「医療法人は補助金が使えない」と思っていませんか。
半分は当たっています。中小企業向けの補助金には、医療法人が対象外のものがあります。
でも使えるものもあります。そして、使えるかどうかより先に知っておくべきことがあります。 補助金は、後払いだということです。
この記事の結論
- 医療法人でも使えますか。
- 制度によります。たとえば国のデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、対象となる組織形態に医療法人が明記されています。一方、中小企業基本法の「中小企業者」を要件にしている制度では、対象外になることがあります。
- いちばん大事な注意点は。
- 後払いです。採択されて、事業をやって、報告して、そのあとに入金されます。その間の資金は、自分で用意します。ここを知らずに申し込むと、資金繰りが詰まります。
- だから何が要るのですか。
- 経営計画と、つなぎの資金です。計画がないと通りませんし、資金がないと実行できません。補助金の前に、借入の準備をしてください。
補助金は、後払いです
ここがいちばんの誤解です。
| 順 | やること | お金 |
|---|---|---|
| ① | 申請する | — |
| ② | 採択される | — |
| ③ | 実際に買う・導入する | 全額、自分で払います |
| ④ | 実績を報告する | — |
| ⑤ | 審査を経て、入金 | ここでやっと入ります |
③から⑤まで、数か月かかります。 その間、お金は出ていったままです。
1,000万円の機器を、補助率2分の1で入れるとします。 補助金は500万円。でもまず1,000万円を自分で払います。 500万円が戻るのは、半年後かもしれません。
だから借入が要ります。 補助金があるから借りなくていい、ではありません。補助金を使うために借りるのです。
医療法人が対象になるもの、ならないもの
| 考え方 | |
|---|---|
| 対象になりやすい | 募集要領に「医療法人」が組織形態として明記されているもの |
| 対象外になりやすい | 中小企業基本法の「中小企業者」を要件にしているもの (会社と個人事業主が対象で、医療法人は含まれません) |
募集要領の「対象者」の欄を、必ず自分で見てください。 「うちは医療法人ですが対象ですか」と、事務局に電話で聞くのがいちばん早い。
個人事業主なら、中小企業向けの補助金の対象になるものがあります。
法人化する前に使えるものがないか、見ておく価値があります。
医院で現実的に使えるもの
| 種類 | 中身 |
|---|---|
| 国のデジタル化・AI導入補助金 | 電子カルテ、予約システム、会計ソフトなど。医療法人も対象 |
| 厚生労働省・都道府県の医療関係の補助 | 施設整備、設備整備、地域医療に関するもの |
| 市町村の独自の補助 | 開業支援、人材確保、耐震化など。自治体ごとに違います |
| 雇用関係の助成金 | スタッフの採用・育児休業・処遇改善など |
市町村の独自の補助は、見落とされがちです。 医師不足の地域では、開業や設備に手厚い補助があることがあります。 開業する市町村の窓口に、一度聞いてみてください。
雇用関係の助成金は、社会保険労務士の領域です。 顧問社労士がいるなら、聞いてみてください。
通るかどうかは、計画書で決まります
補助金は、早い者勝ちではありません。審査があります。
| 書くこと | |
|---|---|
| ① | いまの課題。何に困っているか |
| ② | それをどう解決するか。買うものと、その理由 |
| ③ | 結果、何がどう良くなるか。数字で書く |
| ④ | いつまでに、どうやってやるか |
| ⑤ | 資金の手当て |
③がポイントです。「便利になります」では通りません。 「待ち時間が平均15分短くなり、1日の診療枠が5人増える」。数字で書いてください。
この計画書は、銀行に出す資料とほとんど同じです。 銀行が好きなのも、数字の書類です。 一度作れば、両方に使えます。
補助金をもらうと、税金がかかります
これを知らない方が多い。
補助金は、収入として利益に入ります。そして法人税がかかります。 500万円もらったら、そのうち百数十万円は税金ということです。
補助金で固定資産を買った場合、圧縮記帳という方法が使えることがあります。
補助金の分だけ、その資産の帳簿の金額を減らす。その年の税金を抑えられます。
ただし税金がなくなるわけではありません。減価償却が小さくなるので、
あとの年の税金が増えます。払う時期がずれるだけです。
要件があるので、もらう前に確かめてください。
消費税の扱いにも注意が要ります。 補助金そのものには消費税がかかりませんが、 それで買ったものの消費税の扱いで、 あとから調整が必要になることがあります。
順番を間違えないでください
| ダメな順番 | 正しい順番 | |
|---|---|---|
| ① | 補助金を探す | 医院の課題を決める |
| ② | 使えそうなものを見つける | 解決に何が要るか決める |
| ③ | それに合わせて買うものを決める | その資金をどう手当てするか決める |
| ④ | 申請する | 使える補助金があるか探す |
補助金があるから買う、は失敗します。 半分出ても、半分は自分のお金です。要らないものを半額で買っても、お金は減ります。
買うと決めたものに、たまたま補助金があれば使う。この順番でお願いします。 節税商品と同じ考え方です。
最後に。 補助金は、もらえたら嬉しいおまけだと思ってください。 柱にすると、計画が狂います。
そして申請に必要な計画書は、そのまま銀行に持っていけます。 通っても通らなくても、計画を作ったこと自体が資産になります。 それが、補助金にチャレンジするいちばんの価値かもしれません。
出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業「デジタル化・AI導入補助金2026」(中小企業庁)の 申請対象となる組織形態に医療法人が含まれることは、同事業の公表内容による。 中小企業基本法第2条に規定する「中小企業者」は会社および個人であり、医療法人は含まれない。 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入(圧縮記帳)は法人税法第42条、 個人は所得税法第42条。要件を満たす必要があります。 補助金の収益計上時期は法人税基本通達等による。 各制度の対象・要件・補助率・公募時期は随時改定されるため、 申請前に必ず各事務局の最新の公募要領をご確認ください。いずれも2026年9月時点。
補助金を使うなら、資金の手当てとセットで考えます。
後払いなので、つなぎの資金が要ります。 入金までの数か月をどう乗り切るか、借入とあわせて計画を組みます。 申請に出す計画書は、そのまま銀行に持っていける形で作ります。 もらったあとの税金(圧縮記帳が使えるか)まで、先に整理しておきます。
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最終更新:2026年9月12日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。