2027年1月から「こどもNISA」が始まります。 年60万円、合計600万円まで、子ども名義で運用の利益に税金がかからない仕組みです。
口座の申し込みは制度の開始を待たず、2026年10月1日から受け付けが始まります。
先生方にとって、これをどう位置づけるか。 結論から申し上げると、学費の準備としては小さすぎます。 私立の医学部なら6年で2,000万円前後から、高いところでは4,000万円を超えます。600万円では届きません。
それでもお勧めするのは、相続対策の入口としてです。
この記事の結論
- こどもNISAとは、どんな仕組みですか。
- 0〜17歳のお子さん名義で、年60万円・合計600万円まで、運用の利益に税金がかからない仕組みです。2027年1月1日から始まります。決まった商品を、毎月決まった額で買っていく形に限られます。18歳になると、手続きなしで大人のNISAに移ります。
- 医学部の学費に使えますか。
- これだけでは足りません。私立医学部の6年間の学費は、安いところで約1,850万円、高いところで約4,740万円。600万円を学費の柱にはできません。学費は別に用意する前提でお考えください。
- では、何のために使うのですか。
- 相続対策の入口です。年60万円は「1年に110万円までなら贈与税がかからない」枠の中に収まるので、実質的に税金なしで財産を子どもに移せます。移したあとの値上がりは、すべてお子さんの財産として育ちます。ただし税金がかからないのはNISAだからではなく、贈与の枠のおかげです。名義を借りているだけと見られない手当てが要ります。
こどもNISAの中身——申し込みは2026年10月から
| 内容 | |
|---|---|
| 対象 | 0〜17歳 |
| 1年に入れられる額 | 60万円 |
| 合計の上限 | 600万円 |
| 税金がかからない期間 | ずっと |
| 買えるもの | 決められた投資信託を、毎月決まった額で |
| 口座の名義 | お子さん本人 |
| 引き出し | 中学校に上がる年(12歳)以降、条件つきで可能 |
| 18歳になったら | 手続きなしで大人のNISAへ |
制度が始まるのは2027年1月ですが、口座の申し込みはその前から始まります。 三菱UFJ eスマート証券や松井証券が、2026年10月1日から受け付けると発表しています。
制度開始と同時に一斉に申し込むと混みますので、動くなら10月からです。
ジュニアNISAは何がダメで、何が直ったのか
「前もジュニアNISAというのがあったけれど、誰も使っていなかった」——そのとおりです。 2023年末で終わりました。今回のものは、その反省を踏まえています。
| ジュニアNISA(終了) | こどもNISA | |
|---|---|---|
| 引き出し | 18歳まで不可 | 12歳から可(条件あり) |
| 税金がかからない期間 | 5年間 | ずっと |
| 18歳になったとき | 手続きが必要 | 自動で移る |
| 1年に入れられる額 | 80万円 | 60万円 |
1年の枠は減りましたが、ジュニアNISAが使われなかった最大の理由は 「18歳まで一切引き出せない」という点でした。 そこが12歳に短縮され、期間の制限もなくなったので、制度としては別物になったと考えていいと思います。
先に言っておきます。600万円では学費に届きません
お子さんの進路として医学部を考えておられる先生は、少なくないはずです。 期待を持たせずに、数字を先に置きます。
| 進学先 | 6年間の学費(目安) | 600万円で |
|---|---|---|
| 国公立の医学部 | 約350万円 | 足ります |
| 私立医学部(安いほう) | 約1,850万円 | 3分の1くらい |
| 私立医学部(高いほう) | 約4,740万円 | 8分の1くらい |
しかもこれは学費だけです。予備校代、中高一貫校の学費、下宿の生活費は入っていません。 こどもNISAを学費の柱にする、という設計は成り立ちません。
正直に申し上げるのは、「学費のために」と考えて始めると、途中で必ず物足りなくなるからです。
この仕組みは「たくさん貯める」ためのものではなく、「税金のかからない器を早く押さえる」ためのものだとお考えください。
それでも開業医が使う理由——相続対策の入口として
600万円という金額の意味が変わるのは、学費ではなく相続の話にしたときです。
毎月5万円を10年積み立てて600万円。これを年5%で運用できたとして、そのまま置いておくとどうなるか。
| 時点 | いくらになっているか | 自分が出したお金 |
|---|---|---|
| 10年後(積立終了) | 約776万円 | 600万円だけ |
| 18歳(大学入学) | 1,162万円 | |
| 20歳 | 1,284万円 | |
| 50年後 | 5,736万円 |
出したのは600万円だけ。あとは何もしていません。 そして大事なのは、この増えた分にかかるはずだった税金がゼロだということです。
| 50年運用した場合(年5%で試算) | 金額 |
|---|---|
| 50年後の金額 | 5,736万円 |
| うち増えた分 | 5,136万円 |
| ふつうの口座なら税金(20.315%) | ▲1,043万円 |
| こどもNISAなら | 0円 |
そして親の側から見ると、600万円が財産から抜けて、そのあとの値上がりはすべてお子さんの財産として育ちます。 財産がふくらみやすい開業医の先生にとっては、ここが効きます。
とくに出資持分のある医療法人の理事長は、法人に利益がたまるほど持分の評価が上がり、 換金しにくい形で財産がふくらんでいきます。 現金のうちに、早い時期に、少しずつでも次の世代に動かしておく意味はあります。
税金がかからないのは、NISAのおかげではありません
ここが、税理士としてどうしてもお伝えしたいところです。
お子さん名義の口座に親のお金を入れる。これは親から子への贈与です。
年60万円に税金がかからないのは、NISAだからではありません。 「1年に110万円までなら贈与税がかからない」という枠の中に収まっているからです。 制度の名前が変わっても、贈与のルールは何も変わりません。
| 気をつけること | 内容 |
|---|---|
| ほかの贈与と合算 | 同じ年に現金なども贈っていると、合わせて110万円で見ます。お孫さんに別途贈っている先生は、ここで超えやすい |
| 名義を借りているだけ | 「あげたつもり」では贈与になりません。親が実質的に握っていると見られれば、親の財産に戻されます |
| 証拠を残す | 贈与契約書を作る、記録を残す。この手当てが要ります |
| 7年以内は戻される | 亡くなる前7年以内の贈与は、相続財産に足し戻されます。早く始めるほど効きます |
運用としては魅力的ですが、これは裏を返すとお子さん本人が贈与を知らない状態です。 「名義を借りているだけ」と見られるリスクが上がります。
相続の調査で指摘されやすいのが、まさにこの子や孫の名義になっている預金・証券です。 仕組みとしては優秀ですが、贈与の組み立てはきちんとやってください。 くわしくは預金はマイナンバーでバレるのかもご覧ください。
12歳まで引き出せません
いい話ばかりではありません。12歳になるまで、1円も引き出せません。 12歳を過ぎても、自由に出せるわけではないと整理されています。 使い道がお子さんのためであること、本人の同意があることなどが必要です。
0歳から始めたら、小学校を卒業するまで一切手が出せない。 何があっても使わないお金だけを入れてください。
中学受験の塾代、中高一貫校の学費、医学部の予備校。 本格的にお金がかかり始めるのは、むしろ12歳以降です。
その意味では、12歳から引き出せるという形は、噛み合っていないわけではありません。 ただし小学生のうちにまとまった支出(中学受験の直前など)があっても手をつけられない点は変わりません。
順番の話——まず先生ご自身の枠です
最後に、順番の話をさせてください。
医療法人は、利益を配当できません。 法人にお金を残しても、個人の資産形成に回すには役員報酬を通すしかない、という形になっています。
だからこそ、理事長ご自身の枠を先に埋めるほうが効率的です。 大人のNISAは生涯で1,800万円。こどもNISAの3倍あります。
ご自身の枠が空いているのに、お子さんの600万円を先に始めるのは順番が逆です。 ご自身の枠を使い切って、なお余裕がある。その次の置き場所として、こどもNISAが出てきます。
当事務所では、行き過ぎた節税はしないという考え方でご案内しています。 こどもNISAも、節税商品として飛びつくものではありません。
税金のかからない器を、使える人が、早いうちに押さえておく。 それ以上でも以下でもない、というのが正直なところです。
出典:こどもNISAの制度内容は、2026年度(令和8年度)税制改正法および大和総研「2027年1月開始『こどもNISA』の概要」(2026年5月26日)による。 口座申込の開始時期は各証券会社の公表による。 私立医学部の学費は各医学部予備校が公表する2026年度の集計値による。 運用の試算は年5%・月複利での計算であり、将来の成果を保証するものではありません。いずれも2026年9月時点。
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最終更新:2026年9月11日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断や投資判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の法改正等により変更される場合があります。投資には元本割れのリスクがあります。実際のご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。