税務調査で結果を悪くするのは、帳簿ではなく、当日の受け答えです。

同じ帳簿でも、対応の仕方で着地が変わります。 しかも悪くする理由は、だいたい決まっています。

3つだけ、覚えて帰ってください。

この記事の結論

やってはいけない3つとは。
①うろ覚えで答える ②聞かれていないことを話す ③戦う。この3つです。どれも善意でやってしまいます。
分からないことを聞かれたら。
「確認してお答えします」でかまいません。その場で答える義務はありません。あいまいな記憶で答えて、あとで違っていたときのほうが、はるかに困ります。
感じよくする必要はありますか。
ふつうでいいです。敵対する必要も、機嫌をとる必要もありません。ただし約束したことは守る。「あとで出します」と言った資料を出さないのが、いちばん心証を悪くします。

① うろ覚えで答えない

「3年前の、この20万円の支出は何ですか」

覚えているはずがありません。 それでも先生方は、なんとか答えようとします。 沈黙が気まずいからです。

そして「たぶん学会の費用だったと思います」と答える。 あとで調べたら、違った。

1つ訂正すると、全部を疑われます

調査官から見れば、「この院長の記憶は当てにならない」となります。 そこから、ほかの答えも確かめ直されます。調査が長くなります。
「確認してお答えします」。これで何の問題もありません。

その場で答えなければならない、という決まりはありません。 正確に答えることのほうが、早く答えることより大事です。

② 聞かれていないことを話さない

これがいちばん多い。しかも善意でやってしまいます。

午前中の聞き取りは、世間話のように進みます。 緊張がほぐれてくると、先生はよくしゃべります。

つい出てしまう話調査官が拾うところ
「去年、家族で海外に行きまして」その費用はどこから出たか
「息子も手伝ってくれていて」給与は払っているか、実際に働いているか
「この車、いいでしょう」医院の名義か、私用との割合は
「自費はけっこう現金が多くて」その現金の管理はどうなっているか

嘘をつけと言っているのではありません。 聞かれたことに、正確に答える。それだけです。

聞かれていないことまで話すと、そこから話が広がります。 予定になかった論点が増えて、調査が長くなります。

③ 戦わない

逆のタイプもいます。最初から身構えて、一つひとつに反論する先生です。

気持ちは分かります。自分の医院を疑われているように感じますから。 でも、うまくいきません。

やりがちなこと結果
最初から怒っている細かく見られる。調査が長くなる
資料を出し渋る隠していると見られる
「顧問税理士がそう言ったから」で押し通す説明になっていない
「あとで出します」と言って出さないいちばん心証を悪くする

争うべきときは、調査が終わってからです。 その場で押し返すのではなく、説明と資料で示す。 判断が分かれる論点なら、税理士が正面から主張します。

そして修正申告に応じるかどうかは、最後に決めればいい。 当日に決める必要はありません。

スタッフにも伝えておくこと

調査官は、受付や事務のスタッフにも話しかけます。 院長より、スタッフのほうが本当のことを言うと考えられているからです。

実際、そのとおりです。悪気なく答えます。

 スタッフに伝えておくこと
聞かれたことに、知っていることをそのまま答える
分からないことは「分かりません」でよい。推測で答えない
お金の流れや経理のことは院長か税理士に回す

「何も言うな」と口止めするのは、絶対にやめてください。 それ自体が疑われますし、スタッフを不安にさせます。

正しく記録して正しく申告しているなら、スタッフが正直に答えて困ることは何もありません。

録音していいのか

よく聞かれます。正直にお答えします。

録音を禁止する法律の定めはありません。 一方で、国税庁が公表している質問と回答にも「録音してよい」とは書かれていません。 はっきりしたルールがない、というのが実際のところです。

やるなら、断ってから

黙って録音して、あとで分かると関係が悪くなります。 「記録のために録らせてください」と先に言う。 断られたら、無理にやらない。
現実には、メモで足ります。誰が、いつ、何を言ったか。 日付と時刻を入れて書いておけば、あとで十分役に立ちます。

録音より大事なのは、その場に税理士がいることです。 言った言わないを防ぐいちばん確実な方法は、第三者が同席していることです。

やっていいこと

してはいけないことばかり書いたので、逆も書いておきます。

 やっていいこと
「確認してお答えします」と言う
税理士を呼ぶ。税理士が来るまで待ってもらう
診療中であることを伝えて、時間をずらしてもらう
帳簿を預かりたいと言われたら、必要性を聞く
納得できない指摘には、理由を聞く

⑤は遠慮しないでください。 なぜそう判断したのかを聞くのは、当然のことです。 理由が分からないまま、うなずかないでください。

最後に。 調査官も仕事で来ています。個人的に医院を疑っているわけではありません。 こちらも、ふつうに対応すればいい。

大事なのは、正確に答えること、余計なことを言わないこと、その場で結論を出さないこと。 この3つだけです。 当日の流れは税務調査の当日、何が起きるかにまとめました。

出典:調査担当者の質問検査権および帳簿書類その他の物件の提示・提出の求めは国税通則法第74条の2以下。 調査の録音について、国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」に記載はなく、 これを禁止または許可する法令の定めも確認できません。本文の記述はその前提によるものです。 調査結果の内容説明および修正申告の勧奨は同FAQ 問24・問25。 当日の受け答えに関する記述は、法令に基づくものではなく実務上の考え方です。いずれも2026年9月時点。

調査の当日、立ち会います。

その場にいる第三者がいるだけで、受け答えは落ち着きます。 事前の打ち合わせで「何を聞かれるか」「どう答えるか」を整理してから当日を迎えます。 顧問先でなくても、立ち会いからご相談を承ります。

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最終更新:2026年9月11日

この記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。
税理士・行政書士 山下久幸

税理士・行政書士山下 久幸

福岡で税理士事務所を営む。医療法人の設立・税務と、資産形成・相続サポートを専門とする。

税理士と行政書士の資格を一人で保有し、法人化の判断から認可申請、設立後の顧問、相続の設計までを一貫して担当している。