税務調査で、医院がいちばん多く指摘されるのは不正ではありません。 売上を計上する時期のずれです。

医科でも歯科でも、まずここを見られます。 しかも保険診療には、ずれが起きやすい理由があるのです。

ごまかしたつもりがなくても指摘されます。先に知っておいてください。

この記事の結論

売上はいつ計上するのですか。
診療をした月です。お金が入った月ではありません。3月に診療した分は、入金が5月でも3月の売上になります。
なぜ、ずれるのですか。
保険診療は、診療してから入金まで約2か月かかるからです。決算月の時点で、2か月分が「まだ入っていない売上」として残っています。これを計上し忘れると、売上が2か月分抜けます。
見つかったらどうなりますか。
抜けた分に税金がかかり、加算税と延滞税が乗ります。ただし翌年に計上していれば、税金が丸ごと増えるわけではありません。時期がずれただけなので、ごまかしとは扱われないのが普通です。

診療した月の売上です。入金した月ではありません

売上をいつ計上するか。ルールはひとつです。

その診療を行った時点で、売上になります。 お金を受け取ったかどうかは関係ありません。

 いつの売上か
3月に診療した保険分(入金は5月)3月
3月に入れた自費のインプラント(分割払いで6月まで)3月
3月に受けた矯正の前受金(治療は来年まで続く)治療の進み方で分けます

通帳を見て帳簿をつけていると、ここが必ずずれます。 通帳に入った日で売上を立てている医院は、確実に指摘されます。

保険診療は、2か月遅れて入金されます

保険診療のお金の流れは、こうなっています。

時期起きること
3月診療する
4月10日ごろレセプトを請求する
5月下旬支払基金・国保連から入金される

つまりいつでも「まだ入っていない2か月分」が宙に浮いています。

3月決算の医院なら、決算日の時点で2月分と3月分が未入金です。 この2か月分を売上に入れ忘れると、そのまま利益が減ります。

金額は小さくありません

保険収入が年7,200万円の医院なら、2か月分で1,200万円
これが抜けていたら、法人税だけで300万円以上の追徴になります。

決算月に、いくら未収が残るか

決算を組むときに確かめるのは、この3つです。

 確かめること
決算月とその前月のレセプト請求額が、未収金として帳簿に載っているか
労災・自賠責の未収が漏れていないか
患者さんの窓口負担で、まだもらえていない分(未収)がないか

②を落としている医院が多いです。 労災や自賠責は件数が少ないぶん、社保・国保の未収とは別管理になっていて、 決算のときに忘れられます。

③は、金額としては小さいことが多いですが、 「未収金の管理をしていない医院」だと見られると、ほかも疑われます。

査定で減らされた分は、どうするか

請求した金額が、そのまま入金されるとは限りません。 審査で減点されることがあります。

ここで悩まれるのが、「減らされるかもしれない分も、売上に入れるのか」です。

答えは「請求した金額で計上して、減った分はあとで調整する」です。 決算の時点では、まだいくら減るか分かりません。 だから請求額で立てておき、減額が確定した月に減らします。

ここは先生の医院で確認が必要です

過去の減点率が安定していて、合理的に見積もれる場合の扱いなど、 個別の事情で変わることがあります。 いまの処理でよいか、一度確かめておくことをお勧めします。

自費のほうが、もっとずれます

保険診療のずれは、パターンが決まっているので直しやすい。 やっかいなのは自費です。

ありがちな形正しい扱い
インプラントの代金を、分割で受け取っている治療が終わった時点で全額を売上に
矯正で、最初にまとめて受け取ったいったん前受金にして、治療の進み方に応じて売上に
自費の治療が、決算をまたいで続いている決算日までに終わった分だけ売上に

矯正が特に難しい。 治療期間が2〜3年に及ぶので、最初に受け取った金額を、何年かに分けて売上にしていくことになります。

「もらった年に全部売上にする」のも、「終わるまで全部前受金にしておく」のも、どちらも正確ではありません。 矯正を扱っている医院は、この配分のルールを決めて、毎年同じやり方で通してください。 年によって変えていると、そこを突かれます。

決算前に、これだけは確かめる

 確認
決算月と前月のレセプト請求額が、未収金に載っているか
労災・自賠責の未収が漏れていないか
自費で、決算をまたいでいる治療がないか
矯正の前受金の配分が、去年と同じルールか
窓口の未収を、一覧にできるか

期ズレは、ごまかしではなく、仕組みの問題です。 だから正しく直せば、二度と指摘されません。 逆に直さないと、調査のたびに同じことを言われます。

最後に。 期ズレで追徴されても、重加算税にはなりません。 隠したわけではなく、時期を間違えただけだからです。 とはいえ加算税と延滞税はかかります。 払わなくてよかったお金です。 決算の前に、上の5つだけ確かめてください。 くわしい調査全体の話は医科歯科の税務調査はここを見られるに書きました。

出典:売上の計上時期は、法人は法人税法第22条第4項(一般に公正妥当と認められる会計処理の基準)および 法人税基本通達2-1-1以下、個人は所得税法第36条および所得税基本通達36-8による。 社会保険診療報酬の請求から支払までの流れは、社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険団体連合会の 公表内容による。加算税・延滞税は国税庁タックスアンサー No.2026「確定申告を間違えたとき」、 No.9205「延滞税について」。 矯正など長期にわたる自費診療の収益配分や、査定減の処理は個別の事情によって異なります。 いずれも2026年9月時点。

決算の前に、未収の洗い出しをしませんか。

レセプトの請求額と帳簿の未収金が合っているか。労災・自賠責が漏れていないか。 自費で決算をまたいでいる治療がないか。この3つを見れば、期ズレはほぼ防げます。 決算月の2か月前までにご相談いただければ、間に合います。

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最終更新:2026年9月11日

この記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。
税理士・行政書士 山下久幸

税理士・行政書士山下 久幸

福岡で税理士事務所を営む。医療法人の設立・税務と、資産形成・相続サポートを専門とする。

税理士と行政書士の資格を一人で保有し、法人化の判断から認可申請、設立後の顧問、相続の設計までを一貫して担当している。