自宅のローンを、変動金利で組んでいる院長は多いと思います。 その金利が、いま動いています。
日本銀行の政策金利は、2025年1月の0.5%から、2026年9月には1.25%になりました。 この1年8か月で、ちょうど0.75%上がったことになります。
では、自宅ローンの金利が0.75%上がると、返済はいくら増えるのか。 残高5,000万円・残り25年なら、総額で約524万円です。 院長のご自宅に多い8,000万円〜1億円なら、800万〜1,000万円を超えます。
この記事では、この数字を元利均等で計算したうえで、 「何から手をつけるか」の順番をお伝えします。 先に結論を言うと、固定に替える前に、繰上返済する前に、まず手元のお金を厚くするです。
この記事の内容を、動画でも解説しています。
この記事の結論
- 金利が0.75%上がると、返済はいくら増えますか。
- 残り25年・1.0%→1.75%なら、5,000万円で毎月約1.7万円、総額約524万円。1億円なら毎月約3.5万円、総額約1,047万円です。
- 「5年間は返済額が変わらない」なら、安心ですか。
- 安心ではありません。毎月の額が同じでも、中身は利息が増えて元本の返済が減っています。1億円の例では、5年後に予定より約317万円多く残高が残り、6年目から返済額が上がります。
- 何から手をつければいいですか。
- ①手元のお金を厚くする → ②固定への借換えは損益分岐を計算してから → ③繰上返済は最後、の順です。住宅ローン控除は、金利が上がっても1円も増えません。
0.75%上がると、毎月いくら増えるか
まず数字です。残り25年のローンで、金利が1.0%から1.75%に上がり、そのまま続いた場合を計算しました。 毎月同じ額を返す方式(元利均等返済)、ボーナス払いなしです。
| ローンの残高 | 1.0%の毎月 | 1.75%の毎月 | 毎月の増加 | 残り25年の増加 |
|---|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 188,436円 | 205,895円 | +17,459円 | 約524万円 |
| 8,000万円 | 301,498円 | 329,431円 | +27,933円 | 約838万円 |
| 1億円 | 376,872円 | 411,789円 | +34,917円 | 約1,047万円 |
毎月3.5万円と聞くと、医院の売上から見れば小さく感じるかもしれません。 でも25年で1,000万円です。 歯科ならユニット1台、内科なら内視鏡のシステム一式が入れ替えられる金額です。
上がるのが0.75%で終わる保証もありません。 1億円で金利が2.5%まで上がると、毎月の返済は448,617円。 いまより毎月約7.2万円、25年で約2,152万円増えます。
1.0%は計算のための仮の金利です。実際の金利は、借りた時期や銀行、優遇の幅で一人ひとり違います。 お手元の返済予定表で、いまの金利と残高、残りの年数を確認してください。 それだけで、この表をご自身の数字で作り直せます。
政策金利は、この1年8か月で0.75%上がりました
日本銀行が決める政策金利(銀行どうしが短期でお金を貸し借りするときの金利の目標)は、次のように動いてきました。
| 決めた日 | 政策金利 |
|---|---|
| 2025年1月24日 | 0.5%程度 |
| 2025年12月19日 | 0.75%程度 |
| 2026年6月16日 | 1.0%程度 |
| 2026年9月18日 | 1.25%程度(9月24日から適用) |
住宅ローンの変動金利は、一般に半年に1回見直されます。 多くは、銀行が企業に貸すときの基準になる金利(短期プライムレート)をもとに決まります。 政策金利が上がると、この基準金利が上がり、数か月遅れて自宅のローンにも届きます。
医院の借入にいつ届くかは、医院の借入は、10月に上がりますに書きました。 自宅のローンも同じ流れで動きます。 9月の利上げ分は、これから届く分です。
「5年は返済額が変わらない」は、安心材料ではない
変動金利のローンには、多くの場合、次の2つのルールがあります。
| ルール | 中身 |
|---|---|
| 5年ルール | 金利は半年ごとに見直しても、毎月の返済額は5年間変えない |
| 125%ルール | 5年後に返済額を見直すとき、それまでの1.25倍までしか上げない |
これだけ聞くと、守られているように見えます。 でも金利が上がれば、利息は半年ごとに増えています。 返済額が同じなら、増えた利息の分だけ、元本の返済が減ります。
1億円・残り25年・1.0%のローンで、7か月目から1.75%に上がったとします。
| 7か月目の返済の中身 | 1.0%のまま | 1.75%に上がった |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 376,872円 | 376,872円(変わらない) |
| うち利息 | 81,863円 | 143,260円 |
| うち元本 | 295,010円 | 233,613円 |
| 5年後の残高 | 約8,195万円 | 約8,512万円(約317万円多い) |
| 6年目からの毎月 | 376,872円 | 420,602円(+43,730円) |
最初から返済額を見直した場合の増加は毎月34,917円でした。 5年待ってもらうと、6年目からの増え方はそれより大きくなります。 先送りした分を、残りの20年で返すからです。
5年ルール・125%ルールは、変動金利によくある仕組みですが、すべてのローンにあるわけではありません。 半年ごとに返済額が変わる商品もあります。 また、金利が大きく上がって利息が毎月の返済額を超えると、払いきれない利息(未払利息)が後ろに残ります。 ご自身の契約がどちらか、金銭消費貸借契約書か、銀行に確認してください。
住宅ローン控除は、金利が上がっても増えません
「利息が増えても、住宅ローン控除があるから」と考える方がいます。 ここは誤解が多いところです。
住宅ローン控除は、年末のローン残高 × 0.7%を、所得税(引ききれない分は一部住民税)から引く制度です。 計算に金利は入りません。 金利が1.0%でも2.5%でも、控除の額は同じです。
| 令和8年度改正後(2026〜2030年に入居) | 中身 |
|---|---|
| 控除率 | 年末残高の0.7% |
| 対象になる残高の上限(新築の長期優良住宅・低炭素住宅) | 4,500万円(子育て世帯等は5,000万円)、13年 |
| 所得の要件 | 合計所得金額2,000万円以下 |
| 床面積の要件 | 40㎡以上。ただし所得1,000万円超の人は50㎡以上 |
たとえば2026年に長期優良住宅を新築して1億円を借りた院長でも、控除の対象は4,500万円までです。 控除は多くて年31.5万円。 一方、1億円の1年目の利息は、1.0%で約98万円、1.75%なら約172万円です。 金利が上がった分は、まるごと自分で負担することになります。
そして所得が2,000万円を超える年は、控除そのものが使えません。 役員報酬の高い理事長や、利益の大きい個人開業の院長は、すでに対象外のことがあります。 制度の全体と社宅との比べ方は、医療法人の理事長と住宅ローン控除に書きました。
対策の順番は「手元資金→固定の検討→繰上返済」
① 手元のお金を厚くする
金利が上がって困るのは、利息が増えることより、毎月の支払いが増えて手元が薄くなることです。 返済が月3.5万円増えても、手元に1年分、2年分の余裕があれば慌てずに済みます。 まずは医院と家計の両方で、何か月分の現預金があるかを確認してください。 目安の考え方は医院は現預金をいくら持つべきかに書いています。
② 固定への借換えは、損益分岐を計算してから
「上がるなら、いまのうちに固定へ」という相談も増えました。 ただ、固定金利はすでに高いです。 全期間固定の【フラット35】は、2026年10月の金利が年3.83%(返済期間21〜35年・融資率9割以下で最も多い金利)です。
1億円・残り25年で比べると、3.83%の固定は毎月518,496円。 変動1.0%より今月から毎月約14.2万円多く払うことになります。 25年の返済総額で比べると、次のとおりです(借換えの費用は入れていません)。
| 変動金利のこれから(仮定) | 25年の返済総額 | 固定3.83%との差 |
|---|---|---|
| 1.0%のまま | 約1億1,306万円 | 変動が約4,249万円少ない |
| 1.75%に上がって、そのまま | 約1億2,354万円 | 変動が約3,201万円少ない |
| 2.5%に上がって、そのまま | 約1億3,459万円 | 変動が約2,096万円少ない |
| 半年ごとに0.25%ずつ上がり、4.0%で止まる | 約1億4,739万円 | 変動が約816万円少ない |
| 半年ごとに0.25%ずつ上がり、5.0%で止まる | 約1億5,609万円 | 固定が約54万円少ない |
| 固定3.83% | 約1億5,555万円 | — |
いまの水準では、変動が8年かけて5%まで上がり続けて、やっと固定と並ぶ計算です。 さらに借換えには、事務手数料・登記費用・印紙代などがかかります。 固定にする価値は「返済額がずっと読める安心」にあります。その安心に、いくら払えるかで決めてください。
住宅ローンには団信(団体信用生命保険)がついています。借り換えると、その時点の年齢と健康状態で審査を受け直します。
持病の治療中だと、入れないことがあります。
住宅ローン控除は、借換え後も条件を満たせば続きます。対象は借換え直前の残高の範囲までです。
③ 繰上返済は最後
金利が上がると、繰り上げて返したくなります。 でも返したお金は、二度と同じ条件では借りられません。 住宅ローン控除・団信・手元のお金の3つを手放すことにもなります。 くわしくは住宅ローンは繰上返済するなに書きました。
医院の借入と同じ銀行で組んでいる院長へ
開業のときにお世話になった地銀で、自宅のローンも組んでいる。 福岡の院長には、よくある形です。 この場合、金利上昇は同じ銀行から、医院と自宅の両方に同時に届きます。
| 例えば | 同じ銀行に | 起きること |
|---|---|---|
| 個人開業の歯科(インプラント・矯正の自費あり) | ユニット入替の設備資金+自宅ローン8,000万円、どちらも変動 | 医院の返済と自宅の返済が同じ時期に上がる。個人開業なので、どちらも院長個人の財布から出る |
| 医療法人の内科(理事長) | CT導入の法人借入(理事長が連帯保証)+自宅ローン1億円 | 銀行は法人と理事長個人を合わせて見る。自宅ローンの返済が重くなると、法人の次の借入の相談にも影響しうる |
注意したいのは、自宅ローンだけ他の銀行へ借り換えるときです。 メインの銀行から見れば、取引が1本減ります。 医院でまた借りたい時期が近いなら、借換えの前に、メインの銀行に条件の見直しを相談してください。 医院の取引がある院長は、銀行にとって大事なお客さんです。交渉の余地はあります。
医院の借入の金利をどう考えるかは医院の借入は、10月に上がります、 借入の整理は借入が増えてきたとき|一本化と借換えに書いています。
医療法人の理事長は、社宅という選択肢もあります
これから住まいを決める理事長や、所得が2,000万円を超えて住宅ローン控除が使えない理事長は、 法人が借り上げて理事長に貸す社宅も比べてください。 住まいの費用を法人の経費にでき、理事長の負担は税法で決まった低い家賃で済みます。 金利の上下を、個人で直接かぶらない形でもあります。 仕組みは医療法人の社宅に書きました。 個人開業の院長は使えません。
院長が今やること
- 返済予定表を出す。いまの金利・残高・残りの年数・変動か固定かを確認します
- 0.75%上がったら毎月いくら増えるか、計算する。この記事の表で、おおよその見当はつきます
- 契約に5年ルール・125%ルールがあるか確認する。あれば、返済額が変わらなくても元本の減りは遅れています
- 住宅ローン控除を、今年使えているか確認する。所得2,000万円を超えていれば対象外です
- 医院と家計の手元資金を確認する。ここを厚くするのが最初の対策です
- 固定への借換えは、総額と費用を並べてから。団信の入り直しも忘れずに
- 同じ銀行で医院の借入もあるなら、まずその銀行に相談する。理事長は社宅も比べてください
金利は、院長の努力では変えられません。 変えられるのは、手元のお金の厚さと、どの順番で手を打つかです。 慌てて返す前に、まず数字を並べてください。
出典:日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2025年1月24日・2025年12月19日・2026年6月16日・2026年9月18日)。 国土交通省「住宅ローン減税」「令和8年度国土交通省税制改正概要」。 国税庁タックスアンサー No.1233「住宅ローン等の借換えをしたとき」。 住宅金融支援機構「【フラット35】最新の金利情報」(2026年10月資金受取分)「借換融資のご利用条件」。 返済額の試算は元利均等返済・ボーナス払いなしによる当事務所の計算で、1.0%は説明のための仮の金利です。 5年ルール・125%ルールの有無や内容、実際の金利・手数料は金融機関と商品により異なります。いずれも2026年10月時点。
自宅のローンと医院の借入、まとめて見直しませんか。
返済予定表をお持ちいただければ、金利が上がったときに毎月いくら増えるか、手元のお金で何か月もつかを一緒に計算します。 固定への借換えや繰上返済を考える前の段階でも結構です。 医療法人の理事長には、社宅との比較もお出しします。
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最終更新:2026年10月7日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の返済計画や借換えの適否、税務判断を保証するものではありません。記載の金利・制度は執筆時点(2026年10月)のものであり、金利は金融情勢により変動し、返済額の見直しルールや手数料は金融機関・商品により異なります。実際のご判断にあたっては、必ず金融機関および税理士等の専門家にご相談ください。