「医療法人は補助金が使えない」と思っていませんか。

半分は当たっています。中小企業向けの補助金には、医療法人が対象外のものがあります。

でも使えるものもあります。そして、使えるかどうかより先に知っておくべきことがあります。 補助金は、後払いだということです。

この記事の結論

医療法人でも使えますか。
制度によります。たとえば国のデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、対象となる組織形態に医療法人が明記されています。一方、中小企業基本法の「中小企業者」を要件にしている制度では、対象外になることがあります。
いちばん大事な注意点は。
後払いです。採択されて、事業をやって、報告して、そのあとに入金されます。その間の資金は、自分で用意します。ここを知らずに申し込むと、資金繰りが詰まります。
だから何が要るのですか。
経営計画と、つなぎの資金です。計画がないと通りませんし、資金がないと実行できません。補助金の前に、借入の準備をしてください。

補助金は、後払いです

ここがいちばんの誤解です。

やることお金
申請する
採択される
実際に買う・導入する全額、自分で払います
実績を報告する
審査を経て、入金ここでやっと入ります

③から⑤まで、数か月かかります。 その間、お金は出ていったままです。

1,000万円の機器を、補助率2分の1で入れるとします。 補助金は500万円。でもまず1,000万円を自分で払います。 500万円が戻るのは、半年後かもしれません。

だから借入が要ります。 補助金があるから借りなくていい、ではありません。補助金を使うために借りるのです。

医療法人が対象になるもの、ならないもの

 考え方
対象になりやすい募集要領に「医療法人」が組織形態として明記されているもの
対象外になりやすい中小企業基本法の「中小企業者」を要件にしているもの
(会社と個人事業主が対象で、医療法人は含まれません)

募集要領の「対象者」の欄を、必ず自分で見てください。 「うちは医療法人ですが対象ですか」と、事務局に電話で聞くのがいちばん早い。

個人でクリニックをやっているなら、選択肢が増えます

個人事業主なら、中小企業向けの補助金の対象になるものがあります。
法人化する前に使えるものがないか、見ておく価値があります。

医院で現実的に使えるもの

種類中身
国のデジタル化・AI導入補助金電子カルテ、予約システム、会計ソフトなど。医療法人も対象
厚生労働省・都道府県の医療関係の補助施設整備、設備整備、地域医療に関するもの
市町村の独自の補助開業支援、人材確保、耐震化など。自治体ごとに違います
雇用関係の助成金スタッフの採用・育児休業・処遇改善など

市町村の独自の補助は、見落とされがちです。 医師不足の地域では、開業や設備に手厚い補助があることがあります。 開業する市町村の窓口に、一度聞いてみてください。

雇用関係の助成金は、社会保険労務士の領域です。 顧問社労士がいるなら、聞いてみてください。

通るかどうかは、計画書で決まります

補助金は、早い者勝ちではありません。審査があります。

 書くこと
いまの課題。何に困っているか
それをどう解決するか。買うものと、その理由
結果、何がどう良くなるか。数字で書く
いつまでに、どうやってやるか
資金の手当て

③がポイントです。「便利になります」では通りません。 「待ち時間が平均15分短くなり、1日の診療枠が5人増える」。数字で書いてください。

この計画書は、銀行に出す資料とほとんど同じです。 銀行が好きなのも、数字の書類です。 一度作れば、両方に使えます。

補助金をもらうと、税金がかかります

これを知らない方が多い。

補助金は、収入として利益に入ります。そして法人税がかかります。 500万円もらったら、そのうち百数十万円は税金ということです。

ただし、調整する仕組みがあります

補助金で固定資産を買った場合、圧縮記帳という方法が使えることがあります。 補助金の分だけ、その資産の帳簿の金額を減らす。その年の税金を抑えられます。
ただし税金がなくなるわけではありません。減価償却が小さくなるので、 あとの年の税金が増えます。払う時期がずれるだけです。
要件があるので、もらう前に確かめてください。

消費税の扱いにも注意が要ります。 補助金そのものには消費税がかかりませんが、 それで買ったものの消費税の扱いで、 あとから調整が必要になることがあります。

順番を間違えないでください

 ダメな順番正しい順番
補助金を探す医院の課題を決める
使えそうなものを見つける解決に何が要るか決める
それに合わせて買うものを決めるその資金をどう手当てするか決める
申請する使える補助金があるか探す

補助金があるから買う、は失敗します。 半分出ても、半分は自分のお金です。要らないものを半額で買っても、お金は減ります。

買うと決めたものに、たまたま補助金があれば使う。この順番でお願いします。 節税商品と同じ考え方です。

最後に。 補助金は、もらえたら嬉しいおまけだと思ってください。 柱にすると、計画が狂います。

そして申請に必要な計画書は、そのまま銀行に持っていけます。 通っても通らなくても、計画を作ったこと自体が資産になります。 それが、補助金にチャレンジするいちばんの価値かもしれません。

出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業「デジタル化・AI導入補助金2026」(中小企業庁)の 申請対象となる組織形態に医療法人が含まれることは、同事業の公表内容による。 中小企業基本法第2条に規定する「中小企業者」は会社および個人であり、医療法人は含まれない。 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入(圧縮記帳)は法人税法第42条、 個人は所得税法第42条。要件を満たす必要があります。 補助金の収益計上時期は法人税基本通達等による。 各制度の対象・要件・補助率・公募時期は随時改定されるため、 申請前に必ず各事務局の最新の公募要領をご確認ください。いずれも2026年9月時点。

補助金を使うなら、資金の手当てとセットで考えます。

後払いなので、つなぎの資金が要ります。 入金までの数か月をどう乗り切るか、借入とあわせて計画を組みます。 申請に出す計画書は、そのまま銀行に持っていける形で作ります。 もらったあとの税金(圧縮記帳が使えるか)まで、先に整理しておきます。

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最終更新:2026年9月12日

この記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。
税理士・行政書士 山下久幸

税理士・行政書士山下 久幸

福岡で税理士事務所を営む。医療法人の設立・税務と、資産形成・相続サポートを専門とする。

税理士と行政書士の資格を一人で保有し、法人化の判断から認可申請、設立後の顧問、相続の設計までを一貫して担当している。