顧問税理士と、契約書を交わしていますか。

「そういえば、ない」という医院が、けっこうあります。 口約束のまま、何年も続いている。

年間で百万円前後を、毎年払う取引です。 契約書がないほうがおかしい。 あるなら、見るべき3か所を書きます。

この記事の結論

どこを見ればいいですか。
①業務の範囲 ②訪問の回数 ③損害賠償。この3つです。とくに①。「何が入っていて、何が入っていないか」が書いてあるかどうかで、もめるかどうかが決まります。
契約書がない場合は。
作ってもらってください。継続的に仕事を頼む以上、必要です。「いままでなかったので」と言われても、これから作ればいい話です。
医院ならではの注意点は。
医療法人だけの手続きが入っているかです。事業報告書等の届出と、資産の総額の変更登記。税務署に出すものではないので、範囲から外れていることがあります。

そもそも契約書がない、という医院へ

責めるつもりはありません。作っていない事務所の側の問題です。

ただ、契約書がないと困るのは先生のほうです。

契約書がないと
何をやってもらえるのか、決まっていない
追加料金がいくらか、そのつど言われる
やってもらえなかったとき、根拠がない
替えるときに、いつまでが契約なのか分からない
間違いがあったとき、責任の範囲が決まっていない

「いままで問題なかったから」は、問題が起きていないだけです。 起きたときに、話し合う土台がありません。

「契約書をいただけますか」と言ってください。 まっとうな事務所なら、すぐ出てきます。

① 業務の範囲——入っていないものを見る

いちばん大事なのはここです。そして見るのは「入っているもの」ではなく「入っていないもの」です。

よく別料金になるもの確かめること
年末調整入っているか。何人まで込みか
法定調書・給与支払報告書年末調整とセットか、別か
償却資産税の申告毎年1月。忘れられがちです
消費税の申告課税事業者になった年から発生します
理事長個人の確定申告法人の顧問料とは別のことが多い
給与計算社労士の領域と重なります
税務調査の立ち会い日当が別にかかることがあります
銀行に出す資料の作成入っていれば、遠慮なく頼めます

この一覧を持って、契約書と突き合わせてください。

書いていないものは、聞いて書き足してもらう。 別料金なら、いくらなのかまで書いてもらってください。 「そのときに見積もります」では、あとで困ります。

医療法人で、抜けやすいもの

ここが、医院ならではの注意点です。

手続き期限誰の仕事か
事業報告書等・監事の監査報告書の届出会計年度終了後3か月以内都道府県へ。税務署ではありません
資産の総額の変更登記事業年度の末日から3か月以内登記は司法書士。段取りは誰がするか
社員総会・理事会の議事録その都度誰が作るか決めておく

この3つは、株式会社にはありません。 だから一般の契約書のひな形には、入っていません。

「これはやってもらえますか」と、名指しで聞いてください。 やってもらえるなら、契約書に書いてもらう。 別料金なら、金額も書いてもらう。 「うちはやりません」なら、誰がやるかを決めておく必要があります。

② 訪問の回数

2つ目は、これです。金額に直結します。

確かめること
年に何回、来てもらえるのか
誰が来るのか(税理士か、スタッフか)
来るのは何のためか(資料を取りに来るだけ、ではないか)
回数を減らしたら、金額は下がるのか
画面越しの打ち合わせでもいいのか

3つ目を確かめてください。 「訪問」が資料の受け渡しだけになっている医院があります。 それなら郵送やデータで足ります。その分、金額を下げられるはずです。

逆に回数が少なくても、その場で判断が出るならいいのです。 回数ではなく中身で見てください。 顧問料の決まり方もご覧ください。

③ 損害賠償

いちばん見られていないのが、ここです。

税理士が判断を誤って、先生が余計な税金を払うことになった。 そのときどこまで賠償されるのかが書いてあります。

確かめることなぜ
賠償の上限が決められていないか「顧問料の年額を上限とする」などの定めがあることがあります
どこまでが対象か本税、加算税、延滞税。どこまで含むか
資料を出さなかった場合の扱い先生の側に落ち度があると、免責されます
賠償責任の保険に入っているか契約書には書かれていないことが多い。聞いてください

1つ目に注意してください。 上限が顧問料の年額だと、98万円が上限ということになります。 判断を1つ誤れば、数百万円の話になることもあるのに、です。

上限があること自体は、おかしくありません。 ただしそう決まっていることは、知っておいてください。

先生の側の義務も書いてあります

たいていの契約書には、「資料を期限までに正確に提出すること」という条項があります。
これを守っていないと、間違いが起きても税理士の責任にはなりません。 領収書を年に1回まとめて渡している、という状態は、ここに引っかかります。

解約のことも書いてあります

最後に、契約を終わりにするときの条件です。

確かめることよくある定め
いつまでに言えばいいか1〜3か月前までに書面で、など
自動で更新されるか1年ごとの自動更新が多い
決算料の扱い期の途中でやめた場合、どうなるか
預けた資料の返却いつまでに、どの範囲で返してもらえるか

資料の返却は、必ず確かめてください。 過去の申告書、固定資産台帳、届出の控え、会計データ。 これがないと、次の税理士が困ります。

くわしくは税理士を替えるときの段取りに書きました。

最後に。 契約書を確かめることは、疑うことではありません。 お互いに、何をどこまでやるかをはっきりさせるだけです。

はっきりしているほうが、頼みやすくなります。 「これは範囲内ですか」と聞かずに済むからです。 いい関係を作るための作業だと思ってください。

出典:事業報告書等の届出は医療法第52条第1項(毎会計年度終了後3月以内に、事業報告書等および 監事の監査報告書を都道府県知事に届け出る)。 資産の総額の変更登記は組合等登記令第3条第3項(毎事業年度末日現在により、当該末日から3月以内)。 登記の申請の代理は司法書士、労働社会保険の手続きは社会保険労務士の業務です。 税理士業務の範囲は税理士法第2条。 契約書の条項の内容は事務所によって異なります。本文は一般的な例です。いずれも2026年9月時点。

いまの顧問契約書、一緒に見ましょうか。

契約書をお持ちいただければ、何が入っていて、何が入っていないかを一覧にします。 医療法人だけの手続きが範囲に入っているかも確かめます。 乗り換えの営業はしません。いまの事務所と話すための材料としてお使いください。

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最終更新:2026年9月12日

この記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。
税理士・行政書士 山下久幸

税理士・行政書士山下 久幸

福岡で税理士事務所を営む。医療法人の設立・税務と、資産形成・相続サポートを専門とする。

税理士と行政書士の資格を一人で保有し、法人化の判断から認可申請、設立後の顧問、相続の設計までを一貫して担当している。