調査が終わりに近づくと、こう言われます。

「この内容で、修正申告をお願いできますか」

早く終わらせたい一心で、うなずいてしまう先生が多い。 でも、その場でサインする前に知っておいてほしいことがあります。

修正申告を出すと、その内容について不服を申し立てられなくなります。 国税庁自身が、そう説明しています。

この記事の結論

勧められたら、応じないといけませんか。
任意です。国税庁も「応じるかどうかは、あくまでも納税者の方の任意の判断」と明記しています。応じなければ、税務署が更正という処分を行うことになります。
断ると、不利になりますか。
基本的にはなりません。これも国税庁が「応じなかったからといって、応じた場合と比較して不利な取扱いを受けることは基本的にはありません」と書いています。
では、どう違うのですか。
争えるかどうかです。修正申告を出すと、あとで不服申立てはできません(更正の請求はできます)。処分を受けたかたちなら、不服申立てができます。納得できない論点があるなら、ここが分かれ目です。

終わり方は2つあります

 やり方あとで争えるか
修正申告医院が自分で、直した申告書を出す不服申立てはできない(更正の請求はできる)
更正税務署が処分として直す不服申立てができる

調査では、原則として修正申告を勧められます。 申告した本人が自分で直すほうが、制度の趣旨に合うから、という理由です。

ただし勧めであって、命令ではありません。

修正申告を出すと、争えなくなります

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

国税庁が公表している質問と回答には、こう書かれています。 修正申告を行った場合には、更正の請求をすることはできるが、不服申立てをすることはできない、と。 そして「こうした点をご理解いただいた上で修正申告を行ってください」と続きます。

説明と、書面の交付があります

修正申告を勧めるときは、この点を説明したうえで、その旨を書いた書面が交付されることになっています。
書面を渡されたら、よく読んでください。その場で急いでサインしない。 「持ち帰って検討します」で結構です。

なお更正の請求はできます。 ただしこれは「税金を返してください」と請求する手続きで、 認められなければ、そこから改めて不服申立てに進むことになります。遠回りです。

断っても、不利にはなりません

「断ったら心証が悪くなって、もっと調べられるのでは」

そう思われるのは自然ですが、国税庁はこう書いています。

修正申告の勧奨に応じるかどうかは、あくまでも納税者の方の任意の判断であり、 応じなかったからといって、応じた場合と比較して不利な取扱いを受けることは基本的にはありません。

応じない場合は、税務署が更正という処分を行います。 処分になれば、そこから不服を申し立てられます。

ただし、時間はかかります

処分を待ち、不服を申し立て、結論が出るまでには時間がかかります。 その間も延滞税は増えていきます。
争う価値がある論点かどうかは、金額と勝ち目で判断してください。

では、どう決めるか

指摘は、たいてい複数あります。全部を同じように扱う必要はありません。

指摘の中身どうするか
売上の計上時期がずれていた事実なので、応じる
棚卸を数えていなかった事実なので、応じる
計算ミス・入力ミス事実なので、応じる
経費になるかどうかの判断が分かれる主張する余地があります
自宅と医院で分けた割合が認められない根拠を示して主張できます
家族の給与が高すぎると言われた勤務の実態と求人相場で主張できます

上の3つは、事実関係の話です。争っても意味がありません。 素直に応じて、二度と起きない形に直すのが正解です。

下の3つは、判断が分かれる論点です。 医院の言い分があり、税務署の言い分がある。 ここまで一緒に諦めてしまう先生が、本当に多い。

一部だけ応じることもできます

「ここは認めますが、この項目は納得できません」という整理の仕方もあります。 全部を飲むか、全部を断るかの二択ではありません。
項目ごとに分けて考えてください。

結果の説明は、口頭です

調査の結果は、原則として口頭で説明されます。 法令上、説明の方法は決められていません。

そして「内容を書いた書面をください」と頼んでも、交付されません。 国税庁が公表している質問と回答に、はっきり書かれています。

ただし必要に応じて、項目や金額を整理した資料を示すなどして説明するとされています。 口頭で流されそうになったら、「項目と金額を整理したものを見せてください」と頼んでかまいません。

その場でメモを取ってください

書面がもらえない以上、聞いた内容を残すのは医院の側です。 項目ごとに、金額と理由を書き取る。
これがないと、あとで税理士と検討するときに何も残りません。

終わったあとにやること

 やること
指摘された項目を、一覧にして残す
それぞれについて、どう直すかを決める
経理のやり方そのものを直す(棚卸の手順、未収の計上、家族の勤務記録)
納税の資金を手当てする

①と②を飛ばす医院が多いです。 払って終わりにしてしまう。

次の調査で同じことを指摘されると、 「知っていて直さなかった」と見られます。 そこから重加算税の話になることもあります。 一覧にして、直したことまで記録に残してください。

最後に。 調査は、点数をつけられる場ではありません。 納めるべき税金を、正しい額にするための手続きです。

だから間違っていたところは素直に直す。納得できないところは、きちんと主張する。 どちらも、当たり前のことです。 早く終わらせたいという気持ちだけで決めないでください。 その場で結論を出す必要は、ありません。

出典:国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」。 調査結果の内容説明(原則として口頭で行う/必要に応じて非違の項目や金額を整理した資料などを示す/ 要望に応じて調査結果の内容を記載した書面を交付することはない)は問24。 修正申告の勧奨(応じるかどうかは納税者の任意の判断/応じない場合は調査結果に基づき更正等の処分を行う/ 応じなかったからといって不利な取扱いを受けることは基本的にはない/ 修正申告を行った場合には更正の請求はできるが不服申立てはできない)は問25・問26。 関係する法令は国税通則法第74条の11(調査の終了の際の手続)。 不服申立ての手続は同法第75条以下および国税庁タックスアンサー No.7200・No.7210。 加算税・延滞税は同 No.2026、No.9205。いずれも2026年9月時点。

サインする前に、一度ご相談ください。

指摘された項目を一覧にして、応じるべきものと主張できるものを仕分けします。 判断が分かれる論点は、根拠を整理して税務署に説明します。 すでに調査が始まっている段階でも、顧問先でなくても承ります。

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最終更新:2026年9月11日

この記事について
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。
税理士・行政書士 山下久幸

税理士・行政書士山下 久幸

福岡で税理士事務所を営む。医療法人の設立・税務と、資産形成・相続サポートを専門とする。

税理士と行政書士の資格を一人で保有し、法人化の判断から認可申請、設立後の顧問、相続の設計までを一貫して担当している。