旅行中の外国人が、体調を崩して来院する。 日本の健康保険には入っていません。
このとき、消費税はもらうのでしょうか。
輸出には消費税がかからない、という話をご存じの先生ほど迷われます。 外国の方に提供したのだから、免税になるのではないか、と。
なりません。ふつうに10%もらってください。理由を書きます。
この記事の結論
- 外国人の患者さんに、消費税はかかりますか。
- かかります。日本の健康保険に入っていない方の診療は自由診療になり、消費税の対象です。相手が旅行者でも、住んでいるのが外国でも同じです。
- 輸出のように免税にはなりませんか。
- なりません。外国に住んでいる方へのサービスは免税になるものもありますが、「医療又は療養」は、はっきり対象から外されています。日本国内で、その場で受けるサービスだからです。
- この売上はどう扱えばいいですか。
- ふつうの自費診療と同じです。消費税を納めるかどうかの1,000万円の判定にも入ります。健診や予防接種と同じ扱いだと考えてください。
保険がない=自由診療。だから消費税がかかります
消費税がかからないのは、健康保険や国民健康保険などの公的な保険を使った診療です。 労災や自賠責も同じ扱いになります。
日本の保険に入っていない方の診療は、この枠に入りません。 自由診療です。美容整形や健診と同じ扱いになります。
だから消費税がかかる。10割負担の医療費に、さらに消費税が乗ります。
日本で働いていて健康保険証をお持ちの方なら、ふつうの保険診療です。
消費税はかかりません。国籍は関係ありません。
見るのは「日本の公的保険を使うかどうか」だけです。
「医療は免税にならない」と、はっきり書いてあります
外国に住んでいる方へのサービスには、消費税がかからないものがあります。 海外の会社にコンサルティングをした、設計図を送った、といったものです。
ところがここから外されているものが決められていて、その中に医療が入っています。
| 免税にならないもの(一部) |
|---|
| 国内における飲食又は宿泊 |
| 理容又は美容 |
| 医療又は療養 |
| 電車、バス、タクシーなどの旅客の輸送 |
| 劇場、映画館などでの観劇 |
考え方はこうです。 日本国内で、その場で受けて、その場で終わるサービスは、免税にしない。 ホテルも、レストランも、タクシーも同じ扱いです。医療もその仲間になります。
外国へ「輸出」しているわけではなく、日本国内で提供している。だから課税、という整理です。
こういう場合はどうなるか
| 状況 | 消費税 |
|---|---|
| 旅行中の外国人を自由診療で診た | かかる |
| 海外旅行保険の会社が、あとで払ってくれる | かかる(払う人が誰でも同じ) |
| 日本の健康保険証を持つ外国人を保険診療で診た | かからない |
| 治療目的で来日した方の自由診療 | かかる |
| 英文の診断書を書いた | かかる(文書料はもともと課税) |
| 通訳の費用を患者さんに請求した | かかる |
迷うところがありません。日本の公的保険を使わないものは、全部かかります。
1,000万円の判定にも入ります
この売上は、消費税を納めるようになるかどうかの判定に入ります。
判定に使うのは、保険診療を除いた売上です。 自由診療、健診、予防接種、文書料、そして外国人の自由診療。 これらを足して1,000万円を超えると、2年後から消費税を納めます。
くわしくは自費が1,000万円を超えたらに書きました。
外国人の診療が多い医院では、これが年に数百万円になることがあります。 「保険診療しかやっていないつもり」でも、健診・予防接種・文書料とあわせると、 気づかないうちに1,000万円に届くことがあります。
税金より、取りっぱぐれのほうが問題です
正直に申し上げると、消費税の扱いは迷いません。かかる、で終わりです。
実務で本当に困るのは、お金を回収できるかどうかのほうです。
| やっておくこと | |
|---|---|
| ① | 自由診療の料金表を作っておく。その場で金額を決めると、もめます |
| ② | 先にお支払い方法を確かめる。カードが使えるかどうかは大きい |
| ③ | 金額と内訳を書いた領収書を渡す。旅行保険の請求に必要になります |
| ④ | 回収できなかった分は、貸倒れとして処理できるか確認する |
④について補足します。 相手が帰国して連絡が取れない、というだけでは、すぐには経費になりません。 回収の努力をした記録が要ります。 督促の記録を残しておいてください。
最後に。 外国人の診療を断る医院もあります。言葉が通じない、回収が不安、という理由です。 それは経営の判断なので、とやかく言うつもりはありません。
ただ受けると決めたなら、料金表と支払い方法だけは先に決めておいてください。 税金の扱いは単純です。かかるものはかかる。 難しいのは、目の前の患者さんを診ながら、お金の話をどう切り出すかのほうです。
出典:消費税法別表第二第6号、消費税法基本通達6-6-1(非課税となる医療の範囲は健康保険法・国民健康保険法等に 基づく療養、労災、自賠責、公費負担医療など)。 国税庁タックスアンサー No.6201「非課税となる取引」(美容整形や差額ベッドの料金は非課税取引に当たらない)。 非居住者への役務の提供のうち輸出免税の対象から除かれるものは、消費税法施行令第17条第2項第7号および 消費税法基本通達7-2-16(「(7) 医療又は療養」を含む)。 納税義務の判定は同 No.6501「納税義務の免除」。いずれも2026年9月時点。
自費の売上、正しく数えられていますか。
外国人の自由診療、健診、予防接種、文書料。これらを足すと1,000万円に近い医院は少なくありません。 直近3年の売上を保険と自費に分けて、いつから消費税を納める側になるかを判定します。 届出の期限は1日でも過ぎると効きませんので、早めにご相談ください。
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最終更新:2026年9月11日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。