医学部・歯学部に通うお子さんに、「バイトは103万円を超えないで」と言っていませんか。 その数字は、もう使いません。

2025年分から、19歳以上23歳未満の子は、バイト代が少し増えても親の控除がいきなり消えない仕組みになりました。 「特定親族特別控除」です。 さらに2026年分は、親が満額63万円の控除を受けられる子の年収が159万円まで上がりました。

ただ、院長の家庭には、ほかの家庭と違うところが3つあります。 医学部・歯学部は6年あること。 健康保険が医師国保・歯科医師国保か、協会けんぽかで「壁」が変わること。 そして、自分の医院で子どもに給料を払えることです。

扶養控除の基本は、理事長が見落とす扶養控除の確認点に書きました。 この記事は、大学生の子がいる院長の家庭で迷うところだけを見ます。

この記事の内容を、動画でも解説しています。

この記事の結論

大学生の子のバイト代、いくらまでなら親の控除は満額ですか。
2026年分は、給与だけなら年159万円までです。親は63万円の控除を受けられます。超えても197万円までは、控除が段階的に残ります(2025年分は150万円・188万円でした)。
健康保険の扶養も同じ金額ですか。
違います。協会けんぽ・健康保険組合では、19〜22歳の子は年収150万円未満です。医師国保・歯科医師国保には「扶養」という仕組みがなく、家族も一人ずつ保険料を払います。
医学部5・6年生でも使えますか。
12月31日に23歳になっている年から、使えません。一般の扶養控除38万円だけになり、それも年収136万円以下が条件です。1円でも超えると、控除はゼロに戻ります。
自分の医院で子どもに給料を払うと、経費になりますか。
個人の医院で、同じ家計の子なら経費になりません。医療法人なら、実際に働いていて、ほかのアルバイトと同じ水準の給料であれば経費になります。

103万円も150万円も、2026年分は古い数字です

大学生の子の「壁」は、この3年で2回動きました。 2025年分の改正で103万円が150万円になり、 2026年分の改正(基礎控除と給与所得控除の引き上げ)で、さらに159万円になりました。

年分親が満額63万円の控除を受けられる子の年収控除が少しでも残る上限
2024年分まで103万円以下なし(超えたらゼロ)
2025年分150万円以下188万円以下
2026年分159万円以下197万円以下

対象は、12月31日の時点で19歳以上23歳未満の、生計を一にする子です。 学生かどうかは問いません。年齢だけで決まります。 年収は、その年の1月から12月までのバイト代の合計(給与だけの場合)です。

動画は2025年分の数字で話しています

動画では「150万円」で説明しました。これは2025年分の数字です。 2026年分は、この記事の159万円で考えてください。 「壁ではなく坂道になった」という仕組みは同じです。 2026年分の新しい数字は、2026年12月の年末調整で反映されます。

親の控除は「坂道」で減る

以前は、子の年収が1円でも超えると、親の63万円の控除がゼロになりました。 いまは、超えたぶんに応じて9段階で少しずつ減ります。

子の年収(給与だけ)
2026年分
親の控除(参考)2025年分の年収
136万円以下63万円(扶養控除)123万円以下
136万円超 159万円以下63万円(特定親族特別控除)123万円超 150万円以下
159万円超 164万円以下61万円150万円超 155万円以下
164万円超 169万円以下51万円155万円超 160万円以下
169万円超 174万円以下41万円160万円超 165万円以下
174万円超 179万円以下31万円165万円超 170万円以下
179万円超 184万円以下21万円170万円超 175万円以下
184万円超 189万円以下11万円175万円超 180万円以下
189万円超 194万円以下6万円180万円超 185万円以下
194万円超 197万円以下3万円185万円超 188万円以下
197万円超なし188万円超

国税庁の表は、子の「所得」(年収から給与所得控除を引いた金額)で書かれています。 2026年分の給与所得控除は74万円なので、年収=所得+74万円に置き換えたのが上の表です。

院長の税率だと、坂は急です

63万円の控除で、親の税金がいくら減るかは、親の税率で決まります。 院長は税率が高いので、そのぶん差が大きくなります。

院長の所得税率63万円の控除で減る所得税
33%(課税所得900万円超1,800万円以下)207,900円
40%(課税所得1,800万円超4,000万円以下)252,000円

これに住民税が加わります。住民税にも同じ仕組みの控除があり、最大45万円なので、税率10%で4万5,000円です (復興特別所得税は除いて計算しています)。

例えば税率33%の院長なら、子の年収が159万円から197万円を超えるところまで増えると、親の税金は住民税と合わせて約25万円増えます。 子が40万円ほど多く働いても、その半分以上が親の税金で消える計算です。

先生方には、こうお伝えしています。 「控除が3万円まで減るほど働くより、159万円で止めて、親の税金が減ったぶんを仕送りに足す。そのほうが効率がいいです」。

子ども本人の税金は、ほとんどかかりません

2026年分と2027年分は、子ども本人の所得税もかかりにくくなっています。 給与所得控除74万円と基礎控除104万円を合わせて、年収178万円までは所得税がゼロです。

ただし、住民税は基礎控除が43万円のままです。 所得税がゼロでも、年収によっては子ども本人に住民税が少しかかります。

勤労学生控除は、住民税のために出しておく

学生でアルバイトの収入がある子は、勤労学生控除(所得税27万円・住民税26万円)を受けられます。 2026年分は、給与だけなら年収163万円以下が条件です。
所得税はもともとゼロになりやすいので、効いてくるのは主に住民税です。 バイト先に出す「扶養控除等申告書」の勤労学生の欄に、チェックを入れるよう伝えてください。

20歳を過ぎた子は、親の扶養とは関係なく国民年金の加入者になります。 この保険料を院長が払えば、院長の社会保険料控除になります。 生計を一にする子の保険料なら、払った人が控除を受けられるからです。 税率の高い院長が払うほうが、家族全体の税金は少なくなります。

健康保険の扶養は150万円未満。医師国保の家庭は別

税金とは別に、健康保険の「扶養」があります。 こちらは加入している健康保険によって、話がまったく違います。

協会けんぽ・健康保険組合の家庭

医療法人で協会けんぽに入っている理事長や、配偶者が会社員の家庭です。 2025年10月1日から、19歳以上23歳未満の子は「年収150万円未満」で扶養に入れるようになりました(それまでは130万円未満)。 年齢は、税金と同じく12月31日の時点で見ます。

 税金(2026年分)健康保険の扶養
見る期間1月〜12月の実績これから1年間の見込み
19〜22歳の線159万円以下で満額。197万円まで坂道150万円未満。超えると外れる
月にすると約13万2,500円12万5,000円未満

つまり150万円〜159万円の間は、税金は満額なのに、健康保険の扶養からは外れます。 外れると、子どもが自分で国民健康保険に入り、保険料を払うことになります。 この家庭では、健康保険の150万円が本当の線です。動画で「月12万円以下が無難」とお話ししたのは、このためです。

医師国保・歯科医師国保の家庭

個人開業の院長や、医療法人でも医師国保・歯科医師国保に残っている理事長の家庭です。 国民健康保険には「扶養」という仕組みがありません。 家族も一人ひとりが加入者で、子どものバイト代に関係なく保険料がかかります。

例えば福岡県医師国保の家族の保険料は、2026年度で1人月12,300円(40歳未満)です。収入に関係ない定額です。 この家庭では、健康保険の150万円は気にしなくてよく、税金の159万円が線になります。 歯科医師国保は組合ごとに決め方が違うので、加入している組合で確認してください。 医療法人にしたときの保険の選び方は、医療法人化と社会保険に書きました。

医学部・歯学部は6年。23歳の年から対象外です

ここが、院長の家庭でいちばん見落としやすいところです。 特定親族特別控除も、健康保険の150万円も、23歳未満が条件です。 判定は、その年の12月31日時点の年齢です。

学年(現役で入学、4〜12月生まれ)12月31日の年齢親の控除
1〜4年生19〜22歳159万円以下で63万円。197万円まで坂道
5年生23歳一般の扶養控除38万円だけ。136万円を超えるとゼロ
6年生24歳同上

1〜3月生まれなら、6年生の年から対象外です。 浪人や留年をしていれば、そのぶん早くなります。4〜12月生まれで1浪なら、4年生の年からです。

23歳になった年は、控除が坂道ではなく「崖」に戻ります。 年収136万円以下なら38万円、1円でも超えればゼロです。 健康保険の扶養も、130万円未満に戻ります。

例えば医学部5年生の子が、家庭教師で年140万円を稼いだとします。 4年生のときなら親は63万円の控除を受けられた金額ですが、5年生の年はゼロです。 実習が忙しくなる5・6年生は、バイトを減らす家庭も多いと思います。それでも年末に一度、合計額を確認してください。

自分の医院で子どもに給料を払うとき

夏休みに受付を手伝ってもらう。土曜日に予約の電話や片付けをしてもらう。 院長の家庭ではよくある話です。 ただ、個人の医院か医療法人かで、扱いがまったく違います。

個人開業の医院の場合

同じ家計で暮らす子に払った給料は、原則として経費になりません。 例外は「青色事業専従者」ですが、これは年に6か月を超えて、その仕事に専ら従事していることが条件です。 学生である期間は、この期間に数えません。昼間の大学に通う子は、原則として専従者になれません。

つまり個人の医院では、同居の大学生に給料を払っても節税にはなりません。 手伝ってもらうなら、お小遣いや仕送りとして考えたほうが話が早いです。

医療法人の場合

医療法人が子どもをアルバイトとして雇うなら、給料は経費になります。 ただし理事長の子どもは、税務署から見ると「特別な関係の職員」です。 働きに比べて高すぎる給料は、その部分が経費になりません。

 そろえておくもの
①ほかのアルバイトと同じ時給にする。理事長の子だけ高くしない
②雇用契約書(労働条件通知書)を作る
③タイムカードや出勤簿で、いつ・何時間働いたかを残す
④給料は子ども名義の口座に振り込む

仕事は、資格がなくてもできるものに限ります。 歯科なら受付、予約の電話、器具の片付けや院内の清掃。 医科なら受付、書類の整理、院内掲示物の作成などです。 家族への給与は、税務調査で必ず聞かれます。 考え方は配偶者給与の記事と同じです。

医院の給料も、159万円・150万円に入ります

医療法人から払った給料も、子どもの年収に入ります。 塾講師などほかのバイトと合わせて、159万円(協会けんぽなら150万円未満)を超えないか見てください。 医院で働く時間を増やすほど、親の控除が減る、という関係は変わりません。

院長が今やること

12月の年末調整の前に、次の3つを確認してください。

 確認すること
①子の1〜12月の給与の見込みを聞く。バイト先が複数なら合計する。医院からの給料も入れる
②自分の健康保険を確かめる。協会けんぽ・健康保険組合なら150万円未満、医師国保・歯科医師国保なら税金の159万円が線
③子の12月31日の年齢を確かめる。23歳になる年は、136万円以下(健康保険は130万円未満)に戻る

そのうえで、子の年収が136万円を超える見込みなら、特定親族特別控除の申告書を出します。 医療法人から給料を受け取っている理事長は、法人の年末調整で出します。 ただし給与が年2,000万円を超える理事長は年末調整の対象外なので、確定申告で受けます。 個人開業の院長も、確定申告です。

2025年分で、この控除を出し忘れていた場合も取り戻せます。 さかのぼり方は、扶養控除の記事の最後に書きました。 年末までに見直したい個人の節税は、理事長の節税チェックリストにまとめています。

「103万円を超えないで」は、もう言わなくて大丈夫です。 伝えるのは、2026年は159万円まで。協会けんぽの家庭なら月12万円まで。23歳になる年は別。この3つです。

お子さんの年収と、院長の税金をまとめて見ます。

お子さんの年齢とバイト代の見込み、院長の健康保険の種類。 この3つが分かれば、いくらまで働いてよいか、親の税金がいくら変わるかをお伝えします。 医療法人でお子さんを雇うときの給料の決め方や、年末調整・確定申告の書類もお手伝いします。

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最終更新:2026年10月7日

この記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・社会保険の判断を保証するものではありません。記載の制度・金額は執筆時点(2026年10月)のもので、2026年分(令和8年分)の所得税を前提にしています。基礎控除・給与所得控除は年分によって金額が変わるため、実際の年末調整・確定申告や健康保険の手続きにあたっては、税理士や加入している健康保険の窓口にご相談ください。
税理士・行政書士 山下久幸

税理士・行政書士山下 久幸

福岡で税理士事務所を営む。医療法人の設立・税務と、資産形成・相続サポートを専門とする。

税理士と行政書士の資格を一人で保有し、法人化の判断から認可申請、設立後の顧問、相続の設計までを一貫して担当している。