3,000万円のCTを入れる。消費税は300万円です。

「課税事業者になれば、この300万円が戻ってくる」と言われたことはありませんか。 機器の営業さんが言うこともあります。

ふつうは、戻りません。 減るのは「納める額」です。 ただし条件がそろえば、本当に戻ることもあります。その線引きを書きます。

この記事の結論

機器を買ったら、消費税は戻ってきますか。
たいていは戻りません。減るのは納める額です。ふつうの計算のしかたで還付が出るのは、1年の仕入と設備投資の合計が、その年の収入を超えたときだけ。開業の年でもないかぎり、めったに起きません。
では、買う意味はないのですか。
あります。納める額はしっかり減ります。自費3,000万円の歯科が3,000万円の機器を入れると、その年の消費税は約112万円減ります。「戻る」ではなく「減る」と考えてください。
本当に還付が出るのはどんなときですか。
その機器を自費診療だけに使う場合です。矯正専用、審美専用、自由診療専用。保険にいっさい使わないなら、払った消費税を全額引けます。さきほどの歯科なら、納税112万円が112万円の還付に変わります。

「戻る」ではなく「納める額が減る」

消費税の申告は「もらった消費税 − 払った消費税」です。 払ったほうが多ければ差額が戻ってきます。これが還付です。

ただし引き算できる「払った消費税」には条件があります。 消費税をもらう売上のために使ったものでなければいけません。

保険診療は消費税をもらっていません。 だから保険診療にも使う機器は、収入に占める自費の割合の分しか引けないのです。

だから還付になりにくい

もらう消費税も「自費の分だけ」、引ける消費税も「自費の割合の分だけ」。 両方に同じ割合がかかるので、1年の仕入と設備投資の合計が収入を超えないかぎり、引き算はプラスのままになります。
収入8,000万円の医院が、仕入3,000万円+機器3,000万円=6,000万円を使っても、まだ収入のほうが多い。だから還付にはなりません。

3つの医院で、いくら減るか比べます

どこも収入8,000万円、仕入・経費が年3,000万円。 そこへ3,000万円の機器(消費税300万円)を入れたとします。

 A 内科B 歯科C 美容
保険/自費7,200万/800万5,000万/3,000万0/8,000万
自費の割合10%37.5%100%
もらった消費税80万300万800万
機器を買わない年の納税50万188万500万
機器を買った年の納税20万75万200万
減った額30万円112万円300万円

どこも還付にはなっていません。納める額が減っただけです。

そして自費の割合が高い医院ほど、減り方が大きい。 A内科は30万円、C美容は300万円。10倍の差がつきます。

同じ機器を同じ値段で買っても、医院によって効き方がこれだけ違う。 ここが押さえどころです。

自費専用の機器なら、還付まで届きます

ここからが本題です。 自費のためだけに使う機器は、払った消費税を全額引けるという計算のしかたがあります。

B歯科の3,000万円の機器が、矯正と審美にしか使わないものだったとします。

 金額
機器の消費税(自費専用なので全額)300万円
その他の仕入の消費税(300万×37.5%)112万円
引ける合計412万円
もらった消費税300万円
結果112万円が戻ってきます

納税75万円が、112万円の還付に変わりました。差し引き187万円の違いです。

条件は2つあります。

 条件
その機器を保険診療にいっさい使わないこと。少しでも使うなら、共通のものとして割合で分けます
買った時点で「これは自費専用」と分けて記録していること。あとから言っても通りません

②が抜けている医院が多いです。 機器を発注する前に、帳簿の付け方を決めてください。 納品されてからでは遅い。

免税事業者は、買う前の年に手を打つ

自費が少ない医院は、そもそも消費税の申告をしていません。免税事業者です。

免税事業者は消費税を納めません。そのかわり1円も取り戻せません。 引き算をする土俵に乗っていないからです。

取り戻したいなら、自分から「課税事業者になります」と届け出ます。 問題は期限です。

期限は「その年が始まる前の日」

2027年にCTを入れるなら、2026年12月31日までに届出を出します。
買ってから出しても、その年には効きません。ここで間に合わない医院を、何度も見ています。

つまり機器の検討は、買う前の年の秋から始める必要があります。 展示会で見て、年明けに決めて、春に納品——では届出が間に合いません。

一度選ぶと、2〜3年は戻れません

「買う年だけ課税事業者になって、翌年に戻る」はできません。

買ったものしばられる期間
自分から課税事業者を選んだ2年間は免税事業者に戻れない
税抜100万円以上の機器・建物など3年間戻れない
税抜1,000万円以上の機器・建物など3年間戻れず、簡易課税も選べない

医療機器はたいてい1,000万円を超えます。つまり3年コースだと思ってください。

その3年間、自費の売上には消費税がかかり、申告の手間も増えます。 減る金額と、3年分の負担を並べて比べる必要があります。

やるかどうかの決め方

 確認すること
いま免税事業者か課税事業者か
自費が収入の何%か
その機器は自費専用か、保険にも使うか
買うのは何年の何月か(届出の期限から逆算)
そのあと3年間、自費はどれくらいの見込みか

ざっくりした目安を申し上げます。

自費が2割を切っていて、機器を保険診療でも使うなら、わざわざ動く価値は小さいです。 減る額より、3年分の手間と納税のほうが大きくなりがちです。

逆に自費が3割を超えていて、その機器が自費専用なら、しっかり効きます。 矯正歯科、審美、美容、自由診療の内科。このあたりは計算する価値があります。

最後にひとつだけ。 消費税が減るからという理由で、いらない機器を買わないでください。 減るのは払った額の一部です。買えば買うほど手元のお金は出ていきます。 買うと決めた機器について、いちばん得な買い方を選ぶ——順番はそれです。 判断に必要な数字は、決算書と自費の内訳があれば出ます。

出典:国税庁タックスアンサー No.6401「仕入控除税額の計算方法」 (課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上なら全額控除、それ以外は個別対応方式または一括比例配分方式。 個別対応方式は「イ+(ハ×課税売上割合)」)。 同 No.6501「納税義務の免除」、同 No.6503(調整対象固定資産は税抜100万円以上)、 同 No.6502「高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除等の特例」(税抜1,000万円以上、 その初日以後3年を経過する日の属する課税期間まで免税事業者になれず簡易課税も選択できない)。 非課税の範囲は消費税法別表第二第6号および消費税法基本通達6-6-1。 試算は一括比例配分方式(s3のみ個別対応方式)での目安で、実際の金額は仕入の中身によって変わります。 いずれも2026年9月時点。

機器を買う前に、いくら減るか計算しませんか。

決算書と、保険・自費の内訳、そして買う予定の機器の金額と時期。 この3つがあれば、「いくら減るか」「届出はいつまでか」「3年しばられて割に合うか」まで出せます。 届出の期限は1日でも過ぎると効きませんので、発注より前にご相談ください。

無料相談を申し込む
LINE

9つの質問で、先生の医院で「できそうな節税」だけを選び出します。

LINEにご登録いただいた先生に、限定ページ「医療法人の節税チェックリスト(84項目)」をお送りしています。

9つの質問に答えるだけ(約2分)で、84項目の中から先生の医院でできそうなものだけが残る「かんたん診断」付き。

結果からそのまま解説記事に飛べて、チェックした内容はスマホに残ります。

LINEで、節税チェックリスト84項目を受け取る

※ こちらから営業のご連絡をすることはありません。


※ 決算書などの資料は、セキュリティのためLINEではお送りにならないでください。

個別のご相談はお問い合わせフォームからお願いします。

最終更新:2026年9月11日

この記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。
税理士・行政書士 山下久幸

税理士・行政書士山下 久幸

福岡で税理士事務所を営む。医療法人の設立・税務と、資産形成・相続サポートを専門とする。

税理士と行政書士の資格を一人で保有し、法人化の判断から認可申請、設立後の顧問、相続の設計までを一貫して担当している。