「税理士って、いつからつけるものですか」
開業前の先生から、よく聞かれます。 正直にお答えします。いますぐ必要とは限りません。
ただし「つけていないと損をする場面」は、はっきり決まっています。 そこだけ外さなければ大丈夫です。
この記事の結論
- 開業前からつけるべきですか。
- 借入をするなら、つけたほうがいいです。開業資金の融資は、事業計画の数字で決まります。ここは専門家が入ったほうが通りやすい。逆に自己資金だけで小さく始めるなら、急ぎません。
- 個人開業のうちは、いりませんか。
- なくてもやれます。収入がそれほど大きくないうちは、会計ソフトで十分まわります。ただし社会保険診療報酬が出てくる時点で、判断が要る論点はもう発生しています。年1回の申告だけ頼む、という形もあります。
- 法人にするなら。
- 必要です。医療法人は、税務署に出すものと都道府県に出すものが別にあり、期限もあります。ここは自分でやる話ではありません。
つけていないと損をする5つの場面
時期で考えるより、場面で考えたほうが分かりやすいです。
| 場面 | なぜ | |
|---|---|---|
| ① | お金を借りるとき | 計画の数字で決まる。通るかどうかが変わります |
| ② | 大きな機器を買うとき | 買う年の前に決めることがあります |
| ③ | 法人にするとき | 届出と登記の期限があります |
| ④ | 家族にお金を渡すとき | 給与・贈与・相続で扱いが変わります |
| ⑤ | 自費が伸びてきたとき | 消費税を納める側になります |
共通しているのは、どれも「動く前」に相談しないと手遅れになることです。
②なら、機器を買う年の前の年末までに届出が要ることがあります。 ⑤なら、2年前の自費の金額でもう決まっています。 終わってから相談されても、できることがありません。
開業前——借入をするなら、先に
開業資金を借りるなら、物件を決める前から相談したほうがいいです。
| 開業前にやること | |
|---|---|
| ① | いくら借りられるか、いくら必要かを詰める |
| ② | 患者数と単価から、収支の計画を作る |
| ③ | 返済できる金額から、逆算して借入額を決める |
| ④ | どこから借りるかを決める(公庫・銀行・マル経融資) |
| ⑤ | 青色申告の届出、開業の届出を出す |
③が抜けている計画を、よく見ます。 「いくら借りられるか」から始めると、返せない額を借りてしまいます。 順番は逆です。返せる額から決める。
⑤の青色申告の届出は、期限を過ぎると、その年は使えません。 開業から2か月以内が原則です。これだけは忘れないでください。
自己資金の範囲で小さく始めるなら、開業前の税理士は必須ではありません。
青色申告の届出さえ出しておけば、1年目は会計ソフトでまわせます。
お金をかけるところは、ほかにもあります。
個人開業のうち——急がなくていい、ただし
個人でクリニックをやっている間は、顧問契約がなくてもやれます。 クラウド会計を使えば、日々の記帳は十分まわります。
ただし、医師と歯科医師にしかない論点が、最初からあります。
| 論点 | 中身 |
|---|---|
| 経費の計算方法 | 実際の経費で計算するか、決まった率で計算するかを選べます |
| 事業税 | 社会保険診療の分にはかかりません |
| 消費税 | 判定に保険診療は入りません |
| 小規模企業共済 | 個人のうちしか入れません |
どれも知らないと、そのまま損をするものです。 とくに経費の計算方法は、毎年どちらが有利かを比べる必要があります。 判定を間違えると、数十万円から数百万円ずれます。
顧問はつけないとしても、確定申告だけ税理士に頼むという形はあります。 年1回、10万円前後から。ここだけでも見てもらう価値はあります。
法人化——ここは必須です
医療法人にするなら、税理士は必要だと考えてください。 理由は、やることが増えるからです。
| 医療法人になると増えるもの | 期限 | |
|---|---|---|
| ① | 事業報告書等・監事の監査報告書を都道府県へ届け出る | 会計年度終了後3か月以内 |
| ② | 資産の総額の変更登記 | 事業年度の末日から3か月以内 |
| ③ | 社員総会・理事会の議事録 | その都度 |
| ④ | 理事報酬を決める(毎月同じ額) | 決算後3か月以内 |
①と②は、税務署とは関係ありません。医療法人だけの手続きです。 毎年のことなので、抜けていると何年分もたまります。
④も、知らないと困ります。 理事報酬は期の途中で自由に変えられません。 決めるタイミングを逃すと、1年動かせなくなります。
法人化は、設立してからでは直せないことが多い手続きです。
決算月をいつにするか、出資をどうするか、誰を理事にするか。
そもそも法人にしないほうがいい場合もあります。
決める前に、一度は数字を見てもらってください。
頼み方は、全部か無かではありません
「顧問契約を結ぶか、何も頼まないか」の二択ではありません。
| 頼み方 | 向いている段階 |
|---|---|
| 確定申告だけ | 個人開業で、収入がまだ大きくないうち |
| 決算だけ | 法人だが、相談することが少ない |
| 3か月に1回の訪問 | ある程度まわってきた段階 |
| 毎月の訪問 | 数字を見ながら経営したい |
| 相談だけ(スポット) | 法人化・借入・相続など、決めるときだけ |
金額は下から順に上がります。 顧問料の相場もあわせてご覧ください。
いまの段階に合った頼み方を選んでください。 合わなくなったら、変えればいい。ずっと同じ形でいる必要はありません。
最後に。 税理士をつけるかどうかで悩むより、「いま決めようとしていることがあるか」で考えてください。
借りる、買う、法人にする、渡す。 何かを決める前なら、相談する価値があります。 決めたあとだと、できることは急に減ります。 逆に、しばらく何も動かさないなら、慌てなくていいと思います。
出典:青色申告承認申請の期限は所得税法第144条(原則はその年の3月15日まで。その年1月16日以後に新たに業務を開始した場合は、業務を開始した日から2月以内)。 社会保険診療報酬の所得計算の特例は租税特別措置法第26条。 事業報告書等の届出は医療法第52条第1項(毎会計年度終了後3月以内)。 資産の総額の変更登記は組合等登記令第3条第3項(毎事業年度末日から3月以内)。 役員給与の定期同額給与は法人税法第34条第1項第1号および同法施行令第69条。 消費税の納税義務は国税庁タックスアンサー No.6501。 顧問料の金額に関する記述は公的な統計に基づくものではなく、実務上の目安です。 いずれも2026年9月時点。
いま決めようとしていることがあるなら、お話しください。
開業の資金計画、機器の購入、法人化の判断。 どれも動く前に相談していただくと、選べる手が多くなります。 まだ顧問を頼む段階でなくても結構です。1回だけの相談も承ります。
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最終更新:2026年9月12日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。記載の制度・取扱いは執筆時点(2026年9月)のものであり、その後の制度改正等により変更される場合があります。加入資格の可否は個別の事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては、必ず中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。