今月、全部は払えない。
考えたくない話ですが、順番を知らないまま その日を迎えるのが、いちばん危ない。
何から払い、何を待ってもらうか。間違えると、取り返しがつかなくなります。 知っておいてください。使わずに済めば、それでいい。
この記事の結論
- いちばん先に払うのは。
- スタッフの給与です。理由は2つ。人が辞めたら診療が止まること。そして未払いの給与は、法的にも強く守られていることです。ここは絶対に落とせません。
- 待ってもらえるのは。
- 銀行の返済です。意外に思われますが、銀行は相談に乗ります。「リスケ」という仕組みがあって、元本の返済を一時的に止めてもらえることがあります。
- いちばんやってはいけないのは。
- 黙って落とすことです。銀行でも、取引先でも、税務署でも。先に相談すれば道はありますが、黙って延滞すると一気に信用を失います。
払う順番
| 順 | 払うもの | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | スタッフの給与 | 止まると診療が止まる。法的にも強く守られています |
| 2 | 源泉所得税・社会保険料 | スタッフから預かったお金。自分のお金ではありません |
| 3 | 診療に直結する支払い | 医薬品、材料、技工料、リース。止まると診療が止まります |
| 4 | 家賃・水道光熱費 | 止まると診療できません |
| 5 | 税金(法人税・消費税など) | 相談すれば分割できます |
| 6 | 銀行の返済 | 相談すれば止めてもらえることがあります |
銀行が最後というのは、意外かもしれません。 でも、いちばん話が通じる相手だからです。
医薬品の卸に「今月待ってください」と言えば、次から現金取引になるかもしれません。 銀行は、事情を説明すれば制度で対応してくれます。
① 給与は、絶対に落とさない
理由は2つあります。
| 理由 | |
|---|---|
| ① | 人が辞めます。スタッフがいなければ、診療できません |
| ② | 法的にも強く守られています。未払いの給与は、ほかの債権より優先されます |
①が現実的です。 給与が遅れた医院は、その月のうちに何人か辞めます。 そして医療業界は狭い。噂はすぐ広がり、採用もできなくなります。
ここだけは、何があっても守ってください。 足りないなら、院長の報酬を先に止めてください。順番はそちらが先です。
② 税金・社会保険は、相談すれば分割できます
ここを知らない先生が多い。
税金が払えないとき、黙って滞納するのと、先に相談するのとでは、まったく違います。
| 黙って滞納 | 先に相談 | |
|---|---|---|
| 延滞税 | かかります(2か月超で年9.1%) | 軽くなる場合があります |
| 差押え | あり得ます | 猶予されることがあります |
| 分割 | — | 認められることがあります |
納税を猶予したり、分割にしたりする仕組みがあります。 ただし、自分から申し出ないと使えません。
社会保険料も同じです。年金事務所に相談すれば、分割の相談に乗ってもらえることがあります。
これはスタッフの給与から預かったお金です。医院のお金ではありません。
使ってしまうと、後で必ず重くのしかかります。順番の2番目にしているのは、そのためです。
③ 銀行の返済は、止めてもらえることがあります
リスケジュール(リスケ)といいます。 一定期間、元本の返済を止めて、利息だけ払う形に組み直すことです。
| 中身 | |
|---|---|
| 効果 | 毎月の返済が、大きく軽くなります |
| 期間 | 半年〜1年ごとに見直すことが多い |
| 必要なもの | 経営改善の計画書。「どう立て直すか」を示します |
| デメリット | その間、新規の借入はほぼできません |
デメリットは小さくありません。 だからリスケは、最後の手段です。 その前に借換えや一本化で乗り切れないか、先に検討してください。
まだ払えているうちなら、借換えで済みます。 払えなくなってからだと、リスケしかありません。ここでも、早さがすべてです。
やってはいけないこと
| やってはいけない | なぜ | |
|---|---|---|
| ① | 黙って引き落としを落とす | 信用が一気に消えます |
| ② | カードローンや高金利で借りる | 金利が桁違い。傷が深くなります |
| ③ | 院長個人のお金を、無計画に入れる | 個人も一緒に沈みます |
| ④ | 売上を前倒しで計上して、決算を良く見せる | 粉飾です。必ずバレます |
| ⑤ | 顧問税理士に黙っている | いちばん助けられる相手を、外すことになります |
①がいちばん多い。「今月は落ちないかもしれない」と分かっているのに、何も言わない。
銀行は、落ちてから知ります。そして「この医院は、相談もなく落とす」という記録が残ります。 前の日に電話するだけで、扱いがまったく違います。
②も危ない。金利が桁違いです。数か月しのいでも、そのあとが重くなります。
最後に。 この記事の内容を使わずに済むのが、いちばんです。
そのために12か月先までの資金繰り表を作ってください。 足りない月が3か月前に見えていれば、まだ払えているうちに銀行へ行けます。 順番を考えなければならない状況に、そもそも立たないこと。これが本当の対策です。
出典:賃金の支払いの原則および未払賃金の保護は労働基準法第24条ほか。 国税の納税の猶予は国税通則法第46条、換価の猶予は同法第151条の2(申請による換価の猶予)。 猶予が認められた場合の延滞税の軽減・免除は同法第63条。 延滞税の割合は国税庁タックスアンサー No.9205(2026年は納期限の翌日から2か月まで年2.8%、 それ以後は年9.1%)。 厚生年金保険料等の納付の猶予は厚生年金保険法等による。 リスケジュールの可否・条件は金融機関の判断によります。 支払いの優先順位に関する記述は実務上の考え方であり、個別の事情によって異なります。 いずれも2026年9月時点。
苦しくなる前に、ご相談ください。
「まだ払えているが、数か月先が見えない」——その段階がいちばん手を打てます。 資金繰り表を作って、足りない月を特定し、借換えで乗り切れるかを判断します。 すでに苦しい段階でも、順番の整理と銀行への説明はお手伝いできます。 税理士には守秘義務があります。そのままお話しください。
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最終更新:2026年9月12日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。