ある日、税務署から電話がかかってきます。 「税務調査にうかがいたいのですが」
多くの先生は、ここで頭が真っ白になります。 何をされるのか、何日かかるのか、診療は続けられるのか。分からないから怖い。
流れは決まっています。先に知っておけば、慌てずに済みます。
この記事の結論
- いきなり来ることはありますか。
- ふつうはありません。事前に連絡が来ます。顧問税理士がいれば、税理士に連絡が行きます。日程は相談して決められます。「その日は診療が詰まっている」と言ってかまいません。
- 何日かかりますか。
- 医院に来るのは2日が多いです。そのあと、追加の資料をやりとりしながら、1〜3か月かけて終わります。
- 先生はずっと立ち会うのですか。
- その必要はありません。初日の午前中に、医院のことを聞かれます。そこだけ対応できれば、あとは診療に戻れます。いちばん大事なのは、その午前中です。
まず、電話が来ます
調査は、事前の連絡から始まります。 顧問税理士がいて、税務代理の届出が出ていれば、税務署は税理士に連絡します。 先生のところに直接かかってくることは、あまりありません。
連絡では、次のようなことが伝えられます。
| 伝えられること |
|---|
| 調査に入る旨と、始める日時・場所 |
| 調査の目的 |
| 対象となる税金の種類(法人税・消費税・源泉所得税など) |
| 対象となる期間(何年分か) |
| 用意しておく帳簿・書類 |
| 調査官の名前と所属 |
連絡の受け方と日程の相談は、税務調査はいつ来るのかにまとめました。
何年分を見るかは、ここで分かります。 ふつうは3年分です。問題が見つかれば5年に、 隠していたと判断されれば7年にのびます。
現金商売で、事前に知らせると証拠がなくなるおそれがある——と判断された場合には、
連絡なしに来ることが認められています。
医院では多くありませんが、自費の現金が多い医院では、ないとは言えません。
日程は、相談して決められます
提示された日に、必ず合わせる必要はありません。 合理的な理由があれば、変えてもらえます。
| 言っていい理由 |
|---|
| その日は予約が埋まっていて、診療を止められない |
| 学会・出張の予定が入っている |
| 顧問税理士の都合がつかない |
| 決算期・確定申告期で、資料が整わない |
とはいえ、何か月も引き延ばすのは得策ではありません。 印象が悪くなりますし、その間も延滞税は増えていきます。 2〜3週間先に落ち着くのが、ふつうです。
できれば休診日か、午後の診療がない日に当てるのがいいです。 院長が落ち着いて対応できます。
初日の午前中がすべてです
調査官は、たいてい朝10時ごろに来ます。2人で来ることが多いです。
そして午前中は、帳簿をほとんど見ません。 先生に話を聞く時間です。
| 聞かれること | 何を見ているか |
|---|---|
| 開業のいきさつ、経歴 | 場をほぐす。人柄を見る |
| 診療科目、1日の患者数、自費の割合 | 売上の規模が帳簿と合うか |
| スタッフの人数と仕事の内容 | 給与の妥当性、家族が働いているか |
| 窓口のお金の流れ、レジの締め方 | ここが本題 |
| 院長のご家族のこと、趣味、車 | 生活の規模と、申告した所得が釣り合うか |
世間話のように進みますが、全部が調査です。
特に窓口のお金の流れは必ず聞かれます。 誰がレジを締めるのか、現金はどこに保管するのか、いつ銀行に入れるのか。 ここで説明があいまいだと、午後からそこを重点的に見られます。
受付、レジ、金庫、薬品庫、材料の棚、院長室。
断る理由はありません。ふつうに案内してください。
ただし患者さんのいる診療室に立ち入らせる必要はありません。
診療時間中であることを伝えて、時間をずらしてもらってかまいません。
午後からは、帳簿を見ていきます
午後になると、調査官は黙々と帳簿を見はじめます。 先生は診療に戻ってかまいません。
| 見られるもの |
|---|
| 総勘定元帳、現金出納帳、預金通帳 |
| レセプトの請求控え、窓口の日計表、レジのジャーナル |
| 請求書、領収書、契約書 |
| 給与台帳、源泉徴収簿、扶養控除等申告書 |
| 棚卸表 |
| カルテ、予約表(自費の件数を確かめるため) |
質問があれば、その都度呼ばれます。 その場で分からないことは、無理に答えなくてかまいません。 「確認してお答えします」でよいのです。
あいまいな記憶で答えて、あとで違っていた——これがいちばん良くありません。 訂正すると、ほかの答えも疑われます。
2日目のあとが、実は長い
2日目の夕方に、その時点での指摘を口頭で伝えられることが多いです。 ただしここで終わりではありません。
| 時期 | 起きること |
|---|---|
| 調査の翌週〜1か月 | 追加の資料を求められる。税理士とのやりとりが続く |
| 1〜2か月後 | 指摘事項がまとまり、税理士と税務署で話し合う |
| 2〜3か月後 | 修正申告を出すか、こちらの主張を通すかを決める |
| その後 | 納税。加算税・延滞税の通知が届く |
この期間が、いちばん差がつくところです。 指摘に対して説明できるか、資料を出せるか。ここで結論が変わります。
言われたことを全部のむ必要はありません。 判断が分かれる論点なら、主張していいのです。 納得できないまま修正申告に応じると、あとから覆すのは大変です。
当日までに、これだけ用意する
| やること | |
|---|---|
| ① | 連絡で言われた年分の帳簿・通帳・請求書・領収書をそろえる |
| ② | 棚卸表があるか確かめる。なければ、今年の分から作る |
| ③ | 窓口のお金の流れを、口で説明できるようにしておく |
| ④ | 顧問税理士と、事前に1回打ち合わせる |
| ⑤ | 調査官が使う机と椅子を決めておく(できれば個室) |
④を飛ばさないでください。 心当たりがあるなら、調査の前に税理士に話しておく。 当日に初めて出てくるのが、いちばん悪い形です。
⑤も地味に効きます。受付の横に座られると、患者さんの目につきます。 個室か、診療の動線から外れた場所を用意してください。
最後に。 税務調査は、罰を与えに来るものではありません。 申告が正しいかどうかを確かめに来るだけです。
正しく記録して、正しく申告していれば、怖いものではありません。 医院で多い指摘は、売上の計上時期や 棚卸のような、 やり方を直せば二度と起きないものです。 どこを見られるかは医科歯科の税務調査はここを見られるにまとめました。
出典:事前通知の制度および通知される事項(実地の調査を行う旨、開始日時・開始場所、調査の目的、 対象税目、対象期間、対象となる帳簿書類その他の物件、調査担当者の氏名・所属官署など)は 国税通則法第74条の9。事前通知を要しない場合は同法第74条の10。 税務代理人がある場合の通知は同法第74条の9第5項・第6項。 調査の対象期間および更正・決定の期間制限(原則5年、偽りその他不正の行為があった場合は7年)は 同法第70条第1項・第5項。 日数や進み方は一般的な例であり、医院の規模や論点によって異なります。いずれも2026年9月時点。
調査の連絡が来たら、その日のうちにご相談ください。
日程の調整、当日までに用意する書類、聞かれることへの備え。 準備の有無で、結論が変わります。顧問先でなくても、立ち会いからご相談を承ります。 まだ連絡が来ていない段階でも、心当たりがあるなら、そのほうが選べる手は多いです。
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最終更新:2026年9月11日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。