---|
| 顧問料が高い気がする | まず交渉。訪問を減らせば下がります |
| 節税の提案がない | 資料が渡っていないだけかもしれません |
| 返事が少し遅い | まず「いつまでに」と聞いてみる |
| 説明が分かりにくい | 聞き返していますか。言えば直ることが多い |
| 担当が若い | 本人に相談できるなら、問題ありません |
替えるのにもコストがかかります。 医院の事情を一から説明し直す。過去の資料を引き継ぐ。慣れるまで半年はかかります。
直せるものなら、直したほうが早い。 よくある不満とその伝え方に書きました。
替える前に、一度言ってみてください
税理士の側から見ると、不満は突然伝わります。
毎月ふつうに訪問して、ふつうに帰っている。 そしてある日、「今期で契約を終わりにします」と言われる。 何が悪かったのか、最後まで分からないことも多い。
| 伝え方 | |
|---|---|
| ① | 「この件は所長先生にも見ていただけますか」 |
| ② | 「決算の3か月前に、着地の見込みを出してもらえますか」 |
| ③ | 「医療特有のところで、見落としがないか一度点検してもらえますか」 |
| ④ | 「メールは何日くらいで返していただけますか」 |
これで動く事務所なら、替える必要はありません。 動かないなら、そこが答えです。
替える時期は、決算の直後
| 時期 | 向き不向き |
|---|---|
| 決算・申告が終わった直後 | いちばんいい。1期分がきれいに区切れます |
| 期の途中 | できますが、前半と後半で担当が分かれます |
| 決算の直前 | 避けたい。引き継ぎが間に合いません |
| 税務調査の最中 | 絶対に避ける。経緯が分かる人がいなくなります |
基本は決算と申告が終わってからです。 その期の資料が完結しているので、引き継ぎがきれいに済みます。
新しい税理士を先に決めてから、いまの事務所に伝える。 空白の期間を作らないでください。
返してもらう資料の一覧
ここでもめることがあります。先に一覧にしておいてください。
| 返してもらうもの | 何年分 |
|---|---|
| 申告書の控え(法人税・消費税・地方税) | できるだけ全部。最低7年 |
| 決算書、勘定科目内訳明細書 | 同上 |
| 総勘定元帳 | 同上 |
| 固定資産台帳 | 全期間(過去に買った値段が要ります) |
| 税務署に出した届出の控え | 全部 |
| 領収書・請求書・通帳 | 預けているもの全部 |
| 会計データ | そのまま引き継げる形で |
とくに固定資産台帳と届出の控えです。
固定資産台帳がないと、いつ何をいくらで買って、いくら償却したかが分かりません。 届出の控えがないと、どの制度を選んでいるかが分かりません。 消費税の簡易課税を選んでいるかどうかも、ここで確かめます。
使っているソフトが違うと、そのまま移せないことがあります。
「新しい事務所に渡せる形で出してもらえますか」と頼んでください。
紙だけで返されると、過去の数字を全部入力し直すことになります。
紹介された相手を替えるとき
これがいちばん重いところです。 銀行の担当者、医療機器のディーラー、先輩の先生からの紹介。
断りにくいから、そのまま何年も続けてしまう。 よくあります。
| 考え方 | |
|---|---|
| ① | 紹介は「合うかどうか試してみて」という意味です。一生続ける約束ではありません |
| ② | 紹介者に先に伝えておく。黙って替えるほうが角が立ちます |
| ③ | 理由は「うちの規模と合わなくなった」で十分。悪口を言う必要はありません |
②が大事です。紹介してくれた方に、先に一言。 「よくしていただいたのですが、医療に詳しいところにお願いすることにしました」。これで済みます。
それで機嫌を損ねる紹介者なら、その紹介はもともと先生のためではなかったということです。
最後に。 税理士を替えるのは、悪いことではありません。 医院の規模も、やることも、10年前とは変わっています。 合わなくなるのは自然なことです。
ただ替える前に、一度は言ってみてください。 それで変わるなら、替えるコストを払わずに済みます。 言っても変わらなかったときに、初めて動けばいい。
出典:本文の内容は、法令に基づくものではなく、実務上の考え方と筆者の見解です。 事業報告書等の届出は医療法第52条第1項(毎会計年度終了後3月以内)、 資産の総額の変更登記は組合等登記令第3条第3項(毎事業年度末日から3月以内)。 帳簿書類の保存期間は、法人税法施行規則第59条・第67条等により原則7年 (欠損金が生じた事業年度は10年)。 消費税の簡易課税制度選択届出書の効力は国税庁タックスアンサー No.6505。 引き継ぐ資料の範囲や返却の取扱いは、顧問契約の内容によって異なります。 いずれも2026年9月時点。
替えるかどうか、決める前にご相談ください。
いまの決算書と申告書を見れば、使えていない制度がないか、届出が抜けていないかが分かります。 「いまのままで問題ない」と分かれば、それがいちばんいい結果です。 乗り換えをお勧めするための相談ではありません。 顧問はそのままで、第三者の目だけ入れるという形も承っています。
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最終更新:2026年9月12日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。