「ホームページのリニューアルに60万円、保守で月2万5千円」。 こうした見積もりを見て、高いのか安いのか迷う院長は多いと思います。

いまは、AIに「こういう医院のホームページを作って」と頼むと、かなりのところまで形になります。 私の事務所のホームページも、AIと一緒に作りました。外注は一切していません。

ただ、医院の場合は一般の会社と決定的に違うところがあります。 医療機関のホームページには、医療法の広告規制がかかります。 AIは、一般の会社向けの「売れる文章」を上手に書きます。その中には、医院では使えない表現がふつうに混ざります。

この記事では、AIで作るときの考え方と、人が必ずチェックすべきところ、制作費の経理と補助金までをまとめます。 結論は、作るのはAIで速く、チェックは人が。この順番です。

この記事の内容を、動画でも解説しています。

この記事の結論

医院のホームページも、AIで作っていいですか。
作っていいです。大事なのはコストよりスピードです。採用ページやお知らせなら、今日作って明日出せます。ただし、医院のホームページは2018年6月から医療法の広告規制の対象です。AIが書いた文章を、そのまま出してはいけません。
何をチェックすればいいですか。
厚生労働省の医療広告等ガイドラインで禁止されている表現です。「地域No.1」「痛くない治療」などの比較・誇大表現、患者さんの体験談、説明のないビフォーアフター写真、「今だけ半額」のような費用を強調した表現。自費診療のページは、費用やリスクを書く限定解除の要件も満たす必要があります。
制作費は経費になりますか。補助金は使えますか。
内容を更新していくホームページの制作費は、原則として支出した年の経費として扱われています。ただし、予約などのプログラム部分はソフトウエアとして資産になることがあります。補助金は、持続化補助金は医師・歯科医師・医療法人が対象外。デジタル化・AI導入補助金は医療法人も対象ですが、ホームページ制作そのものは対象外です。

60万円が高いかどうかより、速さです

まず、60万円という金額について。 デザイン、文章、予約の仕組み、保守まで含むなら、相場なりだと思います。 高いか安いかは、ここでは本質ではありません。

本質は速さです。 制作会社に頼むと、納品は1か月後、2か月後になります。 文言を1か所直すのにも、依頼して、見積もりをもらって、1週間待つ。 補助金が出るのを待ってから作ろうとすると、半年、1年と過ぎていきます。

AIなら、思いついたその日に作って、翌日に公開できます。 私の事務所のホームページは、2026年8月から1か月ほどで、AIとやり取りしながら作りました。 事務所を紹介する動画もAIで作っています。そこから実際にお問い合わせも来ています。

動画でお話しした例をひとつ。 ある顧問先の社長(医院ではありません)から、「ホームページの更新に40万円、採用ページに30万円。利益が出ているので、経費で落とせば節税にもなる。進めていいですか」と相談を受けました。 その場でAIに情報を渡したところ、10分もかからずに、それなりのページができあがりました。 社長の答えは「これでいいじゃないですか」でした。

ただし、医院は「出す前」に一手間かかります

一般の会社なら、作って、出して、反応を見て直せばいい。 医院は、出す前に医療法の広告規制を通す必要があります。 AIで速く作れるようになったぶん、チェックだけは人が必ずやる。ここが医院版の答えです。

医院のホームページは「広告」です

かつて、医療機関のホームページは「患者さんが自分で見に行くもの」として、広告規制の外に置かれていました。 美容医療のトラブルが増えたことをきっかけに医療法が改正され、2018年6月から、ホームページもほかの広告と同じく規制の対象になっています。

厚生労働省の医療広告等ガイドライン(最終改正は2026年3月30日)では、次の3つを満たすものを「医療広告」としています。

要件中身
誘引性患者さんの受診を誘う意図がある
特定性医院の名前や医師の名前が分かる
医療に関する内容医業・歯科医業や医院に関する内容である

医院のホームページは、ほぼ間違いなく3つとも満たします。 そして医療広告は、法律と告示で「広告してよい」とされた事項しか書けないのが原則です。 一般の会社のように、何でも自由に書けるわけではありません。

違反すると、まず保健所などから行政指導が入ります。従わなければ中止命令・是正命令です。 虚偽の広告や、命令に従わない場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(医療法第87条)の対象になります。 厚生労働省は、ホームページの違反を探す「医療機関ネットパトロール」も続けていて、誰でも通報できる窓口があります。

AIが書きがちな、医院では使えない表現

AIに「集患できるホームページを」と頼むと、一般の会社のLP(ランディングページ。広告から飛んでくる1枚もののページ)で効く言葉を選んできます。 それが医院では使えない、という場面が多いのです。ガイドラインとQ&Aに載っている例で整理します。

AIが書きがちな表現ガイドライン上の扱い
「地域No.1」「日本有数の実績」「最高の医療」比較優良広告。最上級の表現は、事実でも禁止です
「芸能人も通う医院」「著名人も推薦」著名人との関係の強調は、比較優良広告として扱われます
「痛くない治療」「絶対安全」「必ず治ります」虚偽・誇大広告のおそれ。「絶対安全」は虚偽の例として明記されています
「満足度98%」(調査方法の記載なし)根拠を示さないデータは虚偽広告として扱われます
「患者様の声」「口コミ」の掲載治療の内容・効果に関する体験談は禁止です。都合のよい口コミだけを選んで載せるのも不可
「今なら半額」「キャンペーン実施中」費用を強調した広告として、品位を損ねるものに当たります
「○○専門外来」「審美治療」広告できる事項ではありません(具体的な治療名なら書ける場合があります)
「雑誌○○で紹介されました」新聞・雑誌などで紹介された旨は、広告できる事項ではありません

医科の例でいえば、内科の医院で「この症状が出ていたら命に関わります。今すぐ受診を」と不安をあおる文章。 根拠の乏しいリスクの強調は、誇大広告の例として挙げられています。 歯科なら「歯を削らない、痛くない治療」。「削らない」は、適正な医療の範囲なら書けます。でも「痛くない」は書けません。

画像にも注意してください。 ガイドラインでは「病人が回復して元気になる姿のイラスト」が、誇大広告の例として挙げられています。 AIで作った「治療後に笑顔になった患者さん」の画像は、まさにこれに当たりかねません。 また、医院の建物の写真は自院のものなら載せられますが、他院の写真は載せられません。 院内の写真は、AIで作った画像ではなく、実際の写真を使うのが安全です。

ビフォーアフター・体験談・自費のページ

ビフォーアフター写真

治療の前後の写真は、説明なしに写真だけを並べるのは禁止です。 前だけ、後だけの写真でも同じ扱いです。 加工・修正した写真は、虚偽広告として扱われます。撮影の条件を変えて効果を大きく見せた写真は、誇大広告です。

載せるのであれば、通常必要な治療の内容、費用、主なリスクや副作用などの詳しい説明を、写真と同じページに、同じくらい見やすく付ける必要があります。 説明を別のページへのリンクにしたり、極端に小さな文字にしたりするのは認められません。

体験談

医院が自分のホームページに載せる、治療の内容や効果に関する体験談は、広告に当たり、禁止です。 一方で、患者さんが個人のSNSや第三者の口コミサイトに自分で書いたものは、医院が費用を出して頼んだりしていなければ、広告に当たりません。 つまり、口コミを医院のページに取り込む、お礼をして書いてもらう。ここで線を越えます。

自費診療のページと「限定解除」

インプラント、矯正、ホワイトニング、美容皮膚科、AGA治療。自費のページは、書きたいことが多い分野です。 ホームページのように「患者さんが自ら求めて見に来る」ものは、次の要件をすべて満たせば、広告できる事項の限定を外せます。これを限定解除といいます。

要件中身
①患者さんが自ら求めて入手する情報を表示するホームページなどであること
②電話番号やメールアドレスなど、問い合わせ先を書くこと
③(自費のみ)通常必要な治療の内容、標準的な費用、治療期間・回数を書くこと
④(自費のみ)主なリスク・副作用を書くこと

③と④は、「デメリット:数回の注射が必要な場合があります」程度の一行では足りない、とQ&Aで示されています。 費用は、最低額から最高額までの幅(よく発生する追加費用を含む)で示す方法もあります。 歯科のインプラントは、国内で承認された医療機器を使う治療なら、保険が使えない旨と標準的な費用を併記することで、限定解除がなくても広告できる事項になります。

なお、検索結果に出す広告やバナー広告そのものは、限定解除の対象になりません。広告文は、広告できる事項だけで書きます。 広告から飛んだ先の医院のホームページは、要件を満たせば限定解除できます。

試すなら、採用ページから

動画では、「まず作って、出して、反応を見る」ことをおすすめしました。 医院でこれがいちばん素直に効くのは、スタッフの採用ページです。

ガイドラインでは、職員の採用を目的とした求人広告は、受診を誘うものではないため、医療広告の対象外とされています。 歯科衛生士や看護師、受付の募集ページなら、AIで今日作って、明日から求人サイトのリンク先にできます。 採用は、1か月待てばその分だけ遅れます。ここは速さがそのまま成果になります。 ただし、採用ページの中に「当院のインプラントは…」と診療の宣伝を混ぜると、その部分は医療広告として見られるおそれがあります。採用は採用、診療は診療で分けてください。

診療のページでも、テストはできます。 キャッチコピーを2案作って反応を比べる、休診日のお知らせをその日のうちに出す、院長のあいさつ文を書き直す。 「開院20周年」のような事実や、あいさつ文はキャッチコピーとして使えます。 変えていいのはルールの内側での言い回しです。「今だけ半額」のような値引きの訴求を試すことは、医院ではできません。

制作費の経理と、補助金

制作費は、原則としてその年の経費

ホームページは内容を更新しながら使うもので、制作の効果が1年以上続くとは通常考えにくいことから、制作費は原則として支出した年の経費として扱われてきました。 一方で、予約、問診、会員ログインのようなプログラムが組み込まれている部分は、ソフトウエアとして資産に計上し、5年で減価償却することがあります。 見積もりは「デザイン・文章」と「システム」に分けて出してもらうと、決算のときに迷いません。

資産に計上するものでも、要件を満たす医院なら、40万円未満の少額減価償却資産の特例で、その年に全額を経費にできる場合があります。 広告費全般の考え方は医療法人の広告宣伝費にまとめています。

AIで自分で作る場合は、出ていくお金はAIの利用料、サーバー代、ドメイン代くらいです。 私の場合、ドメイン代が1つ年1万円ちょっと。ほぼそれだけです。

「経費で落ちるから70万円」は、手元のお金が減ります

例えば、税率30%で70万円を払うと、税金は21万円減ります。それでも手元からは49万円が出ていきます。 AIで作れる内容なら、その49万円は残せたお金です。 節税は、使う理由がある支出に、あとから付いてくるものとして考えてください。

補助金は、ほぼ当てにしないでください

補助金医院で使えるか
小規模事業者持続化補助金使えません。公募要領(第20回)で「医師、歯科医師」と「医療法人」が対象にならない者として明記されています
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)医療法人(従業員300人以下)も個人の医院も対象になりえます。ただし、ホームページ制作は補助対象のITツールに登録できないとされています。対象は、事務局に登録された予約・会計などのソフトです

どちらも、交付が決まる前に買ったものは対象になりません。 補助金を待ってホームページを止めておくより、AIで先に出してしまうほうが、医院にとっては得です。 補助金全般の注意点は補助金は後払いですをご覧ください。

院長が今やること

順番やること
1いまのホームページのURL(なければ医院名・診療科・診療時間・特色)をAIに渡し、作り直しを頼んでみる
2AIへの指示に「医療広告等ガイドラインに沿って。比較・誇大表現、体験談、費用の強調は使わない」と最初から書いておく
3できた文章と画像を、人がガイドラインと厚生労働省の「ウェブサイト等の事例解説書」で1行ずつ確認する
4自費のページは、費用・期間・回数・主なリスクを同じページに書く。ビフォーアフターは載せないか、詳しい説明とセットにする
5迷う表現は、医院を所管する保健所・自治体の窓口に聞く
6外注する部分は、見積もりを「デザイン・文章」と「システム」に分けてもらい、顧問税理士に経理の扱いを確認する

AIの「チェックして」にも頼れますが、最後に責任を負うのは開設者である院長です。 AIは80点の下書きを数分で出してくれます。残りの20点、つまり医療法の線引きを、人が埋めてください。

税金の相談も同じです。まずAIで調べて、論点を整理してから、顧問税理士に「こう考えたが、どうか」と聞く。 そのほうが速く、深い話ができます。顧問税理士の使い方は相談すべき4つのタイミングにまとめています。

ホームページの見積もり、経理の扱いから一緒に見ます。

制作会社からの見積もりや、AIで作った下書きをお持ちください。 どこまでがその年の経費で、どこからが資産になるか、本当にその金額をかける必要があるかを、決算と資金繰りの目線でお伝えします。 医療広告の表現の最終判断は保健所などの窓口になりますが、気になる箇所の洗い出しはお手伝いできます。

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最終更新:2026年10月23日

この記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の広告表現の適否や税務上の取扱いを保証するものではありません。記載の内容は執筆時点(2026年10月)の医療広告等ガイドライン(2026年3月30日最終改正)・各補助金の公募要領等によるもので、その後の改正により変わる場合があります。広告表現は医院を所管する保健所・自治体の窓口に、経理の扱いは税理士等の専門家にご確認ください。
税理士・行政書士 山下久幸

税理士・行政書士山下 久幸

福岡で税理士事務所を営む。医療法人の設立・税務と、資産形成・相続サポートを専門とする。

税理士と行政書士の資格を一人で保有し、法人化の判断から認可申請、設立後の顧問、相続の設計までを一貫して担当している。