調査の連絡を受けてから当日まで、ふつうは2〜3週間です。
この間に何を用意するか。 そろえる書類そのものより、「説明できる状態にしておくこと」のほうが大事です。
医院向けの一覧にしました。そのまま使ってください。
この記事の結論
- 何年分そろえればいいですか。
- 連絡のときに言われた年数分です。ふつうは3年分。問題が見つかれば5年、隠していたと判断されれば7年にのびます。言われていない年の分まで、先回りして出す必要はありません。
- ないものがあったら。
- ないと言ってください。慌てて作らないこと。あとから作ったものは、たいてい分かります。「ありません」と「作りました」では、意味がまったく違います。
- いちばん大事な準備は。
- 顧問税理士と1回打ち合わせることです。心当たりがあるなら、そこで話しておく。当日に初めて出てくるのが、いちばん悪い形です。
必ず見られるもの
| 書類 | |
|---|---|
| 帳簿 | 総勘定元帳、現金出納帳、補助簿 |
| お金 | 預金通帳(医院のもの全部)、定期・積立、借入の返済予定表 |
| 証拠書類 | 請求書、領収書、契約書、見積書 |
| 申告関係 | 申告書の控え、決算書、勘定科目内訳明細書 |
| 給与 | 給与台帳、源泉徴収簿、扶養控除等申告書、タイムカード |
| 資産 | 固定資産台帳、リース契約書 |
| 在庫 | 棚卸表 |
通帳は医院のものを全部です。使っていない口座も含めて。 「この口座は出していません」が、いちばん疑われます。
棚卸表がない医院は多いです。ないなら「作っていません」と正直に言ってください。 そして今期の分から作る。それが正しい対応です。
医院ならではのもの
| 書類 | 何を見られるか | |
|---|---|---|
| 保険 | レセプトの請求控え、支払基金・国保連の通知 | 売上の計上時期と未収金 |
| 窓口 | 日計表、レジのジャーナル、領収書の控え | 自費と窓口負担の現金 |
| 自費 | 自費の料金表、同意書、分割の契約書 | 売上がもれなく計上されているか |
| 診療 | カルテ、予約表 | 自費の件数と売上が合うか |
| 歯科 | 技工所からの請求書、技工指示書 | 技工物の数と自費の件数が合うか |
| 材料 | 医薬品・材料の仕入明細 | 使用量と売上が釣り合うか |
| 物販 | 物販の売上記録 | そもそも計上されているか |
歯科の技工所からの請求書は、必ず見られます。 技工物を100本入れたのに、自費の売上が80本分しかない。 この差を聞かれます。
材料の仕入も同じです。物の流れは、お金の流れより隠しにくいのです。
説明できるようにしておくこと
ここが本番です。書類をそろえるだけでは足りません。 口で説明できるかどうかを見られます。
| 説明できるようにしておくこと | |
|---|---|
| ① | 窓口のお金の流れ。誰が受け取り、誰が数え、誰が締め、いつ銀行に入れるか |
| ② | 自費の値段の決め方。料金表はあるか、値引きはどう判断しているか |
| ③ | 家族に給与を払っているなら、何の仕事をしているか |
| ④ | 院長の車・携帯・自宅を医院の経費にしている場合、その割合の根拠 |
| ⑤ | 前回の調査で指摘されたことを、どう直したか |
①は必ず聞かれます。ここがいちばんの本題です。 あいまいだと、そこを重点的に見られます。
③は親族への給与に、 ⑤は「直していない=知っていてやっていた」と見られる危険があるので、必ず確かめてください。
場所と人の準備
| やること | |
|---|---|
| ① | 調査官が座る場所を決める。個室か、診療の動線から外れた場所 |
| ② | 机の上に、書類を種類ごとに並べておく |
| ③ | スタッフに、調査があることを伝えておく |
| ④ | 顧問税理士と、事前に1回打ち合わせる |
| ⑤ | 先生が対応できる時間(初日の午前中)を確保する |
①は地味ですが効きます。 受付の横に座られると、患者さんの目につきます。 「何かあったのか」と思われるのは避けたい。
③も大事です。黙っていると、スタッフが動揺します。 「税務署の定期的な確認だから、聞かれたことに正直に答えればいい」と伝えておいてください。 口止めは絶対にしないこと。
やってはいけない準備
| やってはいけないこと | なぜ | |
|---|---|---|
| ① | ない書類を、あとから作る | 筆跡・紙・印字で分かります。重加算税の材料になります |
| ② | 都合の悪い資料を捨てる | 同じです。しかも取引先に確認されれば出てきます |
| ③ | 通帳を1つ隠す | 金融機関に照会されます。隠したこと自体が問題になります |
| ④ | スタッフに口止めする | それ自体が疑われます |
| ⑤ | 顧問税理士に本当のことを言わない | 味方が備えられません |
①〜③は、「間違えた」を「隠した」に変えてしまう行為です。 ふつうなら10%で済んだものが35%になり、さかのぼる年数も5年から7年にのびます。
準備でやるべきは、隠すことではなく、そろえて説明できるようにすることです。 足りないものは、足りないままでいい。
最後に。 調査の前に不安になるのは当たり前です。 でも不安の中身は、たいてい「何を聞かれるか分からない」ことです。
聞かれることは、この記事に書いたことでほぼ尽きています。 当日の流れと やってはいけない3つのことを読んでおけば、 あとはふだんどおりにしていれば大丈夫です。
出典:調査担当者による帳簿書類その他の物件の提示・提出の求めは国税通則法第74条の2以下。 事前通知で通知される事項(調査の対象となる帳簿書類その他の物件を含む)は同法第74条の9。 更正・決定の期間制限(原則5年、偽りその他不正の行為があった場合は7年)は同法第70条第1項・第5項。 重加算税は同法第68条。 用意する書類の範囲や当日の進め方は、事前通知の内容や医院の規模・論点によって異なります。 本文の一覧は一般的な例です。いずれも2026年9月時点。
連絡が来たら、当日までの段取りを一緒に組みます。
言われた税目と年数から、そろえる書類を絞り込みます。 そのうえで「何を聞かれるか」「どう答えるか」を事前に打ち合わせて、当日を迎えます。 顧問先でなくても、立ち会いからご相談を承ります。
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最終更新:2026年9月11日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。