「うちは医療にも強いですよ」
面談でこう言われて、本当かどうか分かりますか。 名刺にも、ホームページにも、たいてい「医療」と書いてあります。
見分ける方法があります。質問すればいい。 医療をやっていない税理士が答えられない質問を、5つ用意しました。 そのまま使ってください。
この記事の結論
- 何を聞けばいいですか。
- 制度の名前を、こちらから出さないことです。「概算経費は使えますか」ではなく「うちは経費を実額で計算していますが、ほかの方法はありますか」と聞く。知っている税理士なら、名前のほうから出てきます。
- いちばん大事な質問は。
- 「誰が担当になりますか」です。制度の知識より、これ。面談に来た所長ではなく、スタッフが担当になることがあります。そのスタッフに相談できるかどうかで、日々の価値が決まります。
- 何人と会えばいいですか。
- 3人以上です。1人しか会わずに決めると、比べようがありません。紹介された1人だけに会って決める——これがいちばん多い失敗です。
質問① 経費の計算に、ほかの方法はありますか
個人でクリニックをやっている先生だけが使える、経費の計算方法があります。
実際にかかった経費ではなく、社会保険診療報酬に決まった率をかけて経費とみなすやり方です。 医師と歯科医師にしか認められていません。
| 社会保険診療報酬の金額 | 経費とみなす率 |
|---|---|
| 2,500万円以下の部分 | 72% |
| 2,500万円超〜3,000万円の部分 | 70% |
| 3,000万円超〜4,000万円の部分 | 62% |
| 4,000万円超〜5,000万円の部分 | 57% |
使えるのは、社会保険診療報酬が5,000万円以下、かつ医業の収入全体が7,000万円以下の場合です。
実際の経費率がこれより低い医院なら、こちらのほうが税金が安くなります。 毎年どちらが有利かを比べて選ぶものです。
「うちは経費を実額で計算していますが、ほかの方法もありますか」
医療をやっている税理士なら、すぐに「概算経費ですね。収入がいくらですか」と返ってきます。
「実額だけです」で終わったら、医療の申告をあまりやっていない可能性があります。
質問② 税務署以外に出す書類は、やってもらえますか
医療法人には、税務署とは別に、都道府県へ出す書類があります。
| やること | 期限 |
|---|---|
| 事業報告書等・監事の監査報告書を都道府県に届け出る | 会計年度が終わって3か月以内 |
| 資産の総額の変更登記 | 事業年度の末日から3か月以内 |
どちらも、株式会社にはない手続きです。 税務申告しかやらない事務所だと、ここが抜けます。
毎年のことなので、抜けていると何年分もたまります。 登記が遅れると、過料の対象にもなり得ます。
「決算のあと、都道府県に出すものと、登記が要ると聞いたのですが」
医療法人をやっている事務所なら、「事業報告書等の届出と、資産総額の変更登記ですね」と即答します。
あわせて「どちらも御社でやってもらえますか、別料金ですか」まで聞いてください。
登記は司法書士の仕事なので、そこの段取りも確認できます。
質問③ うちの消費税は、どちらが得ですか
医院の消費税は、ふつうの会社とまったく構造が違います。 保険診療に消費税がかからないからです。
その結果、払った消費税がほとんど戻らない、 簡易課税のほうが有利なことが多い、 税込経理のほうが楽—— 一般の会社とは逆の結論になります。
「うちの自費は年◯◯万円くらいですが、消費税はどう考えたらいいですか」
「自費の割合はどれくらいですか」と聞き返してくるなら、分かっています。
保険が非課税だという前提が体に入っている証拠です。
「売上が1,000万円を超えているなら課税事業者ですね」とだけ答えたら、要注意。
保険診療を含めて数えている可能性があります。
質問④ 医師国保は、どうなりますか
法人化を考えている先生なら、これを聞いてください。
医師国保・歯科医師国保は、 法人化したあとも続けられる場合があります。手続きが要ります。
ここを知らずに法人化して協会けんぽに入ると、保険料が大きく変わります。 スタッフの手取りにも響きます。
「法人にしたら、医師国保はどうなりますか」
「続けられます。ただし手続きが要ります」と返ってくればいい。
「法人になったら協会けんぽです」で終わるなら、医療法人の設立をやったことがないかもしれません。
質問⑤ 誰が担当になりますか
これがいちばん大事な質問です。 制度の知識より、こちらのほうが日々の満足度を決めます。
面談に来るのは、たいてい所長です。話も上手い。 でも契約したあと、実際に来るのは別の人ということがあります。
| 聞いておくこと | |
|---|---|
| ① | 誰が担当になりますか。その方は税理士ですか |
| ② | その方に、一度会わせてもらえますか |
| ③ | 医療の担当は何件くらい持っていますか |
| ④ | 重要な相談のとき、所長に直接聞けますか |
| ⑤ | 担当が替わることはありますか |
④を必ず聞いてください。 スタッフは、最終的な責任を取れません。 判断が要る相談は、税理士本人に届く仕組みになっているか。ここを確かめてください。
くわしくは大きい事務所と小さい事務所と、 こんな事務所は変えたほうがいいに書きました。
3人以上と会ってください
最後に、いちばん現実的な話をします。
税理士は3人以上と会ってから決めてください。 1人しか会っていないと、比べようがありません。
結婚相手を1人しか知らずに決めるようなものです。 その1人が良い人かもしれない。でも良いかどうかは、比べないと分かりません。
| 探し方 | いいところ/注意 |
|---|---|
| 知り合いからの紹介 | 人柄は分かる/断りにくい。1人で決めがち |
| 検索して探す | 比較しやすい/広告が上手いだけのこともある |
| 紹介会社を使う | 手間が省ける/紹介料が顧問料に乗ることがある |
紹介がいちばん危ないと思っています。 紹介してくれた方の顔を立てなければ、という気持ちが働くからです。
紹介であっても、「ほかにも会ってから決めます」と伝えてかまいません。 それで機嫌を損ねる紹介者なら、その紹介はあてになりません。
ひとつだけ、正直に書いておきます。 「業種特化」は、いいことばかりではありません。 同じ地域の同業を何件も見ている事務所は、先生の数字を知ったうえで、競合も見ているということです。 そこが気になるなら、素直に聞いてください。「近所の医院も見ていますか」と。
最後は相性です。5つの質問に答えられて、担当がはっきりしていて、話していて気が楽。 この3つがそろう人を選んでください。
出典:社会保険診療報酬の所得計算の特例(概算経費)は租税特別措置法第26条 (医業又は歯科医業を営む個人で、社会保険診療につき支払を受けるべき金額が5,000万円以下、 かつ医業又は歯科医業から生ずる事業所得に係る総収入金額の合計額が7,000万円以下であるとき。 率は2,500万円以下72%、2,500万円超3,000万円以下70%、3,000万円超4,000万円以下62%、 4,000万円超5,000万円以下57%)。 事業報告書等の届出は医療法第52条第1項(毎会計年度終了後3月以内に、事業報告書等および 監事の監査報告書を都道府県知事に届け出る)。 資産の総額の変更登記は組合等登記令第3条第3項(毎事業年度末日現在により、当該末日から3月以内)。 消費税の非課税は消費税法別表第二第6号。いずれも2026年9月時点。
この5つを、そのまま私にも聞いてください。
比べていただくための記事です。ほかの事務所にも同じ質問をしてください。 当事務所は医科・歯科の医療法人だけを見ています。担当は代表税理士がそのまま務めます。 無料相談では、いまの申告書を見ながら、使えていない制度がないかもお話しします。
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最終更新:2026年9月12日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。