ふるさと納税の期限は12月31日です。それは今年も変わりません。

ただ、今年に限っては9月末がひとつの区切りになります。

2026年10月から、返礼品のルールが厳しくなります。 いま載っている返礼品が、10月以降に変わったり、なくなったりする可能性があるということです。

とはいえ「急いで駆け込め」とは申し上げません。 とくに個人でクリニックをやっている先生は、急ぐ必要がありません。 一方で医療法人の理事長は、いま動けます。その違いを整理します。

この記事の結論

なぜ9月末なのですか。期限は12月31日では。
寄附の期限は12月31日で変わりません。ただ2026年10月から返礼品のルールが厳しくなります。基準を満たせなくなった返礼品は、10月以降に載らなくなる可能性があります。狙っているものがあるなら、9月中が安全という意味です。
理事長と個人開業医で、何が違うのですか。
上限が読めるかどうかです。理事長の役員報酬は1年間ずっと同じ額と決まっているので、年収が年の初めに確定しています。だから9月の時点で上限を計算できます。一方、個人でクリニックをやっている先生は12月が終わるまで、その年の所得が決まりません。
上限を超えたらどうなりますか。
超えた分は、まるごと自己負担です。返礼品は届きますが、税金は1円も安くなりません。文字どおり「寄附」になります。ここを外さないことが、返礼品を選ぶことよりずっと大事です。

2026年10月に、何が変わるのか

総務省が2026年6月にルールを変えて、2026年10月から適用されます。変わるのは3つです。

 内容
「その地域のもの」の基準が厳しく これまで自治体ごとにバラバラだった判断が、値段をもとに計算する形に統一されます。作った業者が「この地域で作った」と証明し、自治体がそれを公表することになります
ロゴを付けただけの品に条件 よその地域で作ったものに自治体のロゴを付けて「広報のため」としていたケースに、条件が付きます
仕入れ値の適正化 理由なく市価より高く仕入れないよう、運用の改善が求められます

要するに、いま並んでいる返礼品の一部が、10月以降に姿を消す可能性があるということです。 毎年決まった品を選んでいる先生、今年狙っているものがある先生は、9月中に確認しておくのが無難です。

9月30日は混みます

同じことを考える人が全国にいます。サイトは9月末に混雑が予想されています。 月末ぎりぎりではなく、数日の余裕をもって動いてください。

ルールは3段階で締まっています

時期変わったこと/変わること状況
2025年10月〜ポイント付与が禁止。サイトの還元ポイントは、もうありません実施済み
2026年10月〜返礼品のルールが厳しく。いまある品が変わる・なくなる可能性まもなく
2027年の寄附分〜住民税から引ける額に合計193万円の上限決定済み

「ポイント目当てで駆け込め」という定番の言葉は、もう使えません。昨年10月に禁止されました。 いま起きているのは返礼品そのものの選択肢が減っていくという変化です。

193万円の上限は、まず関係ありません

2027年の寄附分から、住民税から引ける額に上限(合計193万円)ができます。 ただ、ここに届くのは年収1億円級の方です。 役員報酬が2,000万円、3,000万円という水準なら、まったく届きません。

ただし「制度は締まる方向に動いている」ということは示しています。 使える枠は、使えるうちに使う。そういう判断は理にかなっています。

理事長は9月に動ける。個人開業医は急がなくていい

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。立場によって、動く時期が違います。

 医療法人の理事長個人でクリニック
収入の形役員報酬(給料)診療の所得
1年の所得が決まる時期年の初め12月31日
9月に上限が読めるか読めます読めません
9月中に動くべきか狙いがあるなら、動いていい急ぐ必要はありません

理事長が有利な理由

医療法人の理事長の役員報酬は、1年間ずっと同じ額にしないと経費になりません。 期の途中で自由に増減できないのです。

裏を返せば、その年に受け取る給料が、年の初めにほぼ決まっているということ。 歩合や賞与で年収が動く方に比べれば、上限をいちばん正確に見積もれる立場です。

年末に慌てるのではなく、9月の時点で枠を把握して計画的に寄附できるのが本来の姿です。

個人開業医が急がなくていい理由

一方、個人でクリニックをやっている先生は、12月が終わらないとその年の利益が決まりません。 機器を入れたか、スタッフを増やしたか、患者さんがどう動いたか。すべて年末にならないと固まりません。

利益が決まっていないということは、上限も分からないということです。 それなのに返礼品欲しさに9月に駆け込むのは、順番が逆です。

上限を超えた分は、まるごと自己負担になります。品物は届きますが、税金は1円も安くなりません。

それでも今年の返礼品を押さえたいなら

サイトによっては、寄附だけ先に済ませて、返礼品はあとからゆっくり選べる仕組みを用意している自治体があります。 「上限は分かっているが、何を選ぶか決めていない」という場合は、これで枠を押さえておく手もあります。

ただし上限が分からない状態で枠を埋める危うさは変わりません。 個人でクリニックをやっている先生は、11月〜12月の試算を待ってから動くほうが確実です。

理事長の上限は、どのくらいか

役員報酬の水準から見た、自己負担2,000円で済む上限の目安です(共働き・お子さんなしを想定)。

役員報酬上限の目安
1,000万円約17.6万円
1,500万円約38.9万円
2,000万円約56.4万円
2,500万円約84.9万円

2,500万円クラスなら、自己負担2,000円で85万円近い返礼品を受け取れる計算になります。 一般向けの記事に並ぶ「1万円で〇〇が届く」というランキングとは、そもそも桁が違います。

あくまで目安です

上限は、給料だけでは決まりません。 ご家族の状況、生命保険料控除、医療費控除住宅ローン控除などで上下します。 家賃収入、株の利益や配当、ほかの病院での非常勤の報酬、講演料があれば、上限は上がります。

そして今年は、もうひとつ。iDeCoの上限が2026年12月に上がります。 掛金を増やせば税金がかかる所得が下がり、ふるさと納税の上限も下がります。 両方やるなら、順番と金額を一緒に見てください。

それでも、上限を読み違える年があります

理事長は上限を読みやすい立場だと申し上げましたが、例外があります。 所得が例年と大きく変わる年です。

この4つは、いずれも「去年と同じ金額を寄附しておけば安心」が通用しない年です。 くわしい理由は医療法人の理事長とふるさと納税に書いています。

5自治体以内と、1月10日必着

実務のコツを2つ。どちらも、毎年必ず事故が起きるところです。

1. 寄附先は5自治体以内に

5自治体以内ならワンストップ特例が使えて、確定申告をしなくても控除されます。 6自治体以上になると、確定申告が必要です。

ただし理事長の場合、もともと確定申告をしている年——医療費控除を受ける年、住宅ローン控除の初年度、 非常勤の収入や家賃収入がある年——は、そもそもこの特例が使えません。

申請書を出していても、確定申告をした時点で無効になります。 その場合は、ふるさと納税も確定申告の中でまとめて申告してください。

2. 申請書は翌年1月10日必着

ワンストップ特例でいちばん多い失敗が、申請書の出し忘れです。 寄附しただけでは、何も起きません。翌年1月10日必着で送る必要があります。

年末に駆け込むと、書類が届くのが年明けになり、そのままバタバタして忘れる——という流れが本当に多いです。 この意味でも、早めに動く価値があります。

最後に——「納める先を選ぶ」という考え方

ここまで書いておいて何ですが、私自身は基本的にふるさと納税をしていません。 理由は単純で、自分が住んでいる福岡市に納税したいからです。

福岡市には、第2子以降の保育料が無料になる市独自の仕組みがあります。所得の制限もありません。 いま自分の家族がその街のサービスを受けているのなら、そこにきちんと納める。そう考えています。

これは先生方にも、少し違う形で当てはまる話だと思います。 先生が納める住民税は、医院がある地域の医療や福祉、子育てに回ります。 その地域に住み、その地域の患者さんを診ておられるなら、納める先を動かさないという判断にも理屈があります。

もちろん、応援したい地域があるなら、それは制度の本来の趣旨そのものです。

当事務所では、行き過ぎた節税はしないという考え方でご案内しています。 ふるさと納税も、税金が減る制度ではありません。 納める先を移し替えて、そのお礼に品物を受け取る仕組みです。

大事なのは、仕組みを分かったうえで自分で選ぶことです。 そのために、まずは上限の確認から始めてください。

出典:総務省が令和8年6月に告示した指定基準の改正(令和8年10月から適用)。 ポイント付与の禁止は令和7年10月から。 個人住民税の特例控除額の上限(合計193万円、令和10年度以後の個人住民税に適用)は令和8年度税制改正による。 上限の目安額は共働き・扶養親族なしを想定した一般的な試算で、実際の上限は個々の所得と控除の状況によって異なります。いずれも2026年9月時点。

今年の上限、いくらかご存じですか。

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最終更新:2026年9月11日

この記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の法改正等により変更される場合があります。控除限度額は個々の所得・控除の状況によって異なります。実際のご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
税理士・行政書士 山下久幸

税理士・行政書士山下 久幸

福岡で税理士事務所を営む。医療法人の設立・税務と、資産形成・相続サポートを専門とする。

税理士と行政書士の資格を一人で保有し、法人化の判断から認可申請、設立後の顧問、相続の設計までを一貫して担当している。