2027年1月から、0〜17歳が使える「こどもNISA」が始まります。 年60万円まで、子ども名義で運用の利益に税金がかからない仕組みです。 一部の証券会社では、2026年10月から口座の申し込みの受付も始まっています。
「毎年60万円ずつ、子どものために積み立てよう」。 そう考えている院長に、先にお伝えしたいことがあります。
NISAの非課税と、贈与税の非課税は別の話です。 NISAが守ってくれるのは、口座の中で増えた分だけ。 院長や祖父母から子どもへお金を渡すことには、贈与税のルールがそのままかかります。
とくに院長の家庭は、祖父母も医師・歯科医師ということが少なくありません。 お祝い、学費の援助、孫名義の預金。いくつも重なって、気づかないうちに110万円を超えやすいのです。 今日は、そこを整理します。
この記事の結論
- こどもNISAに年60万円入れても、贈与税はかかりませんか。
- それだけなら、通常はかかりません。ただし贈与税の110万円は「もらう子ども1人あたり、1年の合計」です。祖父母から孫名義の預金に入れてもらっている分などと合わせて110万円を超えれば、贈与税の申告が必要です。
- 祖父母に学費を援助してもらうのは、どう考えればいいですか。
- 入学金や授業料を、必要なときに、必要な分だけ直接払ってもらうなら贈与税はかかりません。まとめてもらって預金やNISAに回すと、贈与税の対象です。祖父母から孫へ教育資金をまとめて渡せた非課税の特例は、2026年3月末で終わりました。
- 院長が管理していれば、実質は院長のお金ですか。
- 違います。こどもNISAに入れたお金は子どもの財産です。12歳以降に引き出すときも、子どものための使い道であることと、子ども本人の同意が条件です。医療法人のお金を入れることもできません。
NISAの非課税と、贈与税の非課税は別です
こどもNISAの中身(年60万円・合計600万円、ジュニアNISAとの違い、600万円では学費に届かないこと)は、 こどもNISAと開業医|学費ではなく、相続対策の入口として使うにまとめました。 この記事では、お金を入れる側の税金だけを見ます。
こどもNISAには、2つの税金が関係します。
| NISAの非課税 | 贈与税の非課税 | |
|---|---|---|
| 何にかかる税金か | 口座の中で増えた分(運用の利益) | 親や祖父母から子どもへ渡したお金 |
| 税金がかからない範囲 | 年60万円・合計600万円まで買った分 | 子ども1人が1年にもらう合計110万円まで |
| 見ているところ | その口座の中だけ | 口座の外のお金も全部合わせて |
NISAの口座で非課税になるのは、増えた分です。 入れるお金そのものが非課税になるわけではありません。 院長のお金を子どもの口座に入れれば、それは院長から子どもへの贈与です。
年60万円だけなら110万円の内側なので、通常は贈与税はかかりません。 問題は、院長の家庭では「それだけ」で済まないことが多い点です。
110万円は「子ども1人・1年の合計」です
贈与税の110万円(基礎控除=税金がかからない枠)は、1月1日から12月31日までの1年間に、 もらった人が受け取った合計から差し引きます。 あげる人ごとに110万円ではありません。
父親から60万円、祖父から60万円なら、子どもがもらったのは合計120万円。 110万円を超えます。
例えば、こんな院長の家庭で試算してみます(お子さんは1人、小学生)。
| その年に子どもが受け取ったお金 | A:院長だけ | B:祖父も | C:両方の祖父母も |
|---|---|---|---|
| 院長から(こどもNISAへ) | 60万円 | 60万円 | 60万円 |
| 院長の父から(孫名義の預金へ) | — | 60万円 | 60万円 |
| 配偶者の両親から(孫名義の預金へ) | — | — | 30万円 |
| 合計 | 60万円 | 120万円 | 150万円 |
| 110万円を引いた残り | 0円 | 10万円 | 40万円 |
| 贈与税 | 0円 | 1万円 | 4万円 |
| 贈与税の申告 | 不要 | 必要 | 必要 |
子どもが18歳未満なので、税率は「一般税率」です。110万円を引いた残りが200万円以下なら10%。 B・Cとも、残りに10%をかけた金額です。
金額だけ見れば小さい税金です。 でも、申告が必要なのに出していない状態が毎年続くことになります。 誰もが「自分の分は110万円以内」と思っているので、家族の誰も気づきません。
内科の院長の父が、元・開業医。「孫の将来のために」と、毎年まとまった額を孫名義の口座に入れている。
歯科医院を継ぐ予定のお子さんに、前院長の祖父が「医院を継ぐときの足しに」と毎年渡している。
そこに院長のこどもNISAの60万円が乗ると、本人たちの知らないところで110万円を超えます。
まず家族の中で「誰が、いくら、子どもに渡しているか」を一度並べてください。
なお、お祝いやお年玉は、常識的な金額なら贈与税はかかりません。 ただ「入学祝い」という名目でも、金額が大きかったり、孫名義の口座に積み立てる性格のものだったりすれば、話は別です。
また、贈与税には110万円の枠をもう1つ持つ「相続時精算課税」という仕組みもありますが、 もらう人が18歳以上でないと使えません。こどもNISAを使う年齢のあいだは、ここで説明した110万円だけで考えます。
学費は「その都度、直接払う」なら贈与税はかかりません
ここで、もう1つの非課税を使い分けます。
親や祖父母(扶養する義務のある家族)が、子どもや孫の生活費や教育費を出してあげるのは、 通常必要な範囲なら贈与税がかかりません。 ただし必要なときに、直接その支払いにあてる場合に限られます。 教育費の名目でもらっても、それを預金したり、株式などの購入にあてたりすれば、贈与税の対象です。
| 祖父母の援助のしかた | 贈与税 |
|---|---|
| 私立中学の入学金・授業料を、払うときに払ってもらう | かからない |
| 塾や医学部予備校の費用を、請求のたびに払ってもらう | かからない |
| 「将来の学費に」と、まとめて孫名義の預金に入れてもらう | かかる(110万円の合計に入る) |
| こどもNISAの積立資金として渡してもらう | かかる(110万円の合計に入る) |
つまり、祖父母の援助は「目の前の学費」に、院長のお金は「10年以上先」のこどもNISAにと分けると、 110万円の枠を食い合いません。 医学部・歯学部を目指すご家庭なら、援助してもらう場面は中学受験から先にいくらでも出てきます。
祖父母などから孫へ、教育資金をまとめて非課税で渡せた特例(金融機関で専用の口座をつくるもの)は、 適用期限の2026年3月31日で延長されずに終了しました。 2026年4月1日以後は、新たに使うことはできません。 3月31日までに手続きを済ませた分は、引き続きこの特例の対象です。
これから祖父母が学費を援助するなら、その都度、直接払ってもらうのが基本の形になります。
毎年の贈与として、記録を残す
次に気をつけたいのが、最初に「10年分」を約束してしまうことです。
国税庁は、毎年その都度贈与の約束をして、その年の贈与が110万円以下なら、贈与税はかからないとしています。 一方で、最初から「毎年100万円を10年間渡す」と約束している場合は、 約束した年に「10年間お金を受け取る権利」をまとめてもらったものとして、贈与税がかかるとしています。
例えば、孫が生まれたときに祖父が「毎年60万円を、こどもNISA用に10年間あげる」と書面にする。 善意でも、この書き方は避けてください。 贈与は1年ずつ。その年の分を、その年に決める形にします。
| やること | 中身 |
|---|---|
| 贈与契約書を毎年つくる | 誰が・誰に・いくら・いつ。子どもが小さいうちは、親権者が子どもの代わりに署名する形で作ります |
| 振込で渡す | 院長や祖父母の口座から、子ども名義の口座へ振り込む。現金の手渡しは記録が残りません |
| 合計を確認する | 年末に、その子が1年で受け取った合計を出す。110万円を超えたら翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告 |
110万円を少し超えたなら、贈与税を払って申告しておくのも1つの考え方です。 申告書の控えは、「この年に、確かに子どもに渡した」という記録にもなります。
「誰のお金か」——院長の口座ではありません
ここが、いちばん大事なところです。
こどもNISAの口座の名義は、子ども本人です。入れたお金は子どもの財産です。 「子どものために積み立てているだけで、実質は自分のお金」という感覚で扱うと、危なくなります。
相続のときに問題になるのが、名義預金です。 子ども名義の口座でも、親が出したお金で、親が通帳や印鑑を持ち、運用も親がしていて、子どもは何も知らない。 こうした口座は、名義にかかわらず親の財産として相続税の対象になる、と国税庁は示しています。 くわしくは預金はマイナンバーでバレるのかもご覧ください。
制度そのものが「子どものお金」という作りです
| 時期 | できること |
|---|---|
| 中学校に上がる年まで | 原則として引き出せません |
| 中学校に上がる年から(その年の3月31日に12歳) | 入学金・授業料など子どもの教育費や生活費にあてるときだけ、子ども本人の同意を示す書面を付けて、親権者が金融機関に申し出れば引き出せます |
| 18歳になったら | 手続きなしで大人のNISA(つみたて投資枠)に移ります。ここから先は子ども本人の口座です |
つまり、医院の資金繰りが苦しいときや、院長の住宅ローンの返済には使えません。 国も、親の隠し口座ではなく子どもの資産として設計しています。 「何かあったら院長が使えるお金」は、こどもNISAに入れないでください。
医療法人は、利益を配当できません。 法人のお金を、理事長の子どもの口座へ直接入れることは、この考え方と合いません。 また、法人から個人がもらったお金には、贈与税ではなく所得税がかかります。 法人の側でも、寄附や理事長への報酬として扱いが問題になります。
こどもNISAに入れるのは、役員報酬として理事長が受け取り、税金を払ったあとの個人のお金です。
使う時期で分ける。満額でなくていい
「では、教育費は全部こどもNISAで」というのも違います。 3年後の入学金、5年後の授業料。 近いうちに使うお金まで投資に回すと、相場が下がっているときに取り崩すことになりかねません。
| 使う時期 | 置き場所 |
|---|---|
| 数年以内(入学金・中学受験・塾代) | 預金。祖父母の援助は「その都度、直接」 |
| 10年以上先(大学以降、子ども自身の資産) | こどもNISA |
そして、年60万円の満額を入れなくても損ではありません。 院長の家庭には、こどもNISAより先に考えるお金がいくつもあります。
| 院長の家庭のお金 | 見ておくこと |
|---|---|
| 医院の手元資金 | 運転資金・納税資金。法人に残すか、院長に渡すか |
| 借入の返済 | 開業資金・医療機器・自宅のローン |
| iDeCo | 個人開業医と理事長で、答えが違います |
| 小規模企業共済(個人開業の院長) | 個人のクリニックなら使ってください |
| 理事長の退職金の準備(医療法人) | 理事長退職金 |
| 院長ご自身のNISA | こどもNISAの3倍の枠があります |
大事なのは、こどもNISAを満額やることではなく、家族全体のお金の中で金額を決めることです。 月5万円で年60万円。月2万円でも、月1万円でもかまいません。
院長が今、確認する4つ
| 確認すること | |
|---|---|
| ① | 年間いくら積み立てるか。60万円の満額でなくていい |
| ② | 誰がお金を出すか。院長、配偶者、祖父母。出す人ごとに分けて書き出す |
| ③ | ほかの贈与はないか。孫名義の預金、まとまったお祝い。子ども1人ごとに、1年の合計で110万円を見る |
| ④ | そのお金を、本当に子どものものとして渡せるか。中学校に上がる年まで原則引き出せず、18歳で子ども本人の口座になります |
最後に、税金の話より大事なことを1つ。
18歳になったとき、子どもは数百万円の資産を持つかもしれません。 そのとき本人が、投資も、税金も、お金の使い方も知らなかったらどうでしょうか。
子どもが大きくなったら、残高を一緒に見てください。 「今これだけ積み立てているよ」「増えることも、減ることもあるよ」と話してください。 子ども本人が知っている口座にしておくことは、「本当に子どものお金」であることの裏づけにもなります。
こどもNISAは、資産だけでなく、お金の考え方も残せる制度です。 税金のルールを押さえたうえで、そこまで含めて使ってください。
家族の贈与を、一度まとめて並べてみませんか。
院長・配偶者・祖父母から、お子さんへ。誰が、いくら、どの形で渡しているか。 110万円を超えていないか、名義預金になっていないかを、家族全体の資金計画と一緒に確認します。 医院の資金繰りや退職金の準備と合わせて、こどもNISAにいくら回すかを決めるところからご相談いただけます。
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最終更新:2026年10月9日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断や投資判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年10月)のものであり、その後の法改正や運用の決定により変わる場合があります。投資には元本割れのリスクがあります。実際のご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。